衆院選(2月8日投開票)の応援演説で高市早苗首相が述べた「外為特会の運用が今ホクホク状態だ」という発言をめぐり、みずほ銀行が首相の経済認識を名指しで批判する異例のレポートを公表し、大きな波紋が広がっています。
みずほ銀行は2月2日、「高市演説を受けて~危うい現状認識~」と題したレポートを公開しました。選挙期間中に国内メガバンクが現職首相の発言を公に批判するのは極めて異例であり、金融業界と政権の間にある認識のずれが、改めて浮き彫りとなりました。
問題となった首相発言とその後の釈明
高市首相は1月31日、神奈川県川崎市での街頭演説において、「今円安だから悪いと言われるけれども、輸出産業にとっては大チャンス。円安でもっと助かっているのが外為特会で、運用は今ホクホク状態です」と発言しました。
この発言は、円安を前向きに評価し、容認しているかのように受け止められ、為替市場では一時、1ドル=155円50銭台まで円安が進行しました。
こうした反応を受け、高市首相はその後、自身のX(旧ツイッター)で、「円安メリットを強調したわけではない」、「為替変動にも強い経済構造を作りたいという趣旨だった」と釈明しましたが、市場や金融関係者の間では疑問の声が残りました。
みずほレポートが問題視したのは「円安容認」そのものではない
みずほ銀行のレポートを執筆したのは、チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏です。唐鎌氏は、高市首相の発言が円安容認かどうかについては、「それ自体は本質的な問題ではない」と述べています。
問題の核心として指摘したのは、「為替が修正されれば、日本企業の行動変容が劇的に起きるという前提」そのものだとしています。
「アベノミクスで失敗が立証された理屈」と厳しく指摘
レポートでは、「為替水準の変化によって企業行動が大きく変わるという考え方は、2013年以降のアベノミクスを経て、すでに失敗が立証されている」と、かなり踏み込んだ表現で首相の認識を批判しました。
具体的には、円安が長期間続いたにもかかわらず、国内設備投資は大きく増えず、一方で日本企業の対外直接投資は増え続けたという事実を示し、「為替だけで企業の行動変容は起きない」と断じています。
外為特会は「ホクホク」ではなく「弾薬」だという警鐘
みずほ銀行のレポートが特に強い警鐘を鳴らしたのが、外為特会(外国為替資金特別会計)に対する認識です。
レポートでは、外為特会について、「将来の通貨防衛に際し、投機筋と戦うための有限な原資だからこそ『弾薬』と形容される」と説明しています。
そのうえで、「本来の目的以外で使うことは禁忌である」と明確に述べ、財源論などへの安易な活用に強い懸念を示しました。
政界と世論に広がる波紋
このレポートはSNSを中心に急速に拡散しました。LINEヤフーの川邊健太郎会長は、「選挙期間中に銀行がこういうレポートを出すのは、なかなか珍しいこと」とXに投稿し、注目度の高さを示しました。
立憲民主党の塩村文夏参院議員も、「みずほ銀行も警鐘を鳴らしている」としてレポートを紹介し、野党側からは首相批判の材料として歓迎する声が相次ぎました。
与党内からは反発と不快感も
一方で、自民党内からは反発の声も上がっています。ある閣僚経験者は、「システム障害で世間に迷惑をかけてきた銀行が、よく言う」と不快感を示しました。
また、中堅議員の間では、「財務省に忠誠を誓ったのではないか」と、みずほ銀行の姿勢そのものを疑問視する声も聞かれています。
選挙後の財源論争にも影響する可能性
高市首相は、消費税減税の財源として、外為特会を含む税外収入の活用を示唆しているとの見方もあります。
そのため、今回の「円安ホクホク」発言と、それに対するみずほ銀行の異例の批判は、選挙後に本格化する財源論争や為替政策をめぐる議論に影響を及ぼす可能性があります。
金融の現場と政治の認識のずれが、どのように修正されるのか。この問題は、選挙戦の一過性の話題にとどまらず、今後の経済運営を占う重要な論点となりそうです。
ソース
日本経済新聞
J-PRIME
Yahoo!ニュース
X(旧Twitter)

