金価格暴落が継続、3月に14%下落|FRBタカ派とドル高で歴史的急落

金価格暴落が続いています。
金と銀は新たな取引週に入っても売りが止まりません。
タカ派姿勢のFRB、米ドル高、そしてイラン戦争に関連するエネルギー価格の高騰が重なり、貴金属市場は数週間にわたる急落局面に入っています。

今回の金価格暴落が重要なのは、通常なら地政学リスクで買われやすい金が、今回は逆に売られているためです。
つまり、市場は安全資産としての金よりも、インフレ再燃と金融引き締め長期化を強く意識しています。
そのため、今後の焦点は利下げ再開ではなく、金利高がどこまで続くかに移っています。

一方で、金価格そのものは1年前と比べると高い水準を保っています。
しかし、短期ではセンチメントが大きく崩れています。
こうした中、金価格暴落が一時的な調整なのか、より深い下落の入口なのかが市場の最大の関心事です。

3月の下落率が示す歴史的な異変

金先物価格は早朝取引で急落しました。
2026年3月は、金にとって記憶に残る最悪級の月になりつつあります。
ウォール・ストリート・ジャーナルのデータでは、日曜日遅くの時点で最前月限の金先物は4,370ドル水準で取引されていました。

この水準は、前の取引セッションから200ドル超の下落です。
また、金は1月に過去最高値の5,608ドル近くまで上昇していました。
しかし、その後は3月初めから約14%下落しています。

金価格暴落という表現が大げさではないことは、週間ベースの数字でも分かります。
ブルームバーグは、金が1983年以来最大の週間下落に向かっていると報じました。
さらにCNBCは、金が先週約10%下落し、ここ数年で最悪の週間暴落になったと伝えています。

銀の下落は金以上に深刻

今回の売りは金だけではありません。
銀も週間で10%以上下落したとCNBCは伝えています。
つまり、貴金属全体に広く売り圧力が広がっています。

さらに、インドのMCXでは、Finnotiaによると、金は3月半ばまでにすでに11%急落しました。
一方で、銀は月間で21%暴落しています。
実際に、銀のほうが値動きの振れが大きく、投資家心理の悪化をより強く映しています。

こうした数字を見ると、今回の金価格暴落は単独の現象ではありません。
貴金属市場全体が、金融政策とエネルギー価格の変化に強く反応しています。
そのため、金と銀の下落は同じ地合いの中で起きていると読み取れます。

発端は2月下旬のイラン攻撃だった

下落の発端は、2月下旬の米国とイスラエルによるイラン攻撃でした。
この攻撃をきっかけに、原油価格が急騰しました。
その結果、市場ではインフレ懸念が再び強まりました。

本来、地政学的な緊張が高まると金は安全資産として注目されやすいです。
しかし今回は、金が恩恵を受ける流れにはなりませんでした。
エネルギーショックが金融政策の見方を変えたことが、金価格暴落を招いた大きな理由です。

つまり、市場は「戦争で不安が高まったから金を買う」とは考えませんでした。
一方で、「原油高でインフレが長引くから金利は下がりにくい」と受け止めました。
この見方の転換が、金市場の流れを一気に変えました。

FRBのタカ派姿勢が売りを強めた

FRBは3月の会合で、政策金利を3.50%〜3.75%に据え置きました。
また、ジェローム・パウエル議長は、インフレの改善が見られなければ利下げは行わないと強調しました。
この発言は市場に強い影響を与えました。

金は利息を生まない資産です。
そのため、金利が高い状態が長引くと相対的な魅力が下がりやすくなります。
実際に、金価格暴落の背景には、この金利見通しの変化があります。

市場は現在、2026年の利下げを完全に織り込まなくなっています。
さらに、バンク・オブ・アメリカによると、顧客からは利上げリスクについての問い合わせも出ています。
金融市場の空気は、利下げ期待から警戒姿勢へと大きく傾きました。

利下げ期待の消滅が相場の前提を変えた

CMEのFedWatchツールでは、4月会合での利上げ確率が12%と示されています。
これは、少し前までの市場心理から見るとかなり大きな変化です。
一方で、利下げが前提だった相場観は急速に崩れています。

こうした中、金市場では「いつ下がり止まるか」よりも、「どこまで金融引き締めが長引くか」が重視されています。
つまり、金価格暴落は単なる値幅の問題ではありません。
金融政策の見通しそのものが変わったことが本質です。

利下げ期待が消えると、金を支えていた一つの柱が失われます。
さらに、利上げの可能性まで意識されると、売りは自己増幅しやすくなります。
そのため、相場の調整ではなく構造変化として見る声も出ています。

ドル高と換金売りが下落を増幅

ドル高も金価格暴落に拍車をかけています。
通常、金はドル建てで取引されるため、ドルが強くなると相対的に買いにくくなります。
その結果、金価格には下押し圧力がかかりやすくなります。

ブルームバーグによると、投資家は他の資産で生じた損失を補うため、金保有を清算しています。
また、金裏付けETFからの資金流出も進んでいます。
実際に、金が安全資産として買われるどころか、現金化の対象になっています。

これは市場のストレスが高い局面でよく見られる動きです。
一方で、金そのものの中長期評価がすべて崩れたことを意味するわけではありません。
しかし、短期では売り圧力の強さが際立っています。

テクニカル面では支えもあるが傷は深い

ABCリファイナリーのグローバル機関投資家市場部門責任者、ニコラス・フラッペル氏は、ロイターに対し見解を示しました。
それによると、金は週足チャートで主要なテクニカルサポートレベルを維持しているといいます。
テクニカルサポートとは、過去の値動きから下げ止まりやすいとみられる価格帯のことです。

しかし同氏は同時に、損害の規模は認識しているとも述べました。
つまり、チャート上の支えが残っていても、下落の痛手そのものは軽くありません。
こうした発言は、相場の傷の深さをそのまま映しています。

一方で、テクニカルな節目を保っていることは、市場にとってわずかな支えでもあります。
しかし、材料主導の売りが続くなら、その支えが試される場面もあり得ます。
そのため、今後の値動きは政策と地政学の両方に左右されます。

年初来ではなお高水準を維持

急落が続いているとはいえ、金価格は1年前から約48%上昇しています。
この点は見落とせません。
つまり、足元では金価格暴落が起きていても、長めの時間軸では大幅高の中にあります。

J.P.モルガンは年末目標を1オンス6,300ドルに据え置いています。
また、ウェルズ・ファーゴは6,100〜6,300ドルと予測しています。
これらの目標は、イラン情勢の激化前に設定されたものです。

そのため、現時点の急落がすぐに長期見通しの全面修正を意味するわけではありません。
一方で、短期のセンチメントは依然として脆弱です。
市場は強気見通しを維持しながらも、目先の下落に神経質になっています。

中央銀行の買いより投機筋の売りが勝っている

SPエンジェルのメタルアナリスト、アーサー・パリッシュ氏は、「構造的な資金移動」が進んでいると指摘しました。
これは、市場の資金の流れが一時的ではなく、ある程度まとまった形で動いているという意味です。
こうした中、これまで強気相場を支えてきた土台にも変化が生じています。

同氏によると、数年にわたり金の上昇を支えてきた中央銀行の買いが、足元では押し負けています。
その相手は、2025年に金価格が66%急騰した際に参入したモメンタム主導のファンドや個人投資家の売りです。
モメンタム主導とは、上昇や下落の勢いに乗って売買する動きです。

つまり、長期資金の買いよりも、短期資金の投げ売りが目立っています。
この構図は、相場の不安定さを強めます。
そのため、金価格暴落が短期間で収束するとは限りません。

市場は押し目買いに慎重姿勢

JPモルガン・チェースの元貴金属トレーダーで、独立系市場アナリストのロバート・ゴットリーブ氏は警告を発しました。
「押し目買いは控えるべきだ。ボラティリティが過度に高い」と述べています。
ボラティリティとは、価格変動の大きさを指します。

さらに同氏は、価格が安定しない限り、さらなる売りが続く可能性があると指摘しました。
これは、安くなったからすぐ買い場とは言えないという意味です。
実際に、急落相場では反発狙いの買いが逆に損失を広げることもあります。

そのため、足元の金市場では値ごろ感より安定性が重視されています。
一方で、中長期の強気見通しを完全に捨てる声ばかりではありません。
しかし、少なくとも短期では慎重論が優勢です。

金価格暴落の焦点は短期と長期のねじれ

今回の金価格暴落では、短期と長期で見方が大きく分かれています。
短期では、FRBのタカ派姿勢、ドル高、原油高、ETF流出が重なり、売りが加速しています。
また、地政学リスクが通常通りの金買いにつながらなかった点も特徴です。

一方で、年初来ではなく1年前比で約48%高いという事実も残っています。
さらに、J.P.モルガンやウェルズ・ファーゴの年末目標は高水準のままです。
つまり、短期の急落と長期の強気見通しが同時に存在しています。

こうしたねじれがあるため、市場参加者は判断を難しくしています。
しかし、少なくとも現時点では、利下げ期待の消滅が金価格暴落の中心要因です。
そのため、今後の転換点はFRBの姿勢とインフレ動向が握ることになります。

ソース

CNBC
ウォール・ストリート・ジャーナル
ブルームバーグ
Finnotia
バンク・オブ・アメリカ
CME FedWatch
ロイター
J.P.モルガン
ウェルズ・ファーゴ
SPエンジェル

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