栃木県で国内初のレアアース含有鉱物確認 南鳥島沖の試掘成功と国産資源戦略の転換点

レアアース(希土類)をめぐり、日本国内で注目すべき動きが相次いでいます。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する地球深部探査船「ちきゅう」が2月14日、南鳥島沖での試験採掘を終えて静岡市の清水港に帰港しました。さらに、栃木県塩谷町では、レアアースを含む鉱物「ネオジムアガード石」が国内で初めて確認されたことが明らかになりました。

中国がレアアースを含むデュアルユース(軍民両用)品目の対日輸出規制を強化する中、国内資源への期待はかつてなく高まっています。レアアースは電気自動車や風力発電機、スマートフォンなどのハイテク製品に不可欠な元素群であり、日本の産業基盤を支える重要資源です。今回の一連の動きは、日本の経済安全保障の観点からも極めて大きな意味を持っています。

水深6000メートルからの世界初の揚泥成功

「ちきゅう」は1月12日に清水港を出港し、日本最東端に位置する南鳥島近海の排他的経済水域(EEZ)で採掘試験を実施しました。排他的経済水域とは、沿岸国が海洋資源の探査や開発を行う権利を持つ海域のことで、日本の海洋資源戦略において重要なエリアです。

そして2月1日未明、水深約6000メートルの深海底からレアアースを含む泥を引き揚げることに世界で初めて成功しました。これは単なるサンプル採取ではなく、将来の商業化を視野に入れた実証試験として行われたものであり、技術的にも大きな前進といえます。

帰港時、内閣府のプログラムディレクターを務める石井正一氏は、「歴史的快挙を達成したのではないか」と語りました。深海という極限環境での作業は、強い水圧や複雑な地形など多くの技術的課題を伴います。それを克服した点は、日本の海洋技術力の高さを示す成果でもあります。

内閣府と科学技術振興機構によると、今後は引き揚げた泥からレアアースの精製を試みます。さらに、2027年2月には1日あたり350トンの泥を回収する本格的な採掘試験に移行する計画です。これは、試験段階から実用化段階へと一歩踏み出す重要なステップとなります。

塩谷町で国内初のネオジムアガード石を確認

一方、陸上でも注目すべき発見がありました。栃木県塩谷町の日光鉱山跡で、24年前に採取されていた鉱物が再調査され、国内初となるレアアース含有鉱物「ネオジムアガード石」であることが確認されました。

ネオジムは、強力な永久磁石の原料として知られています。電気自動車のモーターや風力発電機など、次世代エネルギー分野で不可欠な元素です。そのネオジムを含む鉱物が国内で初めて確認されたことは、学術的にも大きな意義があります。

ただし、今回確認された量はごく少量であり、現時点で資源としての実用化は難しいとされています。それでも、専門家は「銅鉱山である日光鉱山にレアアースがあるとは誰も思っていなかった」と驚きを示しています。この発見は、日本の地質環境におけるレアアース分布の理解を深めるきっかけとなる可能性があります。

背景にある中国の輸出規制強化

これらの動きが注目される背景には、中国によるレアアース輸出規制の強化があります。中国商務部は1月6日、軍事用途にも転用可能なデュアルユース品目について対日輸出規制を発表しました。

ロイター通信によると、中国はすでにレアアースおよびレアアース磁石の日本企業向け輸出を制限し始めています。レアアースは名前こそ「希少」ですが、実際には地球上に比較的広く存在しています。しかし、精製や加工の工程で中国が大きなシェアを握っているため、日本は輸入依存度が高い状況にあります。

みずほリサーチ&テクノロジーズの試算では、中国からのレアアース輸入が1年間停止した場合、日本の実質GDPは約0.9%押し下げられる可能性があるとされています。これは日本経済全体にとって決して小さくない影響です。

南鳥島沖に眠る数百年分の資源

南鳥島沖の海底には、国内需要の数百年分に相当するレアアースが存在すると推定されています。特にネオジムやジスプロシウムなどの重希土類は、電動化社会の中核を担う重要元素です。

もちろん、深海資源の商業化には技術面・コスト面・環境面での課題が残されています。水深6000メートルという極限環境で安定的に採掘し、経済的に採算が取れる形で供給するには、さらなる技術革新が必要です。

それでも、経済安全保障の観点から国産資源の確保は国家的課題となっています。今回の試掘成功と国内鉱物の確認は、日本が資源戦略において新たな段階に入ったことを示す象徴的な出来事といえるでしょう。

海底と陸上、二つの動きが同時に進む今、日本のレアアース開発は大きな転換点を迎えています。技術革新と資源多様化の取り組みが、将来の産業競争力と経済安定を支える鍵となりそうです。

ソース

scienceportal.jst.go.jp
nikkei.com
shimotsuke.co.jp
jrife.or.jp
jp.reuters.com

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