
15年の捜索が実を結ぶ ― パラオオウムガイとの遭遇
2024年11月27日、調査船E/Vノーチラスに乗船していた科学者たちは、歴史的な瞬間を迎えました。場所はパラオのジャーマン・チャネル付近。長年探し続けられてきた「パラオオウムガイ」4個体がついに姿を現したのです。
この観察は、過去15年間にわたり1,000回以上の潜水艇調査を行ってきたにもかかわらず、オウムガイ類の目撃が一度もなかったチームにとって初めての遭遇となりました。
探査に参加していたビデオエンジニアでありドキュメンタリー製作者のジェイコブ・オッタヴィアーニ氏は次のように語ります。
「この動物を初めて目撃した時、コントロールバンにいたことは本当に素晴らしい体験でした。」
さらに特筆すべきは、E/Vノーチラス号自体が、創設者ロバート・バラード博士によって、これら古代の頭足類「オウムガイ」にちなんで命名されていたという事実です。まさに象徴的な出会いとなりました。
オウムガイ ― 恐竜時代から生き残る「生きた化石」
パラオオウムガイは**国際自然保護連合(IUCN)**によって「近絶滅種」に指定されている貴重な生物です。その姿は恐竜時代からほとんど変わらず、タコやイカを含む頭足類の中でも最も古い系統を代表しています。
「生きている化石」として知られる彼らは、深海の厳しい環境に適応しながら、数億年もの長い歴史を刻んできました。今回の発見は、その生態を解明する大きな手がかりになると期待されています。
深海から現れた新しい仲間 ― クサウオ科の新種3種
オウムガイの発見に加え、海洋生物学の分野ではさらなる朗報が届きました。**モントレー湾水族館研究所(MBARI)とニューヨーク州立大学ジェネセオ校(SUNY Geneseo)の研究者たちは、カリフォルニア沖で3種の新しいクサウオ(スネイルフィッシュ)**を確認しました。
🐟 ボコボコクサウオ(Careproctus colliculi)
2019年、MBARIの遠隔操作探査機によって水深約3,270メートルで発見されました。ピンク色でゼリーのような質感を持ち、大きな目と丸い頭、そして特徴的な凸凹の体表を備えています。発見者であるマッケンジー・ジェリンガー氏は「とても可愛らしい」と評しました。
🐟 ダーククサウオ(Careproctus yanceyi)
全身が真っ黒な体を持つ深海魚で、暗闇に潜む姿は神秘的です。
🐟 スリーククサウオ(Paraliparis em)
細長い体を持ちながら吸盤がなく、独特の進化を遂げたクサウオです。
これら3種は学術誌『Ichthyology and Herpetology(魚類学と爬虫類学)』に正式に記載され、科学界に新たな知見をもたらしました。
ミズーリ州で希少なトンボ ― 生息域が拡大
北米で最も希少なトンボの一つであるハインズエメラルドトンボが、米国ミズーリ州ボリンガー郡で初めて確認されました。これにより既知の生息範囲は30マイル以上拡大しました。
この観察は2025年6月下旬、ミズーリ州保全局(MDC)が湧水の湿地で実施していた定期的なモニタリング中に記録されたものです。
MDCの自然史生物学者スティーブ・シェル氏は次のように述べています。
「ハインズエメラルドトンボは北米で最も希少なトンボの一つです。」
このトンボは連邦指定絶滅危惧種であり、1999年までミズーリ州で記録されていませんでした。それ以降も東オザーク地域の限られた郡でしか確認されていません。今回の発見は保全活動にとって大きな意味を持ちます。
発見が示すもの ― 地球の生命多様性と探究心
今回の一連の発見は、深海から湿地まで、地球上の生命の多様性と未知の広がりを示しています。
海洋生物学者マッケンジー・ジェリンガー氏はこう語ります。
「新たに3種ものクサウオを発見できたことは、地球上の生命についてまだまだ学ぶべきことが多いこと、そして探究心と探検の力の大きさを思い起こさせてくれます。」
生きた化石オウムガイ、深海の新種、そして希少なトンボの記録――これらは、自然界が持つ無限の驚異を改めて人類に伝えているのです。