NASAの科学者たちは、地球の深海環境を異星世界のアナログとして研究したり、遠方の文明からの信号を検出する新戦略を開発するなど、複数の革新的なアプローチを通じて地球外生命体の探索を進めています。今週発表された研究は、人類が宇宙で生命を探し求める方法を大きく変革する可能性を示しました。
深海が示す異星の世界
研究者たちは、太陽系の氷の衛星に生命が存在しうるかを理解するため、地球の深海火山や熱水噴出口に注目しています。これらの極限環境では、水素ガスや二酸化炭素、硫黄や鉄の化合物が微生物の栄養源となっており、初期の地球や木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドゥスの海底環境を想起させます。
マサチューセッツ大学アマースト校の微生物学者ジェームズ・ホールデン氏は「同じ化合物は氷衛星の海底にも存在する可能性がある」と指摘。NASAは研究者と連携し、極限環境下での生物培養を進めています。2024年10月に打ち上げ予定のエウロパ・クリッパー探査機は、2025年3月に火星重力アシストを行い、2030年4月に木星に到達する計画です。
戦略的シグナル検出の新アプローチ
『天体物理学ジャーナル・レターズ』に発表された別の研究は、異星文明が惑星の配列を観測し、地球からの送信信号を検出する可能性を示しました。ペンシルベニア州立大学とNASAジェット推進研究所の研究者は、過去20年間のディープスペースネットワーク通信を分析。
筆頭著者Pinchen Fan氏は「もし地球と火星の並びを観測できる位置に異星文明があれば、77%の確率で私たちの送信に気付く」と説明しています。研究結果は、SETI(地球外知的生命探査)活動が注目すべき恒星系として、地球から23光年以内かつ太陽系の軌道面と一致する領域を提示しました。
準惑星セレスの生命可能性
さらに『Science Advances』に発表された研究では、火星と木星の間にある準惑星セレスがかつて生命を支えられる環境を持っていたことが確認されました。NASAのドーン探査機による2015〜2018年の観測データから、セレスに生命活動の基盤となる化学的エネルギー源が存在したことが明らかになったのです。
包括的アストロバイオロジー戦略
これらの一連の研究は、NASAが太陽系内外の生命可能性や文明シグナルを探る包括的なアストロバイオロジー戦略の一環であることを示しています。深海から宇宙通信、さらには準惑星まで、人類の探索は多角的に進められています。