🌌 NASA、謎の恒星間彗星「3I/ATLAS」追跡のため惑星防衛ネットワークを起動

史上初、国際的な「惑星防衛キャンペーン」が始動へ


■ 惑星防衛ネットワークが静かに動き出した

NASA(アメリカ航空宇宙局)と国際パートナー機関が、2025年7月に発見された謎の恒星間彗星「3I/ATLAS(スリー・アイ/アトラス)」の異常な挙動を監視するため、正式に惑星防衛プロトコルを起動しました。
この天体は「マンハッタン島ほどの大きさ」とされ、2025年10月29日に**近日点(太陽に最も近づく地点)**を通過する見込みです。

この発表は派手な記者会見ではなく、技術文書の中にひっそりと記載されました。しかし、これが意味するのは非常に重大です。
**「惑星防衛ネットワークが恒星間天体に対応するのは史上初」**だからです。


■ IAWNによる「歴史的監視キャンペーン」

この監視活動を主導するのは、国際小惑星警報ネットワーク(IAWN: International Asteroid Warning Network)
IAWNは国連が承認する惑星防衛組織で、地球に接近する天体(小惑星・彗星など)の観測・警戒を統括しています。

IAWNは2025年11月27日から2026年1月27日にかけて、3I/ATLASを対象とした**「惑星防衛レベルの観測キャンペーン」**を開始することを発表しました。
これは、恒星間天体(太陽系外から飛来した天体)が惑星防衛プログラムに登録される史上初の事例です。

小惑星センターの広報によれば、このキャンペーンの目的は次の通りです:

「3I/ATLASは従来の軌道予測モデルに収まらない異常な挙動を示している。今回の観測は、精密な位置決定と彗星天文学の技術向上を目的としている」

この控えめな声明の背後では、科学者たちが「自然現象では説明できないかもしれない」可能性を静かに議論しています。


■ 彗星の“逆尾”と奇妙な変化

3I/ATLASは、チリに設置されたNASA ATLAS望遠鏡によって2025年7月1日に発見されました。
しかし発見直後から、既存の彗星とは明らかに異なる性質が観測されています。

最も注目されたのは、「アンチテール(逆尾)」と呼ばれる現象。
通常、彗星の尾は太陽風によって太陽から「遠ざかる方向」に伸びますが、3I/ATLASはその反対、つまり太陽へ向かって尾を伸ばしていた
のです。

さらに9月、北欧光学望遠鏡の観測でこの尾が再び通常の方向(太陽から外側)に戻ったことが確認されました。
わずか数週間で尾の方向が反転した彗星は、観測史上ほとんど例がありません。


■ テトラカルボニルニッケルの謎 ― 人工物質か?

ハーバード大学の著名な天体物理学者アヴィ・ローブ(Avi Loeb)教授は、3I/ATLASが放出するガスに注目しています。
ローブ教授の分析によれば、この彗星からは**「テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)₄)」**が検出されています。

これは通常、工業的プロセスでしか生成されない化合物であり、自然の天体から観測されたのは初めてです。
彗星は1秒あたり約4グラムのニッケルを放出しているものの、鉄(Fe)が全く検出されないという極めて異常な特徴を持ちます。

「自然界では見られない化学組成。何らかの人工的プロセスが関与している可能性を排除できない」
― アヴィ・ローブ教授(ニューヨーク・ポスト紙)

この発言は科学界に波紋を広げ、3I/ATLASが「人工物体ではないか」という議論まで巻き起こしました。


■ 探査機との“すれ違い”がもたらすチャンス

偶然にも、NASAの探査機**「エウロパ・クリッパー」(木星の衛星エウロパを調査中)と、ESA(欧州宇宙機関)の「ヘラ」探査機が、2025年10月25日から11月6日にかけて彗星のイオンテール(電離ガスの尾)**を通過する軌道上にあります。

これは、太陽系外からの物質を直接サンプリングできる極めて貴重な機会となる可能性があります。
両探査機が持つ質量分析装置や分光センサーを用いれば、地球から遠く離れた場所で「未知の元素や化合物」を検出できるかもしれません。


■ 人工説 vs. 自然説 ― 科学界の分裂

3I/ATLASの正体について、科学者たちの意見は真っ二つに割れています。

主流の見解では「天然の彗星である可能性が高い」とされています。
欧州宇宙機関(ESA)惑星防衛部門責任者のリチャード・モイスル氏は、次のようにコメントしています。

「現時点の観測結果には、人工的起源を示す兆候は見られません。
分光観測では、水、二酸化炭素、その他の典型的な彗星成分が確認されています。」

一方で、ローブ教授ら一部の研究者は、次の2点を理由に「自然現象では説明がつかない」と主張しています。

  1. 軌道の異常性
    3I/ATLASの軌道は地球の公転面からわずか5度以内に収まっており、確率は0.2%。
  2. 惑星接近の確率
    金星・火星・木星の軌道をすり抜ける経路を通る確率は、ローブ氏の計算では0.005%にすぎません。

これほど精密に「惑星軌道をかすめる経路」を自然にとる確率は極めて低く、「航行プログラムを持った物体ではないか」という推測も浮上しています。


■ 彗星の物理的特徴と今後の観測予定

観測データによると、3I/ATLASの質量はおよそ330億トン
幅は約5〜11キロメートル(3〜7マイル)と推定されています。
移動速度は時速約21万キロメートル
に達し、これは太陽系で観測された中でも最も速い訪問天体のひとつです。

10月29日の近日点通過後、彗星は12月初旬まで太陽の背後に隠れ観測が困難となりますが、その後再び姿を現します。
そして、2026年初頭には太陽系を永遠に離れると見られています。
科学者たちはこの短い期間に、可能な限り多くの観測データを収集しようとしています。


■ 惑星防衛という「新しい時代」

この出来事は、単なる天文学上の話題にとどまりません。
「惑星防衛(Planetary Defense)」とは、地球に接近する天体から人類を守るための科学的・技術的取り組みを指します。
これまで小惑星や隕石衝突のリスク軽減を目的としていましたが、今回は太陽系外からの未知の天体に対して発動
されました。

つまり、「宇宙から来る未知の訪問者」に対して、地球規模で監視と分析を行う新たな時代が始まったのです。


■ まとめ:3I/ATLASは人類に何を問いかけるのか

3I/ATLASの発見は、科学と哲学の境界線を揺るがす出来事です。
それは単なる氷と岩の塊かもしれませんし、あるいは他の文明が残した“何か”の欠片かもしれません。

NASAとESAが展開する今回の国際的キャンペーンは、
「地球外知性の探索(SETI)」と「惑星防衛科学」が交差する歴史的な転換点といえるでしょう。

私たちは今、宇宙の深淵を覗き込みながら、自分たちの存在を問い直す瞬間に立ち会っています。


🔭 関連情報・出典

  • NASA Planetary Defense Coordination Office
  • International Asteroid Warning Network (IAWN)
  • Minor Planet Center 公開資料
  • ESA Planetary Defence Office
  • Avi Loeb (Harvard University) interview via New York Post
  • Live Science, NDTV, IBTimes, Newsweek, The Middle Land 各報道
タイトルとURLをコピーしました