米中貿易緊張の中で拡大する法的カード
中国が、貿易相手国に対する報復措置や戦略的な輸出管理を強化するため、対外貿易法の大幅な改正に踏み切った。
中国の最高立法機関である全国人民代表大会常務委員会は土曜日、改正された対外貿易法を可決し、2026年3月1日から施行すると発表した。国営メディアの新華社が報じている。
今回の法改正は、米国との貿易摩擦が高い水準で続く中で行われたもので、中国が「貿易強国」としての立場を強めるための制度的な土台を固める狙いがある。
改正のポイント
「国家利益」を前面に打ち出す貿易法制
新たに盛り込まれた条文では、対外貿易は「国家の経済・社会発展に貢献するものでなければならない」と明記され、中国を貿易強国として築き上げることを支援する役割が強調された。
新華社によると、今回の改正は、外部からの圧力や制裁に対抗するため、中国が持つ法的手段を「拡大し、かつ改善する」ことを目的としている。
対外貿易法は1994年に初めて制定され、その後2004年、2016年、2022年と段階的に改正されてきたが、今回の改正は特に報復措置と輸出管理に関する政府権限を明確にした点が特徴とされる。
具体的に何ができるようになるのか
対外貿易法は、政府に対し以下のような権限を与えている。
・外国企業や外国事業体に対する禁止措置や取引制限
・特定分野を外国企業に開放するかどうかを定める「ネガティブリスト」の運用
・国家安全や経済秩序を理由とした輸出入の管理強化
今回の改正では、これらの枠組みを維持しつつ、デジタル貿易やグリーン貿易(環境配慮型貿易)、知的財産の保護といった分野が重点的に強化された。
これは、中国が2021年に加盟申請したCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の高い基準に適合するために不可欠な分野とされている。
「法治国家」を意識した条文の精緻化
今回の改正で注目されているのは、法律の文言が従来よりも詳細に書き込まれている点だ。
ロイター通信が引用した貿易外交官によれば、中国政府は、民間企業から訴訟を起こされる可能性を強く意識しているという。
長年中国と交渉を重ねてきた欧米の貿易外交官は、「中国は法治国家であるため、政府が企業の出荷を止めることはできるが、そのためには明確な理由が必要になる」と指摘している。
各省庁が民間セクターからの反発を以前よりも気にするようになっていることが、法改正の背景にあるとされる。
米中貿易戦争との関係
この法改正は、米中間で続く貿易摩擦と切り離して考えることはできない。
2025年10月には、当時のドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席が会談し、両国は関税を一時的に引き下げることで合意した。
この引き下げ措置は2026年11月まで有効とされているが、貿易障壁そのものが解消されたわけではない。
オックスフォード・エコノミクスによると、2025年11月時点での中国製品に対する米国の実効関税率は29.3%と高水準にとどまっている。
国家主権と安全保障を前面に
China.org.cnによれば、改正法には「国家主権、安全保障、発展利益を守る」という考え方が明確に盛り込まれている。
現在の対外貿易法は全11章で構成されており、公式説明では「対外貿易に関連する知的財産権の保護を一層強化する」とされている。
今回の改正は、中国が単に貿易を拡大するだけでなく、政治・安全保障と経済を一体で管理する姿勢を強めていることを示すものと言える。
今後の影響と注目点
対外貿易法の改正により、中国は報復関税や輸出規制といった措置を、より明確な法的根拠に基づいて実行できるようになる。
これは、米国だけでなく、将来的に中国と摩擦を生じさせる可能性のある他国に対しても、強いメッセージとなる。
一方で、企業活動への影響や、国際貿易ルールとの整合性をどう保つのかについては、引き続き国際社会の注目を集めることになりそうだ。
ソース
ロイター通信
新華社通信
China.org.cn
Oxford Economics
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