近年、人工知能、いわゆるAIの活用が急速に広がっています。
その流れの中で、AIを動かすためのデータセンターへの投資が世界的に増え続けており、その影響が、私たちの身近なスマートフォン市場にも少しずつ波及し始めています。
業界関係者の分析によると、AI向け半導体、とくにメモリチップの供給が追いつかない状況が続くことで、2026年にはスマートフォンの価格が現在より3%から8%ほど上昇する可能性があるとされています。
これは一時的な現象というより、スマートフォンを取り巻く環境が変わりつつある兆しとも受け取れそうです。
調査会社が示す、価格上昇と市場縮小の見通し
市場調査会社のIDCは、2026年のスマートフォン市場について、比較的影響が穏やかな場合でも平均販売価格が3%から5%ほど上昇する可能性があるとしています。
一方で、半導体不足が長引いた場合には、値上げ幅が6%から8%に広がる可能性も否定できないと分析しています。
価格が上がる一方で、販売台数はやや減少する見込みです。
IDCは、世界全体のスマートフォン市場が約3%縮小する可能性があり、状況次第では5%を超える減少も考えられるとしています。
海外メディアでは、この動きを「スマートフォン市場がこれまでとは少し違う局面に入りつつある」と表現しており、構造的な変化の始まりと見る向きもあります。
スマートフォン用メモリはなぜ足りなくなっているのか
今回の価格上昇の背景には、AI向けメモリ需要の急増があります。
AIを動かすには、非常に高速で大量のデータを処理できる高性能なメモリが必要です。
こうした用途に使われる高帯域幅メモリは、一般的なスマートフォンやパソコン向けのメモリよりも高価で、メーカーにとって収益性が高い製品です。
そのため、半導体メーカーは利益の大きいAI向けメモリの生産を優先する傾向を強めています。
結果として、スマートフォン向けに供給されるメモリの量が減り、需給のバランスが崩れているのが現状です。
メモリメーカーの経営陣からは、AI向けメモリの需要が2026年末まで供給を上回る状態が続くとの見方も示されており、短期間で状況が大きく改善する見通しは立っていません。
低価格スマートフォンほど影響を受けやすい理由
とくに影響を受けやすいとされているのが、低価格帯のスマートフォンを主力とするメーカーです。
これらの製品は、もともと利益率が低いため、部品価格の上昇を企業側で吸収する余地があまりありません。
その結果、コスト増加分を販売価格に反映せざるを得ない状況に追い込まれやすくなります。
実際、一部のメーカーでは、最新モデルの価格を前世代より引き上げる動きがすでに見られます。
調査会社は、今後、低価格帯スマートフォンでは2割以上の値上げが起こる可能性があり、中価格帯や高価格帯でも段階的な価格上昇が見込まれるとしています。
体力のある企業は比較的余裕を持って対応
一方で、すべてのメーカーが同じ条件で影響を受けているわけではありません。
資金力に余裕のある大手企業は、1年以上前から長期の供給契約を結び、必要なメモリを確保しているケースが多いとされています。
こうした企業は、供給不足の影響を比較的抑えながら製品展開を続けることが可能です。
このような調達力の差は、今後、価格や製品戦略の違いとして、よりはっきり表れてくるかもしれません。
スマートフォン以外にも広がる値上げの動き
メモリ不足の影響は、スマートフォンだけに限られません。
パソコンやサーバーの分野でも、価格引き上げの動きが広がっています。
一部のメーカーでは、企業向けサーバーで1割以上、一般向けパソコンでも数%の値上げを計画しています。
また、ゲーム機分野でも、搭載されるメモリやストレージ部品の価格上昇が報告されており、製品コスト全体に影響が及んでいます。
供給状況の改善は、しばらく先になりそう
半導体業界では、新しい製造工場が本格的に稼働するまでには数年かかるとされています。
そのため、多くの専門家は、メモリ不足の状況が緩和されるのは2027年から2028年ごろになると見ています。
AIの普及は、私たちの生活をより便利にする一方で、こうした形で身近な製品の価格に影響を与えています。
スマートフォンやパソコンを取り巻く環境が、少しずつ変化していることを意識しておく必要がありそうです。
ソース
Reuters
IDC
Counterpoint Research
MacRumors
PCMag
PhoneArena
Tom’s Hardware
TrendForce
Bloomberg

