海外渡航を後押しする制度改正と出国税引き上げの全体像
政府は18日、10年有効の日本国旅券、いわゆる10年パスポートの申請手数料を、現在のおよそ1万6000円から約9000円へと大幅に引き下げる方針を固めました。引き下げ幅は約7000円にのぼります。
この制度改正は、2026年1月に召集予定の通常国会に旅券法改正案を提出し、同年7月からの実施を目指すものです。日本人のパスポート保有率が約17パーセントと、先進国の中でも低水準にとどまっている現状を踏まえ、海外渡航を促進する狙いがあります。
なぜ今、パスポート手数料を下げるのか
低迷するパスポート保有率という課題
日本では、長年にわたりパスポートの保有率が伸び悩んできました。全人口に占める保有率は約17パーセントにとどまり、「海外に行きたくてもパスポートを持っていない人」が多数存在しています。
パスポートは、一度取得すれば長期間使えるとはいえ、申請時にまとまった費用がかかります。特に10年用は、現行制度では約1万6000円という金額が心理的なハードルになっているとの指摘がありました。
今回の引き下げは、パスポート取得を「高い初期投資」から「気軽な準備」に近づける狙いがあります。たとえるなら、高額な入会金が必要だった施設を、ぐっと利用しやすくするような政策です。
18歳以上は10年用に一本化
制度がどう変わるのか
今回の旅券法改正案では、制度そのものも大きく変わります。
18歳以上の成人については、これまで存在していた5年用パスポートを廃止し、10年用に一本化されます。
現行制度では、オンライン申請の場合、10年用が約1万5900円、5年用が約1万900円と分かれていましたが、改正後はこれを一律で約9000円にする方向です。
有効期間が長い10年用に統一されることで、更新の手間が減り、行政側の事務負担軽減にもつながるとされています。
未成年の手数料も大幅引き下げ
年齢区分を整理
18歳未満については、引き続き5年用パスポートのみとされますが、手数料は一律で約4500円に設定される見込みです。
現在は、12歳以上が約1万1000円、12歳未満が約6000円と、年齢によって細かく区分されています。これが簡素化され、家族での海外渡航にかかる負担も軽減されることになります。
たとえば、これまで子どもの年齢によって費用計算が複雑だった家庭にとっては、分かりやすく、計画を立てやすい制度になります。
財源は出国税の引き上げで確保
国際観光旅客税とは何か
パスポート手数料を引き下げる一方で、政府と与党は、その財源として国際観光旅客税、いわゆる出国税を引き上げる方針を固めています。
国際観光旅客税は、日本を出国するすべての人に一律で課される税金で、現在は1人あたり1000円です。これを3000円に引き上げる案が検討されています。
2024年度の出国税収は、訪日外国人の増加により約525億円に達しました。3000円に引き上げた場合、税収は1500億円規模に拡大する見込みとされています。
出国税増収分の使い道
観光と地方支援へ
出国税の増収分は、パスポート手数料引き下げの財源に充てられるだけではありません。
具体的には、観光地に人が集中しすぎることで問題となっているオーバーツーリズム対策や、地方へのインバウンド誘客事業などに活用される予定です。
観光客を都市部だけでなく地方にも分散させることで、地域経済の活性化を図る狙いがあります。
外国人向けビザ手数料も見直しへ
約50年ぶりの大幅改定
今回の動きは、日本人向けの制度だけにとどまりません。
政府は、外国人向けビザの発給手数料についても、約50年ぶりに見直す方向で検討しています。
現在は3000円程度となっているビザ手数料を、1万5000円程度に引き上げる案が浮上しています。
これにより、日本人の海外渡航促進と、訪日外国人の受け入れ環境整備を、財政面で両立させる狙いがあります。
手数料引き下げがもたらす影響
10年パスポートの手数料が9000円になれば、これまで「高いから後回しにしていた」層が動き出す可能性があります。
海外旅行だけでなく、留学、仕事、緊急時の渡航など、人生の選択肢が広がる効果も期待されます。
一方で、出国税の引き上げにより、頻繁に海外に行く人ほど負担が増える点については、今後も議論が続くとみられます。
海外に出る日本人を増やす政策転換
今回の一連の制度改正は、日本人の内向き志向を和らげ、国際的な人の往来を活発にする政策転換とも言えます。
パスポート取得を身近なものにし、その一方で観光政策の財源を確保する。
政府は、こうしたバランスを取りながら、日本の国際的な往来を再活性化させようとしています。
ソース
毎日新聞
沖縄タイムス
日本政府関係者の説明
国際観光旅客税に関する公表資料
各種報道機関の統合情報

