中東情勢の悪化が、日本のエネルギー市場を大きく揺らしています。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖と、カタールのLNGプラント被害が重なりました。
そのため、商品市場が大きく変動しました。
今回の焦点は、日本企業の明暗がはっきり分かれた点です。
総合商社は資源価格の上昇を追い風に業績成長を見込む一方で、電力・ガス会社は燃料費急騰で大幅減益を見込んでいます。
つまり、同じ中東紛争でも、受ける影響は業種によって正反対です。
こうした中、2026年4月末の決算発表が重要な材料になりました。
この記事では、その最新状況を基に、日本のエネルギー市場の二極化を詳しく整理します。
また、今後の日本経済や電気料金への波及も見ていきます。
ホルムズ海峡とLNG被害が市場を直撃
今回の混乱の背景には、米国・イスラエルによるイラン攻撃があります。
その後、ホルムズ海峡の通航がほぼ停止しました。
さらに、カタールの主要LNG施設がミサイル被害を受けました。
LNGとは、液化天然ガスのことです。
天然ガスを冷やして体積を小さくし、船で運びやすくした燃料を指します。
日本の発電や都市ガスで重要な役割を担います。
この事態を受け、アジアのLNGスポット価格は70%急騰しました。
また、原油価格も1バレル84ドル超を想定する水準に上昇しています。
実際に、日本は原油とLNGの輸入の多くを中東に依存しています。
そのため、短期的な供給混乱は避けられませんでした。
一方で、日本企業の多くは長期契約を軸に調達しています。
しかし、完全に影響を遮断できるわけではありません。
日本企業は即時影響を抑えても遅れて負担が来る
長期契約中心の日本企業は、足元の急変をすぐには受けにくい構造です。
しかし、安心とは言い切れません。
3か月のタイムラグで、原油連動LNG価格が上昇する懸念が高まっています。
原油連動とは、LNG価格が原油価格に連動して決まる仕組みです。
つまり、原油高が続けば、少し遅れてLNG調達価格も上がります。
この仕組みが、電力会社やガス会社の収益を圧迫します。
さらに、その影響は企業の決算だけにとどまりません。
電気料金や産業コストに波及する可能性があります。
実際に、電力市場価格は3年ぶり高値を記録しました。
こうした中、日本政府は補助金拡充を検討しています。
一方で、燃料高そのものを止めることは難しい状況です。
そのため、日本のエネルギー市場では構造的な差がより鮮明になっています。
総合商社は資源高を追い風に堅調を維持
大手5社、すなわち三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は、2026年3月期決算で堅調さを示しました。
背景には、資源価格高があります。
また、非資源分野の成長も支えになりました。
まず、三井物産は当期利益8340億円でした。
前年比では7.4%減です。
しかし、原油84ドル想定で次期は9200億円の増益予想を示しました。
伊藤忠商事は9000億円でした。
さらに、次期は9500億円を見込み、2期連続の最高益を予想しています。
非資源分野と北米電力成長が支えです。
三菱商事は約9500億円の前期実績ベースから、7000億円の見通しです。
一方で、進捗87%とされ、安定感があります。
資源売却益の剥落があっても、基盤の強さが意識されています。
住友商事と丸紅にも広がる追い風
住友商事は6003億円でした。
そして、次期は6300億円を見込んでいます。
多角化効果が業績を支えています。
丸紅も強含みです。
主な要因は、銅価格の堅調さです。
一方で、本文中では具体的な利益額を示していません。
ここで重要なのは、資源価格の上昇だけではありません。
非資源分野の成長が資源下落を補っている点です。
つまり、総合商社は単なる資源株ではなく、事業の厚みで利益を守っています。
さらに、投資家の注目も集まっています。
ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイは、これら5社に約400億ドル超を推定で投資しています。
そのため、日本の総合商社への評価は引き続き高い水準です。
総合商社5社の利益見通し
| 会社名 | 2026年3月期利益(億円) | 2027年3月期予想(億円) | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 三井物産 | 8340 | 9200 | 原油・石炭価格高 |
| 伊藤忠商事 | 9000 | 9500 | 非資源・北米電力成長 |
| 三菱商事 | 約9500(前期実績ベース) | 7000 | 資源売却益剥落も安定 |
| 住友商事 | 6003 | 6300 | 多角化効果 |
| 丸紅 | – | 増益見込み | 銅価格堅調 |
この表からも、総合商社の強さが見えてきます。
しかし、各社の見通しには差があります。
一方で、全体としては資源高が利益を下支えしている構図です。
電力・ガス会社は燃料高で厳しい局面
一方で、電力・ガス会社の状況は厳しさが際立ちます。
10大電力会社の多くが2027年3月期予想を下方修正、または未定としました。
中東紛争が、日本のエネルギー市場の二極化を一段と強めています。
中国電力は55%減益です。
関西電力は3801億円で9.6%減です。
さらに、東京ガスは40%減益見通しです。
全体では、6社が減益、4社が未定です。
これは、燃料高の影響の大きさを示しています。
また、先行きの見通しが立ちにくいことも表しています。
実際に、電力・ガス会社は調達コスト上昇を受けています。
しかし、料金への転嫁には限界があります。
そのため、収益悪化がより深刻になっています。
原油連動条項が電力会社の負担を重くする
電力・ガス会社の苦境の背景には、LNG長期契約の原油連動条項があります。
これは、契約価格が原油価格と連動する仕組みです。
そのため、原油高が続くと、時間差で調達費が上がります。
在庫対応にも限界があります。
つまり、足元でしのいでも、やがてコスト上昇が表面化します。
一方で、総合商社のように価格高を利益化する構造はありません。
さらに、卸電力価格の高騰も重なっています。
その結果、家庭や企業の料金上昇が避けられない状況です。
こうした中、政府の31億ドル補助が検討されています。
しかし、補助金は一時的な緩和策にすぎません。
燃料調達構造そのものは変わりません。
そのため、電力・ガス会社の厳しさは続く可能性があります。
電力・ガス会社の見通し一覧
| 会社名 | 2026年3月期利益(億円) | 2027年3月期見通し | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 関西電力 | 3801 | 大幅減 | LNG調達費急騰 |
| 中国電力 | – | 55%減 | 燃料高転嫁遅れ |
| 東京ガス | – | 40%減 | 価格高騰継続 |
この表を見ると、燃料高を料金転嫁しにくい構造が重くのしかかっていることが分かります。
また、業績見通しを出しにくい会社が多い点も不安材料です。
つまり、日本のエネルギー市場では、同じ資源高でも勝ち組と苦戦組が明確に分かれています。
なぜ総合商社と電力会社で差がつくのか
この差は、単なる景気の波ではありません。
事業構造の違いが、今回の業績格差を生んでいます。
ここが、日本のエネルギー市場を理解するうえで重要です。
総合商社はグローバルな資源ポートフォリオを持っています。
ポートフォリオとは、収益源の組み合わせです。
そのため、資源価格の上昇を利益に変えやすい立場です。
一方で、電力会社は国内規制の下でコスト吸収を強いられます。
価格転嫁には制度面と社会面の制約があります。
さらに、燃料調達で海外市場の影響を強く受けます。
つまり、同じ中東紛争でも、利益になる企業と負担になる企業が出ます。
実際に、総合商社は上振れ余地を持ちます。
しかし、電力会社は燃料高が長引くほど不利になります。
二極化が示す日本のエネルギー政策の課題
今回の二極化は、単なる企業業績の違いではありません。
中東依存からの脱却と、脱炭素化の必要性を浮き彫りにしています。
ここが、今後の日本のエネルギー市場にとって最大の論点です。
日本は、中東からの原油やLNGへの依存度が高い国です。
そのため、中東紛争の影響を直接受けやすい構造です。
一方で、エネルギー安保、つまり安定供給の確保は簡単ではありません。
さらに、脱炭素化も求められています。
脱炭素化とは、二酸化炭素の排出を減らす方向への転換です。
しかし、現実にはLNGや原油への依存がまだ大きいです。
こうした中、短期対応と中長期戦略の両立が必要です。
補助金だけでは根本解決になりません。
また、供給源の分散や電源構成の見直しも課題になります。
今後は総合商社優位と電力再編の可能性
今後の焦点は、紛争の長期化です。
紛争が長引けば、総合商社の優位が続く可能性が高いです。
一方で、電力・ガス会社の負担はさらに重くなるおそれがあります。
電力セクターでは、再編の可能性も意識されます。
燃料高や価格転嫁の制約が続けば、単独での収益確保が難しくなります。
そのため、経営統合や事業見直しの議論が進むかもしれません。
また、家庭や企業にも影響が及びます。
電気料金や産業コストの上昇は、物価や企業収益に波及します。
実際に、日本のエネルギー市場の問題は、生活と経済の両方に直結しています。
つまり、今回の中東紛争は、海外の地政学リスクにとどまりません。
日本のエネルギー市場の弱点と、企業ごとの強弱を同時に映し出した出来事です。
この二極化がどこまで広がるのかが、今後の大きな注目点です。
ソース
資源エネルギー庁
Diamond Online
One Career
日本経済新聞
Reuters
千葉日報
丸紅
産経新聞
Bloomberg
日本エネルギー経済研究所(IEEJ)

