異例の前倒し改定で人手不足と賃金格差に対応
政府は、介護分野で働く人の待遇を大きく改善する方針を固めました。
2026年度から、介護職員の給与を月額最大1万9千円引き上げるとともに、障害福祉事業所で働く職員についても最大1万3千円の処遇改善を行う計画です。いずれも2026年6月から実施される予定です。
背景にあるのは、介護分野の賃金が全産業平均を大きく下回り、深刻な人手不足が続いている現状です。政府は賃金格差を縮めることで、人材の流出を防ぎ、介護サービスの持続性を確保したい考えです。
財源は介護報酬の臨時引き上げで確保
今回の賃上げを実現するため、政府は事業所に支払われる報酬そのものを引き上げる方針も示しています。
介護事業所向けの報酬は 2.03%
障害福祉事業所向けの報酬は 1.84%
それぞれ臨時で引き上げる案が示されました。
24日にも、片山さつき財務相と、上野賢一郎厚生労働相が協議を行い、医療機関に支払われる診療報酬の改定率とあわせて正式に決定される見通しです。
なぜ「異例の前倒し改定」なのか
介護報酬は、原則として3年に1度改定される仕組みです。
本来、次の改定は2027年度に予定されていました。
それにもかかわらず、今回「前倒し」で臨時改定が行われるのは、次のような事情があるためです。
物価高が長期化している
他産業では賃上げが急速に進んでいる
介護分野だけが賃金面で取り残されている
前回、2024年度の改定では、介護報酬が1.59%、障害福祉サービス報酬が1.12%引き上げられました。しかし、その後も他業種の賃上げが続いたことで、介護職との賃金格差はむしろ拡大してしまいました。
月8万円を超える賃金格差という現実
厚生労働省が示したデータによると、2024年時点での全産業平均と介護職員の給与差は月8.3万円に達しています。
前年は月6.9万円だったため、わずか1年で格差が大きく広がったことになります。
この差は、単に「給料が低い」という問題にとどまりません。
若い世代が介護職を敬遠する
経験者が他業種へ転職する
結果として現場の人手不足が慢性化する
という悪循環を生み出しています。
補正予算と報酬改定の「二段構え」
今回の賃上げは、単発の対策ではありません。
政府はすでに、2025年度補正予算で、介護従事者に対し月1万円分を半年間支給する賃上げ措置を講じることを表明しています。
この補助金は、
対象期間:2025年12月から2026年5月まで
目的:急場の人材流出を防ぐための暫定支援
という位置づけです。
そして今回の介護報酬改定は、その後も賃上げを継続するための恒久的な仕組みとして実施されます。
短期と中長期の対策を組み合わせた「二段構え」と言えます。
ケアマネや訪問看護も対象拡大へ
賃上げの仕組みとして使われるのが、「処遇改善加算」と呼ばれる制度です。
これは、事業所が職員の給与改善を行った場合に、国が報酬を上乗せする仕組みです。
12月19日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会では、この処遇改善加算を拡充する案が大筋で了承されました。
新たに、
ケアマネジャー
訪問看護職員
なども加算対象に含める方向で調整が進んでいます。
これまで「介護の中でも対象外になりやすかった職種」にも光を当てる内容となっています。
現場にとっての意味
今回の月1万9千円という引き上げは、全産業平均との差を一気に埋める水準ではありません。
それでも、
賃金改善に国が本腰を入れた
介護職の価値を政策として認めた
という点で、現場に与える影響は小さくありません。
人手不足が続けば、介護サービスそのものが維持できなくなります。
今回の措置は、介護を「誰かの善意に支えられる仕事」から、「社会に不可欠な専門職」として位置づけ直す試みとも言えるでしょう。
ソース
読売新聞
毎日新聞
厚生労働省 公表資料
高齢者住宅関連報道
関係者への取材情報

