世界の半導体業界は、これまでに例のないDRAM不足に直面しています。
この影響で、ノートパソコンやスマートフォンのメーカーは、製品のメモリ仕様を引き下げざるを得ない状況に追い込まれています。
DRAMとは、パソコンやスマートフォンが処理中のデータを一時的に保存するメモリです。
アプリの動作速度や複数作業の快適さに直結する重要な部品です。
DDR5メモリ価格が3か月で約300%上昇
不足の深刻さは価格に表れています。
16Gb DDR5チップの契約価格は、2025年9月時点では約6.84ドルでした。
しかし、同年12月には27.20ドルにまで急騰しました。
わずか3か月で約300パーセントの上昇です。
ノートパソコンはRAM削減へ
市場調査会社のTrendForceによると、大手PCメーカーが対応を迫られています。
デルとレノボは、2026年からミッドレンジのノートパソコンでRAM容量を削減する計画です。
現在主流となりつつある16GB構成は、8GBへ引き下げられる見通しです。
これは性能よりもコストを優先せざるを得ない判断といえます。
メモリ非搭載PCという異例の対応
状況はさらに深刻です。
ブティックPCビルダーのParadox Customsは、メモリを搭載しない状態の完成品PCを販売し始めました。
購入者が自分でRAMを用意することを前提としています。
これは、通常では考えにくい対応であり、メモリ不足の異常さを物語っています。
スマートフォンも性能後退へ
スマートフォン分野も同様の圧力を受けています。
TrendForceは、2026年にエントリーレベルのスマートフォンのRAMが4GBに戻ると予測しています。
現在は6GBから8GBが一般的ですが、それ以前の水準へ後退する形です。
ミッドレンジ機も、12GB構成ではなく6GBから8GBに制限される見込みです。
不足は2027年以降まで続く可能性
調査会社IDCによると、このメモリ不足は短期では解消しません。
2027年まで続く可能性があるとしています。
一部のメーカーは、状況が2028年まで長引く可能性すらあると警告しています。
消費者向け機器への影響は、数年単位で続く見通しです。
AI需要がメモリ不足を加速
今回の不足の背景には、人工知能分野の急成長があります。
半導体メーカーは、消費者向けDRAMよりも利益率の高いAI向けメモリに生産能力を振り向けています。
特に注目されているのが、高帯域幅メモリです。
高帯域幅メモリとは、AIデータセンターで大量のデータを高速処理するための特殊なメモリです。
メモリ大手も生産枠が完売状態
サムスン電子とSKハイニックスは、2026年分のHBMとDRAMの生産能力がすでに完売していると報告しています。
供給余力がほとんど残っていない状況です。
このため、消費者向け製品へのメモリ供給は後回しになっています。
結果として、価格高騰と仕様削減が同時に進んでいます。
Appleが直面する大幅なコスト上昇
この影響を強く受けている企業の一つがAppleです。
iPhone 17 Proモデルに搭載される12GBのLPDDR5X RAMの価格は急騰しています。
2025年初頭は約25ドルから29ドルでした。
現在は約70ドルに達しており、約230パーセントの上昇です。
iPhone価格上昇の可能性
Appleが結んでいるサムスンとSKハイニックスとの供給契約は、2026年1月に満了予定です。
その後は、さらに高い価格を受け入れる必要が生じる可能性があります。
結果として、iPhoneの製造コストが上昇します。
価格転嫁による販売価格の引き上げも避けられない可能性があります。
メモリ価格上昇と製品価格への影響
サムスンは顧客に対し、2025年第4四半期にメモリ価格が30パーセントから60パーセント上昇すると通知しました。
特定のDDR5製品では、最大60パーセントの値上げが見込まれています。
IDCは、2026年に平均PC価格が最大8パーセント上昇すると予測しています。
スマートフォンの平均販売価格も、過去最高となる465ドルに達する可能性があります。
DIYによる回避策は限定的
一部の自作愛好家やモッダーは、別の方法を模索しています。
中国の販売業者から基板とメモリチップを調達し、自作RAMを試す動きも出ています。
しかし、現時点では小売価格と比べて大きな節約にはなっていません。
コスト削減策としては限定的な効果にとどまっています。
参考情報源
ロイター通信
TrendForce
IDC
Tom’s Hardware
各社公式発表および業界関係者のコメント

