羽田空港(東京都大田区)で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、国土交通省は3日、管制官と日航機や海保機との交信記録を公表した。
管制官は日航機に着陸を許可する一方、海保機には滑走路手前の停止位置までの走行を指示し、滑走路への進入許可は出していなかった。
海保によると、海保機の機長は「許可を得た上で滑走路に進入した」と報告したといい、交信記録と食い違いが生じている。運輸安全委員会は海保機からボイスレコーダーを回収しており、滑走路に入った詳しい経緯などを調べる。
運輸安全委は航空事故調査官6人を現場に派遣し調査を開始。警視庁も3日、東京空港署に70人規模の捜査本部を設置し、現場検証を実施。業務上過失致死傷容疑で捜査に乗り出し、今後、関係者への聴取なども本格化させる。
事故は2日午後5時50分ごろ、羽田空港C滑走路で発生した。日本航空516便(乗客乗員379人)が着陸時、第3管区海上保安本部羽田航空基地所属の航空機(乗員6人)と衝突し、炎上した。
日本航空は3日未明、乗員への聞き取りを行った上で「管制からの着陸許可を認識し、復唱した後、進入・着陸操作を実施した」と発表した。脱出時、機内アナウンスのシステムが作動せず、客室乗務員がメガホンと肉声で乗客を誘導し、安全に脱出できると判断した3カ所の非常口を使用したという。
事故では、日航機の乗客乗員全員が脱出し、うち15人が負傷した。海保機は搭乗していた6人のうち5人が死亡し、脱出した機長も全身やけどの重傷を負った。東京消防庁によると、日航機の火災は約8時間半後に消し止められた。
交信記録 (管制官と当該機とのやりとりのみ抽出)
午後5時43分2秒
日本航空機
「東京タワー、JAL516スポット18番です」
管制官
「JAL516、東京タワーこんばんは。滑走路34Rに進入を継続してください。風320度7ノット。出発機があります」
午後5時43分12秒
日本航空機
「JAL516滑走路34Rに進入を継続します」
午後5時44分56秒
管制官
「JAL516滑走路34R着陸支障なし。風310度8ノット」
午後5時45分1秒
日本航空機
「滑走路34R着陸支障なしJAL516」
午後5時45分11秒
海保機
「タワー、JA722AC誘導路上です」
管制官
「JA722A、東京タワーこんばんは。1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」
午後5時45分19秒
海保機
「滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう」
このあと、事故が起きた午後5時47分ごろまで、管制官から海上保安庁の航空機に対する滑走路への進入許可の記録はありませんでした。