政府は、使い終えた衣類や家具、家電製品などをそのまま再び利用する「リユース(再使用)」市場について、2030年までに大幅に拡大させる方針を固めました。
具体的には、2024年時点で約3兆5千億円規模の市場を、2030年には約4兆6千億円へと32%拡大するという目標です。
これは単なる業界振興策ではなく、ごみの排出抑制や二酸化炭素(CO2)排出削減といった環境政策の一環でもあります。環境省が3月にも策定する「リユース等の促進に関するロードマップ」に、数値目標や具体策を盛り込む予定です。
リユースとは何か リサイクルとの違い
リユースとは、まだ使える製品を廃棄せず、そのまま別の人が再び使うことを指します。
例えば、中古の洋服を購入すること、使わなくなった家具をフリマアプリで売ることなどが該当します。
よく似た言葉に「リサイクル」がありますが、両者は意味が異なります。
リサイクルは、製品を分解して素材に戻し、新たな製品の原料として再利用することを指します。一方でリユースは、製品そのものをそのまま再び使うという点が特徴です。
この違いは環境負荷に直結します。製品を新たに作るには、原材料の採掘、輸送、加工、組み立てなど多くの工程が必要であり、そのたびにエネルギーが消費されます。
リユースはそれらの工程を省くことができるため、CO2排出を抑える効果が高い方法とされています。
市場拡大と同時に「実施率50%」を目標に
今回のロードマップでは、市場規模の拡大だけでなく、消費者の行動変化にも目標が設定されました。
「リユース実施率」を現在の40.8%から50%へ引き上げる方針です。
リユース実施率とは、過去1年間にリユース品の購入や売却を行った人の割合を意味します。
つまり、国民の半数が何らかの形で中古品の売買や再利用に関わる社会を目指すということになります。
さらに、リユース事業者と連携して取り組みを進める自治体の数を、現在の約300から600へ倍増させる目標も掲げられました。自治体が関与することで、地域単位での回収や販売、啓発活動が広がることが期待されています。
成長には従来の4倍のペースが必要
環境省の検討会によると、リユース市場の規模は、インターネットオークションや中古品販売店などで取引された22品目の総額を基に算出されています。
近年の成長率は、おおむね年1%程度でした。
しかし今回の目標を達成するためには、今後は年4〜5%の成長が必要とされています。
これは従来の約4倍にあたるペースであり、自然増だけでは達成が難しい水準です。そのため、政策による後押しや市場環境の整備が不可欠となります。
フリマアプリの信頼性向上が重要課題
リユース市場を支えているのが、フリーマーケットアプリや中古品販売店です。スマートフォンの普及により、個人間取引は急速に拡大しました。
しかし一方で、
・届いた商品が説明と異なる
・粗悪品が送られてくる
・返品や返金を巡るトラブル
といった問題も増えています。
こうした状況を受けて政府は、2027年度までに事業者が守るべき事項をまとめた指針を策定する方針です。
さらに、その指針に基づいて中古品販売店やフリマアプリの出店企業を評価する仕組みを設け、優良事業者を後押しする考えです。
市場の拡大と同時に、信頼性の確保が不可欠であるという認識が背景にあります。
循環経済への移行という大きな枠組み
今回の施策は、2024年12月に閣議決定された「循環経済への移行加速化パッケージ」の一環です。
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、資源を一度使って終わりにするのではなく、
・再使用
・再製造
・再資源化
を通じて循環させる経済モデルを指します。
政府はこの循環経済関連ビジネスの市場規模を、現在の約50兆円から2030年までに80兆円へ拡大する目標も掲げています。
リユース市場の拡大は、その重要な柱の一つです。
消費者意識の変化と今後の課題
近年は物価高や環境意識の高まりにより、中古品に対する心理的な抵抗は以前よりも薄れています。
特に若い世代では、古着や中古家電の購入、フリマアプリでの売買が日常的な行動となっています。
しかし、市場をさらに拡大させるためには、品質保証やトラブル対応、安心して利用できる仕組みづくりが不可欠です。
今回のロードマップは、単なる数値目標ではなく、「使い捨て」から「循環」への社会構造の転換を目指す政策といえます。
2030年に向けて、リユースがどこまで生活の中に根づくのか。
市場規模4兆6千億円、実施率50%という目標は、日本社会の価値観の変化を試す挑戦でもあります。
ソース
47NEWS
沖縄タイムス
リサイクル通信
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