ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた恒星間彗星3I/ATLAS

太陽系外から訪れた珍しい天体が予想外の噴出活動を見せる

NASAとハッブル宇宙望遠鏡が、太陽系外から飛来した恒星間彗星3I/ATLASの最新画像を公開しました。これは、太陽系外からやって来た天体として確認された三例目にあたる貴重な対象で、12月19日の地球最接近に向けて、驚くような活動を見せていることが分かっています。

公開された画像には、輝くコマと呼ばれるガスの雲に包まれた彗星の姿と、尾が二本はっきり伸びている様子が映し出されていました。彗星の尾が複数見えるのは、物質の放出方向が異なる場合などに起きる現象で、活動が非常に活発な天体であることを示しています。

今回の観測は、これまでで最も鮮明に撮影された恒星間彗星の姿であり、彗星研究にとって大きな意味を持つ成果となりました。


地球から二億八千六百万キロ離れた彗星を高精細で撮影

ハッブル望遠鏡が11月30日に捉えた画像では、彗星の周囲を包む涙滴形の塵の雲がはっきり確認されました。これは、彗星の表面が太陽光によって温められ、ガスや塵が放出されることで形成されるものです。

3I/ATLASは2025年7月にNASAと欧州宇宙機関によって初めて観測されました。これは、チリに設置されたATLAS望遠鏡ネットワークが7月1日に発見した直後のことです。さらに、7月21日のハッブルの初期観測から、彗星の核は直径が5.6キロメートル以下である可能性が示され、活動性の高い天体であることも判明しました。


彗星内部で起きる氷の火山活動

研究者たちが特に注目しているのが、3I/ATLASが見せている「氷火山」のような挙動です。氷火山とは、低温の宇宙環境で、氷が液体やガスのように噴き出す現象を指します。

スペインのジョアン・オロ望遠鏡の研究チームは、この彗星で氷火山活動が起きている可能性を指摘しました。表面近くの氷に含まれる二酸化炭素が昇華してガスとなり、そのガスが内部にある金属化合物と反応して圧力を生み出し、大規模な噴出を引き起こしていると考えられています。

特に、彗星が太陽に最も近づいた十月二十九日前後には、彗星の明るさが急激に増加しました。この急増は単なるガス放出では説明できず、彗星表面で広範囲にわたる噴火が発生したことを示唆しています。

研究者たちは次のようにコメントしています。
新たに発見される天体は、そのたびに既存のモデルに予想外の修正を迫ってくる。金属を多く含む組成と氷火山の可能性は、他の恒星系で彗星がどのように形成されるかという従来の考え方に挑戦している。


二酸化炭素と水の比率が異例の数値

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測では、3I/ATLASのコマのなかで二酸化炭素と水の比率が八対一という、非常に極端な数値が検出されました。彗星では通常、水の方が多いため、この比率は珍しく、形成環境が極めて低温だった可能性が示されています。

あるいは、星間空間を長期間航行するあいだに、宇宙放射線によって化学組成が大きく変化した可能性も考えられています。


明るさが周期的に変動する理由

ハーバード大学の天体物理学者アヴィ・ローブは、彗星の明るさが約十六時間おきに変動していることについて、単なる自転ではなく噴出活動のリズム、つまり心拍のような脈動によるものではないかと指摘しています。

ローブは次のように述べています。
放出されるガスや塵は、まるで生き物の心拍のようにリズミカルな活動をしている。

一方でNASAは、これらの観測はすべて自然な彗星活動の範囲内で説明でき、人工的な信号や技術文明の痕跡を示すものではないと明確に述べています。


各国の天文機関が観測競争

欧州宇宙機関のJUICE探査機も十一月初旬に五つの科学機器を使って彗星を観測しました。しかし、通信に制約があるため、全データが地球に届くのは二〇二六年二月になる見込みです。

3I/ATLASは十二月十九日に地球から約一億七千万マイル(約二億七千万キロメートル)の距離まで最接近します。再び星間空間へと旅立つ前に、各地の天文学者ができる限り多くのデータを得ようと競うように観測を続けています。

恒星間彗星はめったに観測できない貴重な天体であり、その化学組成や活動パターンは、別の恒星系でどのように天体が生まれ進化するのかを知る手がかりになります。今回の3I/ATLASの観測は、太陽系外の世界を理解するための重要なサンプルだと言えるでしょう。


ソース

LiveScience(livescience.com)
IBTimes(ibtimes.co.uk)
Nature Astronomy(nature.com)
Europan Space Agency

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