2025年春、日本では麻疹(はしか)の感染者が急増しています。国立感染症研究所の報告によると、2025年3月16日時点で年間患者数が32人に達し、そのうち少なくとも22人が3月だけで報告されています。患者は神奈川、兵庫、大阪、東京、埼玉など15都府県に広がり、18人が海外(特にベトナムなど)で感染したと考えられています。年齢別では20代が14人と最多で、感染リスクの高い0歳児も4人確認されています。この事態を受け、厚生労働省は渡航予定者へのワクチン接種検討を呼びかけており、特に流行国への旅行には注意が必要です。
麻疹の基本知識と特徴
麻疹ウイルスとその感染力
麻疹はパラミクソウイルス科に属する麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。このウイルスの最大の特徴はその非常に強い感染力です。感染者と同じ部屋にいるだけで空気感染することがあり、未接種者が感染者に接触した場合、ほぼ100%の確率で感染するとされています。麻疹は「不顕性感染」がなく、感染したほぼすべての人が発症するという特徴があります。
感染経路と感染可能期間
主な感染経路は空気感染ですが、「飛沫感染」や「接触感染」もあります。感染者が他者に感染させる期間は、発疹が出現する4日前から発疹出現後4〜5日程度まで。発疹前の期間が最も感染力が強い点が感染拡大の一因となっています。
症状の進行と特徴
- 前駆期:38°C程度の発熱、咳、鼻水などの風邪様症状(2〜4日)
- 発疹期:39°C以上の高熱とともに赤い発疹(頭部から全身へ)
- 口内症状:発疹前に白いコプリック斑が現れることあり
一度感染すれば免疫は一生持続しますが、重い症状を伴います。
麻疹の危険性と合併症
主な合併症
- 肺炎
- 中耳炎
- 脳炎(重篤な後遺症の可能性)
- 失明(特に栄養不良児など)
これらは特に幼児や免疫不全患者で重症化しやすく、死亡リスクもあります。
特にリスクの高い年齢層
- 0〜1歳児:免疫がないため重症化しやすい
- ワクチン未接種者:年齢問わず重症化リスク大
森内浩幸教授は「流行国への乳幼児同伴は控え、小児科医に相談を」と警告しています。
麻疹の予防と対策
ワクチン接種の重要性
麻疹は空気感染するため、マスクや手洗いでは防げません。MRワクチンの2回接種が最も有効な予防手段です。
日本の予防接種スケジュール
- 第1期:1歳時に1回目
- 第2期:小学校入学前の1年間に2回目
修飾麻疹について
免疫が不十分な人が感染すると「修飾麻疹」を発症。典型症状が出ず、高熱がない場合も。感染力は弱めだが、感染源になりうる点で注意が必要です。
海外渡航者への注意喚起
- 渡航先の流行状況の確認
- 未接種者は出発前にワクチン接種を検討
診断と治療
診断方法
- 発疹・発熱・カタル症状(咳・鼻汁・結膜充血)による臨床診断
- ウイルス検出や抗体検査による確定診断
治療アプローチ
- 解熱鎮痛剤
- 水分・栄養補給
- 合併症対策として抗菌薬使用
接触後72時間以内のワクチン接種で症状軽減の可能性あり。
現在の警戒状況と今後の注意点
輸入症例が中心ですが、国内での二次感染例も発生中。東京都では集団感染の報告はないものの、全国的には増加傾向です。
- ワクチン接種歴の確認(母子手帳など)
- 渡航前の予防対策
- 症状が出た場合はまず医療機関に電話(直接来院は避ける)
まとめ
2025年春の日本における麻疹流行は、非常に感染力が強く、重篤な合併症のリスクもあるため、社会全体での注意が必要です。特に乳幼児や海外渡航者はハイリスク群。定期接種と予防意識が感染防止のカギです。疑わしい症状があれば早めの対応を。麻疹の世界的排除に向け、日本でも一人ひとりの行動が求められています。