古古古米(ここここまい)について

何でも深掘り

1. 古古古米の定義と特徴

古古古米」とは、収穫から3年以上経過した米のことです。お米は収穫年数に応じてユニークな呼称があり、収穫した年の米を「新米」、翌年以降にまわった米を「古米」と呼びます。さらに年数が経つごとに「古」の字を重ねるルールとなっており、例えば収穫2年後の米は「古古米(ここまい)」、3年後の米が「古古古米(ここここまい)」という具合です。以降も年数に応じて「古」を増やし、極端な例では5年前の米は「古古古古古米」と表現されます。こうした名称は業界やネット上で使われる俗称ですが、その年数区分によってお米の鮮度と品質のおおよその目安を示しています。

古米・古古米と古古古米の違い: 新米と比べ、古米(1年もの)でも適切に低温保管されていれば味質はさほど変わらず食べられますが、古古米(2年もの)になると徐々に品質が劣化していきます。さらに古古古米(3年もの)になると、米の成分変化によっていわゆる「古米臭」と呼ばれる独特の臭いが生じたり、水分が抜けて炊飯時の食感が硬くパサつく傾向が強まります。これはデンプンや脂質の酸化分解が進み、ペンタナール・ヘキサナールなどの揮発成分が増えるためで、炊き上がりの香りやツヤにも影響します。そのため一般には、古くなるほど食味が落ちる「古米化」現象が知られています。ただし、後述のように保管状態によって劣化の程度は大きく左右されます。

2. 古古古米が話題となった背景(2024〜2025年)

グラフは2024年春~2025年春にかけてのスーパー店頭におけるコメ価格推移を示したものです。2024年後半から日本のコメが品薄となり価格が高騰し始め、2025年5月にはついに**5kgあたり4285円(税込)という過去最高値を更新しました。この「令和の米騒動」**とも称されるコメ不足・価格高騰の引き金は、2023年夏の猛暑による米収量減少でした。さらに追い打ちをかけるように、2024年8月には南海トラフ地震の臨時情報が発表され、人々が米の買いだめに走ったことも供給不安を招きました。9月に新米が店頭に並んだものの価格は例年より大幅に高く、以降もコメ不足による混乱が続いたのです。

こうした状況を受けて政府は備蓄米(政府保有米)を市場に放出し、コメ価格の安定化を図り始めました。備蓄米とは平時に毎年一定量を買い上げ倉庫で保管している米で、主に5年間の保存期間満了時に非常時備蓄として放出されます。通常この放出米は古米(1年以上経過米)が中心ですが、令和の米騒動では異例の措置として2年落ちや3年落ちの備蓄米まで食用に供給されることになりました。具体的には、2022年産の「古古米」(収穫後約2年)約20万トン、および2021年産の「古古古米」(約3年経過)約2万トンを、小売業者との随意契約で市場販売する方針が打ち出されたのです。

この方針が明らかになると、ニュースやSNS上で「古古米」「古古古米」という言葉が飛び交い、一気に注目を集めました。特に2025年5月から6月にかけては、次のような出来事や発言が話題となりました。

  • 学校給食での使用発覚: とある自治体で学校給食に古古古米が使用されていたことが保護者の指摘で明らかになり、「子どもに古古古米を食べさせるとは何事か」とSNSで怒りの声が噴出しました。物価高対策で在庫米を活用した苦肉の策との報道もありましたが、詳細は不明で保護者の不安が広がりました。この件をきっかけに「古古古米」という単語自体がTwitter(X)のトレンドに入るなど、一躍社会問題として取り上げられたのです。
  • 政界からの指摘: コメ不足への対応として古古古米まで放出する政府に対し、一部から批判も出ました。国民民主党の玉木雄一郎代表は国会で「1年経ったら動物のエサになるようなもの」を人間に食べさせるのかと発言し物議を醸しました(後に発言の趣旨について釈明)。また立憲民主党の原口一博議員も2025年6月の集会で「古古古米はニワトリさんが一番食べている。人間様は食べていない。恐ろしいでしょう?」と述べ、政府のコメ政策を痛烈に批判しています。野党側は、コメ余り解消のために生産調整を進め過ぎた結果として需要逼迫と価格高騰を招いた政府の失策だと指摘し、「本来人間が食べないような古米を食べざるを得ない状況」に懸念を示しました。
  • 政府・専門家の対応: こうした不安や批判を払拭するため、農林水産省はメディア向けに備蓄米の試食会を開催しました。2025年5月29日には小泉進次郎農水大臣(当時)が報道陣の前で2021年産から2024年産まで4年分の米で握ったおにぎりを試食し、「率直に僕はどれを食べてもおいしくいただけます」とコメント。炊飯器を開けた瞬間には最古の21年産米でわずかにツンとした匂いが感じられたものの、味に大きな遜色はなく**「すべて美味しく食べられる」**とのアピールがなされました。

これは農林水産省で行われた備蓄米試食会の様子です。複数年経過した米を炊いて食べ比べ、安全性と味の評価が報道陣に公開されました。このように政府関係者や専門家が古古古米を実際に食べてみせたことで、「本当に食べても大丈夫なのか?」という世間の不安に答える動きが見られました。テレビ各局でも備蓄米の試食企画が相次ぎ、10年前の超古米(2015年産、古が9つ付く米!)を炊いて食べてみせる番組まで登場しました。試食した出演者からは「想像以上においしい」「風味はほとんど変わらない」といった驚きの声も上がり、適切に保管された古米のポテンシャルが知られる結果ともなりました。

以上のように、2024〜2025年にかけてコメ価格高騰の非常事態古古古米の市場投入が重なったことで、この言葉がニュースやSNSで大きくクローズアップされることになったのです。

3. 古古古米の健康・安全性に関する懸念点

古古古米に対して真っ先に挙がる懸念は、「品質の劣化による味の低下」や「安全性への不安」です。前述の通り年数を経た米は風味が落ちるため、「おいしくないのでは?」「子どもの成長に悪影響では?」といった声が出ました。しかし専門家によれば、適切に保管された米であれば3年程度経ってもすぐ健康に害が出るものではないとされています。むしろ重要なのは**「いつ精米されたか」「保存環境が良好か」**という点で、精米後放置された米は酸化が進み味・栄養が落ちるためです。政府備蓄米の場合は籾や玄米の状態で低温・低湿度管理されており、「問題ないでしょう」との専門家の見解が報じられています。実際、5年前の米でも真空パック&低温保存であれば「普通のご飯だった」という試食結果もあり、保存状態次第で古米でも十分食べられることが確認されています。

カビや害虫のリスク: 年月を経た米でも正しく保管されていればカビや虫の発生は防げます。政府の備蓄米は定温倉庫で管理され、放出前には厳重な検査が行われます。具体的には、販売直前に全ての袋を開封して二重の金網に通し、網上にカビ状の異物が残らないか全量目視検査します。もし一つでもカビが確認されれば、その袋(30kgないし1トン)の米は人用なら丸ごと廃棄し、飼料用でもカビ部分を全量廃棄します。さらに人用に回す米についてはカビ毒(マイコトキシン)検査も実施し、食品衛生法の基準に適合したものだけが出荷されます。このように検査体制は万全で、仮に数年保存された米であっても基準を満たす安全なものだけが市場に出回る仕組みです。逆に言えば、素人保管の古米(例:家庭倉庫で何年も放置など)は温度・湿度管理が不十分な場合が多く、カビやコクゾウムシ等の害虫繁殖リスクが高まります。そうした不適切保管の古米は摂食に適しないため、古古古米だから危険というより**「保存環境による」**と言えるでしょう。

総合すると、古古古米そのものに有害性があるわけではなく、適切な保存と検査を経ていれば新米と比べて衛生上は大きな問題はありません。味や匂いの面では多少の劣化は避けられないものの、炊き方の工夫(※後述)によって十分おいしく食べられるレベルとの評価も出ています。「あと1年で飼料」という表現はあくまで品質面の印象に基づくものであり、安全性という観点では過度に心配しすぎる必要はないでしょう。

※古古古米のおいしい炊き方: 古いお米をおいしく食べるコツとしては、「研ぎ米はいつも以上にしっかり洗う」「通常より水加減をやや多めにする」「1時間程度の浸水時間をとる」などが挙げられます。実際に家庭で古米を常食している方からも、十分おいしく炊けるとの声があり、工夫次第で古古古米でも美味なご飯に炊き上げることが可能です。

4. 古古古米の価格・市場流通状況

価格差: 古古古米は基本的に割安で取引されています。政府の備蓄米放出における随意契約では、2021年産米(古古古米)5kgが約1800円程度(税込み)で販売される見通しとなりました。1kgあたりに換算すると360円前後であり、コシヒカリ等の新米相場が5kgあたり4000~4300円(1kgあたり800~860円)にも達していたことを考えると半額以下の安値です。実際、ファミリーマートが店頭販売する古古古米の価格は1kgあたり388円と発表されており、他社も同程度の水準で販売を予定しています。ローソンは1kg袋360円(税込)や2kg袋700円(税込)という低価格商品を計画しており、セブン‐イレブンも調理便利な無洗米に加工して2kg800円程度で提供するとしています。このように、新米と比べ家計に優しい価格設定となっているため、「安いなら買いたい」「少々古くても安ければ助かる」という消費者も多く、発売前から予約が殺到するケースも見られました。

流通ルート: 古古古米の流通は、主に政府備蓄米の売り渡しを通じて行われます。農林水産省は大手の米穀業者・小売業者に随意契約で備蓄米を販売し、それが各店舗で一般消費者向けに小分け販売される仕組みです。2025年前半にはまず大手スーパー向けに令和4年産(2022年産)の古古米が供給され、在庫が上限の20万トンに達するほど人気化しました。次に令和3年産(2021年産)の古古古米については、約10万トンを中小の米店・スーパー向けに別枠で放出することが決まり、オンライン説明会ののち2025年5月30日から申請受付が開始されています。大手コンビニ各社(ファミマ・セブン・ローソン)もこの中小枠に申し込み、ファミマは1000トン、セブン-イレブンとローソンは各500トンの古古古米割り当てを獲得しました。これらは精米・小分包装されたうえで2025年6月初旬より順次店頭発売される計画となっています。一方で大手向けに契約された2022年産古古米(2年落ち)は、先行して同年6月上旬には大型スーパーに流通し始める見込みです。このように古古米→古古古米と段階的に市場投入が進められており、政府在庫の古米が広く流通に乗るのは極めて異例と言えます。

販売元・担い手: 古古古米の販売には様々な企業・団体が関わっています。例えば、全国規模の流通ではイオンなど大手スーパー米穀卸業者が備蓄米を仕入れて精米・小売しています。また先述のコンビニ大手3社は、消費者の身近な購入ルートとして古古古米を積極的に取り扱う方針を打ち出しました。さらに地方では、自治体系の地域密着スーパー町の米屋も随意契約に参加しています。例として大分県のスーパーマルミヤや新鮮市場などが古古米の割当を受け、6月中旬を目処に店頭販売を予定しています。これに対し、一部の小規模米店からは「我々町の米屋に降りてくるのは結局古古古米のほうだけか」といった不満の声も上がっており、大手優先の配分に異議を唱える向きもあります。しかし消費者側から見れば、安価な米が身近な店で手に入るメリットは大きく、多くの人が発売を心待ちにしている状況です。実際、備蓄米放出のニュースが広まった2025年5月末頃には、「もうすぐ安い米が出回るらしいから今は買い控える」という消費者行動が見られ、店頭で米の売れ行きが急に鈍ったという報告もありました。それだけ古古古米への期待が高まっているとも言えるでしょう。

5. 古古古米の利用地域や具体例

全国的な広がり: 古古古米の流通・使用は日本全国に及ぶ見込みです。元々、政府の備蓄米制度自体が全国規模で運用されており、放出される米も各地の需要に応じて配分されています。2025年6月時点では、東京・大阪など大都市圏から順にコンビニ店頭で古古古米が販売開始され、以降は地域を拡大していく計画です。例えばファミリーマートでは6月5日に東京都と大阪府の各10店舗で先行発売し、その後順次エリアを拡大すると発表しています。セブン‐イレブンやローソンも準備が整い次第、全国の加盟店に供給していく意向です。したがって、都市部のみならず地方でも夏頃までには店頭に並ぶ可能性が高く、古古古米は一過性のスポット商品ではなく全国流通商品となりつつあります。

地域別の具体例: いくつか地域での具体的な利用例を挙げます。

  • 九州地方(大分県): 前述のとおり、大分県では地域チェーンのスーパーが政府備蓄米(2022年産古古米)の割当を受け、県内各店舗で古古米を販売予定です。6月中旬から店頭に並ぶことを目指していますが、県内で実際どれくらいの数量が流通するかは未定とのことです。一部のスーパー店長は「古古米が終わって古古古米になるなら、正直申し込む気はない」と慎重な姿勢も示しており、地域によって温度差も見られます。
  • 北海道地方: 北海道内でも備蓄米放出の動きがあり、道内大手のアークスグループ(ラルズや東光ストア等)などが古古米の販売時期を調整しています。2022年産古古米については既に一部スーパーで販売が始まっており、2021年産古古古米の申請も受理待ちの状況との報道がありました。北海道はコメ産地でもありますが、消費者の価格志向から古米でも安価な米への需要があるようです。
  • 関東地方(首都圏): コンビニ各社が積極的に展開するエリアであり、東京・神奈川・埼玉などではいち早く古古古米が入手可能となるでしょう。またローソンは独自の施策として、2022年産・2023年産の米を使った**「ヴィンテージ米おにぎり」**を企画しています。これは通常より安価(1個約120円)に設定したおにぎりで、古米を「Vintage(ヴィンテージ)」とポジティブに捉えて商品化したユニークな試みです。7月上旬から関東の一部店舗で発売予定とされ、都市部の消費者に古米への抵抗感を持たせない工夫と言えます。
  • 学校給食への利用: 前述のとおり、一部自治体では学校給食に備蓄米を活用している例があります。歴史的にも、政府備蓄米は保存期限(5年)を迎えると無償または低額で自治体に提供され、学校給食用に再利用されてきた経緯があります。今回問題となった古古古米についても、本来は緊急放出ではなく計画的に給食やフードバンクに回されるはずだったものが、コメ不足により前倒し的に市場流通した面があります。文部科学省は騒動を受け「原則として学校給食に3年以上経過米は提供しない方針」を示し、保護者への説明徹底など改善策を講じる意向です。従って、今後は給食で古古古米が使われることは基本的になくなる見通しですが、裏を返せばそれだけ今回のケースが異例だったとも言えるでしょう。
  • 外食産業や加工用途: 現時点で具体的事例は多く報じられていませんが、コメ価格高騰に苦しむ外食チェーン等がコスト削減のため古米の利用を検討する可能性も指摘されています。実際、米価高騰を受けて一部の飲食店ではランチ営業を休止したり、安価な輸入米に切り替える動きも出ています。そうした中、「古古古米でも国産米を使い続ける」という選択をする業者も出てくるかもしれません。ただ品質面の要求が高い高級店などでは難しいため、主には価格重視の業務用ルート(例:社員食堂、業務スーパー向けなど)で古古古米が活用されると考えられます。

以上のように、「古古古米」は2024~2025年のコメ需給ひっ迫を背景に全国各地で流通・利用され始めた新潮流と言えます。その登場は賛否両論ありますが、消費者にとっては家計負担を和らげる救世主となる一方、食の安全や農業政策を考えるきっかけにもなっています。今後、適切な品質管理と情報開示のもとで、古古古米が有効に活用されていくことが望まれるでしょう。

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