2026年4月5日、高市早苗首相は自身のXに投稿しました。
そして、「プラスチックの原料ナフサについて、少なくとも国内需要4カ月分を確保している」と明言しました。
さらに首相は、「中東以外からのナフサ輸入量を倍増する」とも表明しました。
そのため、この方針が実現すれば、国内在庫は半年以上に延びるとの見通しも示しました。
この発言の背景には、2026年2月下旬に起きた中東情勢の急変があります。
米国・イスラエルによる軍事作戦を契機として、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖しました。
こうした中、日本の石油化学サプライチェーンは深刻な危機に直面しています。
つまり、日本の石油化学産業の生命線であるナフサ調達が揺らいでいるということです。
ナフサが日本経済で担う役割
ナフサとは、粗製ガソリンとも呼ばれる石油化学製品の基礎原料です。
また、プラスチック、合成繊維、塗料、接着剤の出発点にもなります。
さらに、医療機器、半導体部品、自動車部品にも使われます。
そのため、ナフサは現代の産業と生活を支える「縁の下の力持ち」です。
実際に、国内のエチレンプラントは、エチレン原料の95%をナフサに依存しています。
一方で、ナフサが不足すると、その影響はサプライチェーン全体へ連鎖します。
日本のナフサ供給構造と中東依存
日本で使うナフサの供給構造は、次の通りです。
| 調達区分 | 割合 |
|---|---|
| 国内精製(国産ナフサ) | 約39% |
| 輸入ナフサ(中東産) | 約45%(輸入の74%) |
| 輸入ナフサ(中東以外) | 約16% |
国内で使うナフサのうち、輸入分は全体の61%を占めます。
さらに、その輸入ナフサの74%がUAEやクウェートなどの中東産です。
また、国産ナフサの原料となる原油も、95%程度が中東由来です。
そのため、実質的に日本はナフサの8割超を中東に依存しています。
ナフサ在庫の薄さが抱える問題
さらに深刻なのは、ナフサ在庫の薄さです。
危機勃発前の時点で、ナフサ自体の国内在庫はわずか2〜3週間分に過ぎませんでした。
一方で、原油備蓄は国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄を合わせて約250日分あります。
しかし、ナフサには数週間分のバッファーしかありません。
つまり、原油と比べてナフサは緩衝材が極めて少ない状態です。
そのため、供給網が揺らぐと石油化学サプライチェーンは一気に不安定になります。
4カ月分確保の内訳
首相が説明した「4カ月分」の内訳は、次の通りです。
- 輸入ナフサ(既調達分)+国内精製分:約2カ月分
- ナフサを原料とした中間段階の化学製品の在庫:約2カ月分
- 合計:少なくとも4カ月分
ここでいう中間化学製品とは、最終製品になる前の化学素材です。
つまり、プラスチックなどを作る途中段階の材料在庫も含めて計算しています。
さらに首相は、中東以外の地域からの輸入拡大にも言及しました。
米国や南米などからのナフサ輸入量を倍増させる考えを示しました。
そのため、在庫を半年以上に延ばせるとの見通しも表明しました。
また、ナフサ由来の中間化学製品についても、「世界からの新たな調達を強化する」と述べました。
首相が強調した安定供給方針
報道番組では、「6月には確保が困難になる」との懸念が指摘されました。
しかし首相は、この4カ月分の内訳を根拠に反論しました。
そして、「国民生活と経済活動に影響が生じないよう、安定供給の実現に全力を尽くす」と強調しました。
こうした中、政府はナフサそのものだけでなく、中間化学製品も含めた多層的な供給維持を進めています。
政府の対応タイムライン
政府の対応は、次の流れで進みました。
| 日付 | 対応内容 |
|---|---|
| 2026年2月下旬 | イランがホルムズ海峡を事実上封鎖し、供給危機が勃発 |
| 3月16日 | 石油備蓄の放出開始、ガソリン補助金導入(全国平均約170円に抑制) |
| 3月17日 | 赤澤経産大臣が閣議後会見で「4カ月分確保可能」と初表明 |
| 3月25日 | 参院予算委員会で公明・竹内議員が中東依存脱却と多角化を提言 |
| 3月下旬 | 赤澤大臣を責任者とするタスクフォース設置、省庁横断の体制整備 |
| 3月28日 | 高市首相がXで「ナフサ輸入を中東から切り替える」と表明 |
| 3月31日 | 関係閣僚会議でアジア諸国との相互協力・支援を検討表明 |
| 4月5日 | 高市首相がXで「ナフサ4カ月分確保」「中東外輸入倍増」を明言 |
このタイムラインを見ると、政府対応は段階的に拡大しています。
また、燃料価格対策と石油化学サプライチェーン対策が並行して進んでいることも分かります。
産業界に広がる影響
東洋経済の報道によれば、4月中の稼働にはメドが立っています。
しかし、GW明け以降の見通しは各社の調達努力に委ねられている状況です。
実際に、大手化学メーカーを中心にナフサ価格が高騰しています。
そのため、逆ざやが生じ、汎用樹脂ラインの稼働率を絞る動きも出始めています。
なお、個別社名や価格水準については、一次ソース確認が必要です。
一方で、石油化学サプライチェーンへの圧力が強まっている流れ自体は明確です。
構造的な脆弱性が浮き彫りに
参院予算委員会では、公明党の竹内議員が問題点を指摘しました。
竹内議員は、「石油の代替調達にも限界がある」と述べました。
さらに、「中東依存脱却を含め調達の多角化と国内供給力強化が重要」と指摘しました。
つまり、今回の危機は一時的な混乱ではなく、構造的な脆弱性を映し出しています。
こうした中、長期的な課題も浮上しています。
中東依存度の大幅削減、米国産エタンなど代替原料への転換、国内石油化学産業の再編による共同調達力強化です。
今後の焦点はどこにあるのか
政府が示す「4カ月分」という数字には注意が必要です。
なぜなら、この数字はナフサ本体の在庫だけでなく、中間化学製品の在庫も合算しているからです。
一方で、東洋経済の試算では、「ナフサ自体は2カ月で従来通りの供給が困難になる」とも指摘しています。
そのため、中東以外からの輸入倍増がどこまで実現できるかが大きな焦点になります。
さらに、調達交渉、物流、価格動向も重要です。
実際に、石油化学サプライチェーンの安定は、輸送手段や国際市況にも左右されます。
石油化学サプライチェーン危機への備え
今回の危機は、ナフサの確保だけで終わる話ではありません。
また、日本の石油化学サプライチェーン全体をどう守るかが問われています。
そのため、短期的には在庫確保と輸入先多角化が重要です。
さらに、中長期では調達構造そのものの見直しが避けられません。
一方で、政府が示す数字をそのまま楽観的に受け取ることもできません。
つまり、今後は量の確保、輸送の維持、価格の抑制を同時に実現できるかが試されます。
読者が押さえるべき注意点
現時点で政府は、ナフサ4カ月分確保を前面に出しています。
しかし、その中身には中間化学製品在庫も含まれています。
そのため、ナフサ単体の供給余力とは分けて考える必要があります。
また、今後の報道では、石油化学サプライチェーンのどの段階の在庫なのかを見極める視点が重要です。
編集注記:本記事は公開情報および報道をもとに作成しています。
個別企業の生産状況・価格水準については、一次ソースでの確認を推奨します。
ソース
北海道新聞
産経新聞
日本経済新聞
東京新聞
東洋経済
Ouchi Mall
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