― ハンター症候群の3歳男児、医師も驚く改善 ―
■ たった数カ月で「酵素ゼロ」から「正常の数百倍」へ
アメリカ・カリフォルニア州から英国マンチェスターへ――。
3歳の男の子、オリバー・チュウ君は、極めて稀で深刻な遺伝病「ハンター症候群」と診断され、
その後、ロイヤル・マンチェスター小児病院で世界最先端の遺伝子治療を受けました。
治療からわずか9か月。
それまで体内でまったく作れなかった酵素を、正常値の“数百倍”も作り出しているという驚異的な変化が確認され、医師たちを驚かせています。
こうした改善は、これまでの治療法ではほぼ不可能とされていたレベルであり、世界中の医療関係者が注目しています。
■ ハンター症候群とは?
簡単に説明すると、ハンター症候群(MPSⅡ)は以下のような病気です。
● どんな病気?
- 体に必要な酵素が生まれつき作れない遺伝病
- 酵素がないため、細胞内に“不要な糖のゴミ”がどんどん溜まってしまう
- その結果、臓器が腫れ、発達が遅れ、脳にもダメージが進む
● 症状は?
- 呼吸の問題
- 心臓の障害
- 発達の遅れ
- 認知機能低下
● 男児に多い理由
X染色体に異常があるため、男児に圧倒的に多く(10万人に1人程度)、重症例では10代で亡くなることもあります。
● 従来の治療
週1回の「酵素補充療法」が主流ですが、
- 年間で約30万ポンド(約5,500万円)
- 脳に届かないため進行を完全には止められない
という限界がありました。
■ この遺伝子治療は“脳に届く”
今回オリバー君が受けた治療は、既存の治療とは全く異なる最先端技術です。
● 遺伝子治療の手順
- 骨髄から幹細胞を採取する
- ロンドンの病院で細胞を“遺伝子改変”
- 欠けている遺伝子の正常なコピーをウイルスを使って細胞に組み込む
- 改変した細胞をオリバー君の体に戻す
● 画期的ポイント「ApoEIIタグ」
組み込まれた遺伝子には、
酵素が血液脳関門(脳のフィルター)を通り抜けられるようにするタグ
が付けられています。
つまり、
“脳へ酵素を運ぶ”という今まで不可能だったことが実現した
ということです。
■ 実は一度“消滅しかけた研究”だった
この遺伝子治療は、マンチェスター大学のブライアン・ビガー教授が15年以上かけて開発。
しかし、治験を担当するはずだった米企業Avrobioが財政難で研究を中断。
治療は一度、世に出ないまま終わりそうになりましたが、大学側がライセンスを回収し、
多くの研究者の努力によって治験は続行されました。
そして2024年12月、オリバー君は世界で5人目の治療対象者となったのです。
■ 効果は予想を超えるレベル
2025年5月、オリバー君の両親は医師から驚くべき報告を受けます。
- 言語能力が改善
- 運動能力も向上
- 酵素補充療法を中止できた
- 酵素量は正常の数百倍
臨床試験を率いるサイモン・ジョーンズ教授は、
「20年間、この瞬間を待っていた。信じられないほど感動している」
と語りました。
これは、ハンター症候群の治療史の中でも画期的な成果です。
■ 関連する他の遺伝病への応用も進行中
今回の手法はハンター症候群(MPSⅡ)だけでなく、
以下の疾患にも応用研究が進んでいます。
- MPSⅠ型(ハーラー症候群)
- MPSⅢ型(サンフィリッポ症候群)
これらも同様に酵素欠損による重い代謝疾患で、
改善が難しい病気として知られています。
現在、米国・欧州・オーストラリアで5人の男児が治験に参加しています。
■ この研究の“本当の意味”
この遺伝子治療の成功が示すのは、
- “遺伝子を修正して病気を根本から治す”
- “脳に酵素を届ける”
- “治療が一生続かない未来”
といった、未来医療の方向性そのものです。
もしこの治療が確立すれば、
「原因遺伝子を修復する治療」が一般化し、
多くの難病に対して根本的治療が可能になるかもしれません。
■ まとめ
ハンター症候群のオリバー君が見せた劇的改善は、
単なる奇跡ではなく、
研究者たちの長年の努力・最新の遺伝子工学・家族の勇気が重なって実現した成果です。
まだ治験段階ではありますが、
医療の未来を大きく変える出来事として、
世界中から注目が集まっています。
ソース
・BBC報道
・マンチェスター大学研究チーム発表
・治験担当医師・関係者コメント
・各国医療機関による治験データ概要

