GSKが開発する慢性B型肝炎治療薬候補bepirovirsen(ベピロビルセン)が、B-Well 1とB-Well 2の第III相試験で、全体集団の19%に機能的治癒をもたらしました。
慢性B型肝炎は、長く治療が必要になりやすい感染症です。
そのため、治療終了後もウイルスを抑えられる可能性を示した今回の結果は重要です。
日本では、すでに承認申請が受理されています。
つまり、世界初の実用化に向けた審査が進んでいる段階です。
1,800人超を対象にした第III相試験の全体像
GSKによると、bepirovirsenは29カ国、1,800人超を対象とした2本の第III相試験で評価しました。
この試験では、主要評価項目を達成しました。
また、全体集団で19%の機能的治癒率を示しました。
さらに、ベースラインのHBs抗原が1,000 IU/mL以下の患者では、機能的治癒率は26%でした。
こうした中、患者背景によって結果に差が見られた点も重要です。
機能的治癒とは何を意味するのか
ここでいう機能的治癒とは、治療終了後24週間以上にわたり、血中のHBV DNAとHBs抗原が検出不能な状態を維持することです。
HBV DNAはB型肝炎ウイルスの遺伝情報です。
また、HBs抗原はウイルス表面のたんぱく質で、感染の指標のひとつです。
つまり、薬をやめた後も、免疫系がウイルスを抑えられる状態を指します。
GSKは、これらの結果について「statistically significant and clinically meaningful(統計的に有意かつ臨床的に意義がある)」と説明しています。
現在の標準治療が抱える限界
慢性B型肝炎は、世界で約3億人が抱える重要な感染症です。
さらに、肝がんの主要な原因のひとつでもあります。
現在の標準治療は核酸アナログです。これは、ウイルスの増殖を抑える薬です。
しかし、核酸アナログはウイルス増殖を抑えられる一方で、治療終了後も続く機能的治癒は一般に得にくいです。そのため、長期服薬が前提になりやすいという課題があります。
有限期間治療の意義が大きい理由
慢性B型肝炎では、治療目標が長く「抑制」に置かれてきました。
一方で、有限期間で治療目標を引き上げられる薬剤には大きな臨床的意義があります。
bepirovirsenの結果は、治療の目的を「抑制」から「治癒に近い状態の獲得」へ押し上げる可能性を示しました。
実際に、全体で19%、特定集団で26%という結果は、これまで届きにくかった目標に現実味を与えています。
日本でも小さくない医療課題
日本でも、慢性B型肝炎の患者は約100万人とされます。決して小さくない医療課題です。
そのため、bepirovirsenの進展は日本の医療現場にとっても無関係ではありません。
さらに、日本で審査が先行している点も注目されます。
一方で、現時点では承認前です。
つまり、期待が高い一方で、正式な結論は規制当局の判断を待つ必要があります。
bepirovirsenの仕組みと薬剤としての特徴
bepirovirsenは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に分類される治験薬です。
ASOとは、特定のRNAに結びつく短い核酸で、標的分子の働きを抑える技術です。
難しく言えば遺伝情報の流れを妨げる薬ですが、要するにウイルス関連たんぱく質の産生を狙って減らす仕組みです。
この薬は、HBV関連RNAを標的にして、ウイルス関連たんぱく質の産生を抑えるよう設計しています。
従来薬とどこが違うのか
GSKは、bepirovirsenの特徴として、ウイルス抑制に加えて免疫応答の回復を後押しする点を位置づけています。
従来の薬は「増殖を止める」ことを主眼にしてきました。
しかし、bepirovirsenは「治療終了後も制御できる状態」を狙います。
つまり、治療中だけ効くのではなく、治療後の状態まで視野に入れている点が大きな違いです。
また、この発想の違いが今回の試験結果の意味を大きくしています。
Ionisとの協業が支える核酸医薬
bepirovirsenは、GSKがIonis Pharmaceuticalsからライセンスを受けて開発してきた薬です。
そのため、この開発には両社の協業が土台としてあります。
さらに、この構図は核酸医薬の技術が感染症領域でも実用段階に入りつつあることを示す材料でもあります。
核酸医薬とは、DNAやRNAに関連する仕組みを使って病気を狙う医薬品です。
実際に、今回の事例はその応用範囲の広がりを示しています。
日本で進む先行審査
日本では、厚生労働省がbepirovirsenの新薬承認申請を受理しています。
GSKによると、日本での先駆的医薬品指定は2024年8月に付与されました。
さらに、今回の申請受理は世界初の規制上の提出として位置づけられています。
こうした中、日本が最初の審査先となっていることは大きな意味を持ちます。
一方で、審査はまだ継続中です。
承認済みではなく審査中である点に注意
現時点で、bepirovirsenは承認済みではありません。
あくまで審査中です。そのため、現段階で「使える薬」と断定することはできません。
承認の可否は、提出データの精査や規制当局の判断に委ねられます。
さらに、実際の上市時期も、その後の行政手続きに左右されます。
米国・中国・欧州でも審査が進行
bepirovirsenについては、米国や中国、欧州でも規制当局による審査が進んでいます。
GSKは、2026年の早い段階から各地域での判断を見込んでいます。
しかし、実際の上市時期は今後の審査結果と各国での手続き次第です。
つまり、日本だけでなく主要地域での判断がそろうことで、世界展開の方向性がより明確になります。
慢性B型肝炎治療市場への影響
GSKは今回の結果を受けて、慢性B型肝炎治療の考え方を変える可能性があると強調しています。
全体で19%、特定の低HBs抗原群で26%という結果は、従来治療では届きにくかった機能的治癒に現実味を与えます。
そのため、市場の関心は高まっています。
さらに、慢性B型肝炎治療の競争環境にも影響を与える可能性があります。
実臨床では患者選別が重要になる可能性
一方で、効果は患者背景によって差があります。
そのため、実臨床ではどの集団に最も有効かを見極める必要があります。
つまり、誰にでも同じように高い効果が出ると単純には言えません。
実際に、HBs抗原が低い患者群でより高い機能的治癒率が示されました。
こうした結果は、今後の治療戦略や患者選別に影響を与える可能性があります。
核酸医薬と感染症治療への波及効果
今回の結果は、B型肝炎領域だけの話ではありません。
核酸医薬や次世代感染症治療の開発にも波及効果を持つ可能性があります。
また、ウイルスを抑えるだけでなく、治療終了後の状態改善を狙う考え方が広がるきっかけにもなり得ます。
一方で、承認前の段階です。
そのため、現時点では「治療を一変させる」と断定するのではなく、「その可能性を示した」と表現するのが適切です。
現時点で確認できる情報の位置づけ
本記事は、GSKの日本向けリリース、英語圏のGSK公式発表、ならびに関連報道をもとに構成しています。
数値や承認状況は、確認できた公開情報に基づいて記載しています。
また、承認の可否や上市時期は今後変更される可能性があります。
そのため、今後の続報では、審査結果や各国の規制判断をあわせて確認することが重要です。
ソース
GSK
GSK日本法人
Marketscreener
The Globe and Mail
EATG
Fierce Biotech

