天文学者らが、二重星を周回する27個の新惑星候補を発見しました。
今回の発見は、従来の惑星探査方法を超える革新的な手法によるものです。
そのため、映画「スター・ウォーズ」のタトゥイーンを思わせるサーキュムバイナリ惑星の存在数が大きく増える可能性が出てきました。
サーキュムバイナリ惑星とは、二重星のまわりを公転する惑星のことです。
一方で、こうした惑星は見つけにくく、これまで確認例は限られていました。
つまり今回の成果は、見えていなかった惑星集団に光を当てる発見だといえます。
TESSの観測データから1,590個の食双星系を解析
今回の研究では、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究チームが、NASAのTESSのデータを使いました。
TESSは、恒星の明るさの変化を観測して惑星候補を探す宇宙望遠鏡です。
実際に研究チームは、1,590個の食双星系を解析しました。
食双星系とは、2つの星が互いを回りながら、地球から見て重なって見える二重星系です。
こうした中で、研究チームは27個の惑星候補を特定しました。
これにより、これまでわずか18個しか確認されていなかったサーキュムバイナリ惑星の数が、ほぼ倍増する可能性があります。
発表時期と研究者の見解
研究リーダーを務めたMargo Thornton博士課程学生は、「これまでの惑星探査は検出しやすいものに偏っていた」と指摘しました。
この発見は、2026年5月4日ごろに発表されました。
また、研究成果はMNRAS(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)に掲載されました。
MNRASは、天文学分野で広く知られる学術誌です。
そのため、今回の研究は話題性だけでなく、学術的な裏付けを伴って公表された形です。
さらに、発表日がスターワーズ・デーと重なったこともあり、タトゥイーンを連想させるサーキュムバイナリ惑星として注目を集めました。
従来のトランジット法では見つけにくかった理由
従来の主力手法は、トランジット法でした。
これは、惑星が恒星の前を通過したときの明るさの低下を観測する方法です。
しかし、この方法では惑星の軌道が地球からの視線方向にうまく揃っている場合にしか検出できません。
一方で、二重星系では軌道の配置が複雑になりやすく、通常のトランジット法だけでは見逃しが増えます。
そのため、サーキュムバイナリ惑星の実数は、確認済みの数より多い可能性が以前から指摘されてきました。
つまり、従来法は便利である半面、検出対象に偏りを生みやすかったのです。
近点歳差運動という新手法を使った点が核心
今回の研究で鍵になったのは、近点歳差運動(apsidal precession)の活用です。
近点歳差運動とは、天体の軌道の向きが少しずつ回転していく現象を指します。
さらに今回は、二重星の軌道が惑星の重力でわずかに回転する変化に注目しました。
この方法は、トランジットの有無に直接依存しません。
そのため、これまで見つけにくかったサーキュムバイナリ惑星にも手が届く可能性があります。
実際にこの手法は、従来の観測バイアスを減らす手段として重要です。
余分な歳差要因を除外して惑星候補を絞り込んだ
研究チームは、観測された軌道変化について慎重に検討しました。
しかし、単純に惑星があると決めつけたわけではありません。
その前に、相対論的効果、潮汐力、星の自転による歳差を除外しました。
相対論的効果とは、重力や高速運動による時空の影響です。
潮汐力とは、天体同士の重力差が生む引っ張る力です。
こうした中で、それらを除いても説明が足りないため、追加の重力摂動源、つまり惑星候補が必要だと判断しました。
惑星候補の質量と距離の幅
研究では、候補天体の性質も推定しました。
その結果、候補惑星の質量は、海王星サイズから木星の10倍までとされました。
また、地球からの距離は650〜18,000光年に及びます。
この幅の広さは、今回のサンプルが多様であることを示します。
一方で、すべてが同じタイプのサーキュムバイナリ惑星というわけではありません。
つまり、今回の27個の候補は、形成環境や進化過程が異なる複数の系を含んでいる可能性があります。
候補の多くは木星質量未満だが曖昧さも残る
候補のうち多くは、木星質量未満と推定されています。
しかし、信号には曖昧さが残っています。
そのため、低質量惑星が1AU以内にある場合と、高質量の伴星が数AUにある場合を、現時点では区別できません。
AUは天文学で使う距離の単位で、地球と太陽の平均距離を1AUとします。
つまり、今回の信号だけでは、本当に惑星なのか、あるいは別の重い天体なのかを断定できません。
この点は、今後の確認作業で最も重要な論点になります。
確定にはラジアルベロシティ観測が必要
研究チームは、候補を確定するためにラジアルベロシティ観測が必要だとしています。
ラジアルベロシティ観測とは、天体の重力で恒星が前後に揺れる動きを、光の波長のずれから測る方法です。
この方法を使えば、見えない天体の質量や存在の確からしさを詳しく調べられます。
一方で、観測には時間も装置も必要です。
そのため、27個すべてが短期間で確定するとは限りません。
しかし、サーキュムバイナリ惑星の候補を本当に惑星として認定できるかどうかは、ここにかかっています。
フォローアップ観測の計画
Thornton氏らと、Benjamin T. Montet准教授は、ラジアルベロシティ観測などのフォローアップを計画中です。
これは、今回の候補をより厳密に検証するための次の段階です。
実際に追加観測が進めば、サーキュムバイナリ惑星の母集団の理解が一気に進む可能性があります。
フォローアップとは、初期発見のあとに行う追跡観測や追加検証です。
さらに、候補ごとの質量や軌道半径が明確になれば、形成理論との比較もしやすくなります。
そのため、今回の研究は発見で終わらず、今後の観測計画まで含めて大きな意味を持ちます。
なぜこの発見が重要なのか
宇宙にある星の半数以上が二重星系だとされています。
しかし、そうした環境でサーキュムバイナリ惑星がどのように形成されるかは、まだよく分かっていません。
そのため、候補が27個も増えたこと自体が、理論研究にとって大きな前進です。
Benjamin T. Montet准教授は、「数千〜数万個の可能性がある」と指摘しました。
つまり、これまで少数しか見つかっていなかったのは、存在しないからではなく、見つける方法が限られていたからかもしれません。
一方で、今回の結果は、惑星形成が二重星系でも比較的容易に起こりうる可能性を示します。
惑星形成の見方を変える可能性
これまでの系外惑星研究では、単独の恒星を回る惑星が中心でした。
しかし、宇宙で一般的な環境が二重星系なら、そこにサーキュムバイナリ惑星が多く存在しても不思議ではありません。
こうした中で、今回の発見は、惑星形成の「標準像」そのものを広げる材料になります。
さらに、二重星の重力環境は複雑です。
それでも惑星が形成され、長く安定して存在できるなら、従来の理論を見直す必要が出てきます。
つまり、二重星系は例外的な舞台ではなく、重要な惑星形成の現場なのかもしれません。
今後はVera C. Rubin Observatoryにも期待
今後の観測では、Vera C. Rubin Observatoryの10年観測が期待されています。
この観測施設は、広い空を長期間にわたって繰り返し調べる能力を持ちます。
そのため、今回と同様の手法で、さらに多くのサーキュムバイナリ惑星候補が見つかる見込みです。
長期観測には、軌道変化を追いやすい利点があります。
また、多数の恒星系を同時に扱えるため、統計的な研究にも向いています。
実際に候補数が増えれば、例外ではなく集団としてサーキュムバイナリ惑星を分析できるようになります。
居住可能性の議論にも広がり
今回の研究は、単に候補数を増やしただけではありません。
居住可能性の議論にも波及する可能性があります。
居住可能性とは、液体の水が存在しうるなど、生命に適した環境が成り立つ可能性のことです。
Montet准教授は、「生命はどこにでも存在しうる」という見方に触れています。
一方で、今回の27個はまだ候補段階であり、生命の存在を示すものではありません。
しかし、二重星系にも多くのサーキュムバイナリ惑星があるなら、生命探査の対象領域は確実に広がります。
惑星カタログを大きく変える可能性
この手法の強みは、トランジットに依存しない点です。
そのため、従来の探査で見逃されてきた系にもアプローチできます。
さらに、観測バイアスを減らせるため、系外惑星カタログ全体の姿が大きく変わる可能性があります。
これまでのカタログは、どうしても見つけやすい惑星に偏りがちでした。
しかし、新しい観測の窓が開けば、サーキュムバイナリ惑星の比率や分布も再評価が必要になります。
つまり、今回の研究は、単なる新発見ではなく、探査地図そのものの描き直しにつながるかもしれません。
多様な惑星環境の理解へつながる一歩
確認作業が進めば、私たちはより多様な惑星環境を具体的に比較できるようになります。
単独星系、二重星系、さらにはより複雑な多重星系の違いも見えてくるはずです。
そのため、サーキュムバイナリ惑星の研究は、惑星科学全体の基盤を広げる役割を持ちます。
また、惑星の形成、移動、長期安定性という基本問題にも新しい材料を与えます。
実際に候補が確定していけば、理論と観測のずれもより明確になります。
こうして、今回の27候補は、宇宙における惑星の多様性を理解するための重要な出発点になります。
ソース
- arXiv
- UNSW Newsroom
- Smithsonian Magazine
- Popular Science
- The Guardian
- EurekAlert

