日本、石油備蓄放出を準備 ホルムズ海峡封鎖で経産省が備蓄基地に指示

日本政府が、国家石油備蓄の放出に備えた準備指示を出していたことが明らかになりました。
対象となったのは、全国10カ所にある国家石油備蓄基地です。

今回の措置は、米国とイスラエルによるイラン攻撃をきっかけにホルムズ海峡の航行が事実上停止した事態を受けたものです。
日本は原油輸入の大半を中東に依存しているため、エネルギー供給への影響が強く懸念されています。

しかし政府は、現時点で備蓄放出を決定したわけではないと説明しています。
一方で、事態が悪化した場合には、即座に放出できる体制の確認が進められている状況です。

国家石油備蓄基地に「即応体制」準備を指示

2026年3月9日、経済産業省が国内10カ所の国家石油備蓄基地に対して放出準備を指示していたことが判明しました。

この備蓄基地は、資源エネルギー庁の管理のもと、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が運用しています。
JOGMECとは、日本の資源確保やエネルギー安全保障を担う政府系機関です。

日経新聞によると、資源エネルギー庁は各基地に対し、
政府が放出を決定した場合にすぐ対応できるよう準備するよう求めたといいます。

具体的には次の確認が進められています。

・備蓄原油の搬出手順
・タンカーなど輸送手段の確保
・物流ルートの確認
・緊急放出時の運用体制

つまり、正式な放出決定ではなく「即時対応の準備段階」と位置づけられます。

鹿児島・志布志基地にも指示

ロイター通信は、
野党「教育無償化を実現する会」の長妻昭議員の証言を引用しています。

それによると、
鹿児島県の志布志国家石油備蓄基地は3月6日に資源エネルギー庁から準備指示を受けたと報じられました。

志布志基地は、
日本南部に位置する重要な国家備蓄拠点の一つです。

この基地は大型タンカーの受け入れ能力を持ち、
西日本への供給拠点として機能しています。

こうした基地への指示は、
ホルムズ海峡情勢が日本のエネルギー政策に直接影響していることを示しています。

政府「放出決定の事実はない」

しかし政府は、
備蓄放出を決定した事実はないと強調しています。

3月9日の記者会見で、
木原稔官房長官は次のように説明しました。

「放出を決定した事実はない」

さらに経済産業省関係者も、
今回の指示について次のように述べています。

「日常的に放出訓練も行っており、その延長線上の措置だ」

つまり政府の公式立場は、
危機管理上の事前準備という位置づけです。

日本の石油備蓄は254日分

日本は世界でも最大級の石油備蓄体制を持っています。

経済産業省によると、
2025年12月末時点の石油備蓄は国内消費量の254日分です。

内訳は次の通りです。

国家備蓄
146日分

民間備蓄
101日分

産油国共同備蓄
7日分

合計
254日分

この備蓄制度は、
1970年代の石油危機を教訓に整備されたものです。

緊急時には、
国家備蓄と民間備蓄を組み合わせて供給を維持します。

日本の原油輸入、95%が中東依存

今回の危機の背景には、
日本の極めて高い中東依存があります。

日本の原油輸入の内訳は次の通りです。

・中東依存率
約95%

・ホルムズ海峡経由
約70%

つまり、
ホルムズ海峡は日本経済の生命線ともいえる海上輸送路です。

この海峡はペルシャ湾の出口に位置し、
世界の石油輸送の重要拠点です。

そのため、
封鎖や航行制限が起きると世界の原油市場に大きな影響が出ます。

タンカー通過量95%減

今回の危機は、
米国とイスラエルによるイラン攻撃がきっかけとなりました。

攻撃は2月28日に行われました。

その後、
イラン革命防衛隊が海峡の航行を禁止しました。

船舶追跡データによると、
ホルムズ海峡を通過するタンカー輸送量は

95%以上減少

しています。

これは、
近年でも極めて異例の事態です。

専門家「1970年代以来の危機」

米公共ラジオNPRは、
エネルギー専門家の見方を伝えています。

それによると、現在の状況は

「1970年代の石油禁輸以来、最も深刻なエネルギー危機」

と指摘されています。

1973年の第一次石油危機では、
中東産油国が原油輸出を制限しました。

その結果、
世界的な原油価格高騰と供給不足が発生しました。

今回の情勢は、
それ以来の規模の供給危機になる可能性があります。

IEA協調放出の可能性

もしホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合、
日本政府は国際協調による備蓄放出を検討する可能性があります。

この枠組みを主導するのが
国際エネルギー機関(IEA)です。

IEAはエネルギー安全保障を目的とした国際機関です。
加盟国は緊急時に石油備蓄を協調放出します。

日本が直近で参加したのは、
2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際です。

この時、
IEA加盟国は協調して石油備蓄を放出しました。

日本のエネルギー安全保障の試練

今回のホルムズ海峡危機は、
日本のエネルギー安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。

日本は資源輸入国であり、
石油の多くを海外に依存しています。

そのため、
中東情勢の影響を直接受けやすい構造です。

政府は現在、
備蓄体制の維持と供給安定の確保に向けて警戒を強めています。

今後の焦点は次の3点です。

・ホルムズ海峡の航行再開
・原油市場の価格動向
・IEA協調放出の実施

中東情勢の推移によっては、
日本のエネルギー政策にも大きな転換が迫られる可能性があります。

ソース

読売新聞
日本経済新聞
Reuters
NPR
経済産業省
資源エネルギー庁

タイトルとURLをコピーしました