12年ぶりの被害想定更新で示された深刻なリスクと残された課題
政府の有識者会議が取りまとめを進めている、首都直下地震に関する新たな被害想定の素案が明らかになりました。今回の想定では、マグニチュード7.3規模の地震が首都圏を襲った場合、最悪で死者1万8千人、経済被害83兆円に達する可能性があると推計されています。
前回想定(2013年)と比較すると、死者数は5千人減、経済被害は12兆円減と一定の改善が見られるものの、40万棟もの全壊・焼失が見込まれるなど、依然として極めて深刻な被害規模が示されています。
この更新は12年ぶりであり、都市防災の将来を大きく左右する重要な指標となります。
今回の新想定のポイント:死者1万8千人・経済損失83兆円
今回公表された素案の前提は、首都圏でマグニチュード7.3の地震が発生するというシナリオです。
【新たな推計】
・死者数:1万8千人
・経済被害:83兆円
・建物被害(全壊・焼失):40万棟
ここでいう「経済被害」とは、建物の損壊や火災による直接的被害だけでなく、企業活動の停止、物流障害、停電・水道・都市ガスなどのインフラ停止によって生じる間接的な損失まで含めた総額です。この規模は日本の年間税収に匹敵し、首都圏経済だけでなく全国に深刻な影響を及ぼすことが予想されます。
前回2013年から「死者5千人減」「経済被害12兆円減」の理由
2013年に公表された前回の被害想定と比較すると、数値が一定程度改善しています。その背景には次のような要因があります。
◆ 建物の耐震化の進展
古い木造住宅や耐震性能の低い建物の耐震改修が進み、倒壊リスクが低減。
また、新築建物の耐震基準の厳格化が功を奏し、建物崩壊による死傷者が減少したと分析されます。
◆ 火災対策の強化
地域ごとの防火対策、消防設備の導入、木造密集地域への対策が一部前進した結果、火災拡大のリスクが以前より抑制されたと考えられています。
とはいえ、改善があったとはいえ死者数が1万8千人にのぼるという想定は、依然として巨大なリスクを示しています。
半減目標には届かず ― 木造密集地域「木密」の課題
政府は2015年に策定した「対策推進基本計画」で、
“10年間で死者数を半減させる”
という ambitious な目標を掲げていました。
しかし、今回の新想定では、その目標には明確に届きませんでした。
最大の課題として挙げられるのが、
◆ 木造住宅密集地域(いわゆる「木密地域」)の改善が遅れていること
木密地域では、
・道路が狭く消防車が入りにくい
・延焼リスクが高い
・建て替えや区画整理が進みにくい
といった複合的な問題が続いています。
さらに、道路拡幅や防災インフラの整備には、
・住民合意が得られにくい
・地権者調整が難航する
といった現実的な障壁があり、対策が思うように進んでいません。
首都直下地震の発生確率は「30年以内に70%」
政府は以前から、首都直下地震は今後30年以内に70%程度の確率で発生すると示しています。
これは極めて高い確率であり、もはや「いつ起きても不思議ではない」状況です。
大規模災害が発生した場合、東京を中心とする首都圏は
・行政機能
・経済中枢
・交通網
・ライフライン
のすべてが複雑に影響を受けます。
被害想定の数字はあくまで“最大ケース”ですが、それでも政策立案や防災対応の指針として極めて重要です。
今後のスケジュール
政府は近く有識者会議を開き、今回の素案を含む被害想定を正式に取りまとめる方針です。
推計値は精査が続いており、若干の変更が生じる可能性も指摘されています。
最終的な想定は、
・政府の新たな防災計画
・都市再開発やインフラ整備
・木密地域の対策強化
など、今後の安全政策に直接影響する重要な資料となります。
ソース
日本経済新聞(nikkei.com)
毎日新聞(mainichi.jp)
神戸新聞(kobe-np.co.jp)
Yahoo!ニュース(sdgs.yahoo.co.jp|日本経済新聞配信)

