12年間続いた制度が幕、利用低迷と「格差固定」批判が背景に
政府・与党は、両親や祖父母が子や孫に教育資金を一括して贈与する際に贈与税を非課税とする「教育資金贈与の非課税措置」について、来年3月末の期限をもって制度を終了させる方針を固めました。
2013年の導入から12年続いた制度ですが、利用が低調であったことに加え、富裕層への偏りによる“格差の固定化”が懸念されたことが大きな要因です。
制度は一時期、相続税対策としても注目されましたが、時代環境の変化と教育無償化の拡大により、役割を終えたと判断されつつあります。
教育資金贈与の非課税措置とは何か
制度の中身を整理しておくと、この非課税措置は次のような仕組みです。
・子や孫名義の専用口座に、教育目的の資金を一括で贈与する
・入学金、授業料、塾、習い事などに利用できる
・最大 1500万円まで贈与税が非課税
・対象となる教育費以外には使えない仕組み
もともとは「高額な教育費負担を軽減し、若い世代へ資金を円滑に移す」ことが狙いでした。
しかし、この仕組みの性質上、大きな資金を一度に動かせる“経済的余裕のある家庭”が利用しやすい制度であり、実際に利用者の相当割合が富裕層で占められていたことが問題視されました。
利用は出生数の約1%に低迷
制度終了の最大の決め手となったのは、その利用低調ぶりです。
制度は開始から12年間で27万件超の利用実績がありましたが、近年は急速に減少しています。
特に2024年度の利用件数は 約6800件 にとどまり、新規利用の割合は出生数の 約1% に相当する水準でした。
これは、制度が本来期待されていたほど社会に浸透しなかったこと、加えて利用のハードルが高かったことを示しています。
◆ 手続きの煩雑さが障壁に
利用者は金融機関の専用口座開設、領収書の提出、用途確認など、細かい事務手続きを継続的に求められます。
こうした負担が“使いづらい制度”という印象を強め、利用減につながったとの指摘があります。
「格差の固定化」を懸念する声
教育資金を一括で贈与できる家庭は、そもそも資産に余裕のあるケースが多いため、
・制度が富裕層に偏っている
・逆に若年・中間層には恩恵が届きにくい
・結果として、資産格差を世代間で引き継ぐことに寄与してしまう
という批判が早くからありました。
政府税制調査会の専門家会合でも、
「世代を超えた格差の固定化につながる懸念がある」と明確に指摘され、制度廃止の方向性が示されていました。
政策としての理念は「教育機会の支援」でしたが、実際には経済力のある家庭にメリットが集中したことが、制度終了を後押しした側面があります。
教育無償化の進展も背景に
制度が始まった2013年当時と比べ、日本の教育費を取り巻く環境は大きく変化しています。
・2019年:3〜5歳児の幼稚園・保育所が無償化
・2020年:私立高校も一定条件で授業料無償化
・義務教育費の負担軽減施策も拡大
こうした政策により、教育費全体の負担が軽減されてきたことから、
「教育贈与の非課税措置は役目を終えたのではないか」
という議論が政府・与党内で高まりました。
教育無償化の充実によって、高額の一括贈与が必ずしも必要ではなくなったという判断が、今回の終了判断に影響しています。
延長見送りの経緯
実はこの制度、2023年3月末に廃止される予定でした。
しかし政治判断によって3年間延長され、2026年3月31日まで利用可能な状態にありました。
今回、政府・与党は再延長を見送る方向で調整しており、制度は予定通り終了する見通しです。
今後の影響と課題
教育資金贈与の非課税措置が終了しても、贈与そのものができなくなるわけではありません。
ただし、非課税枠が消えることで、
・高額な教育資金は別の贈与制度で対応
・一般の贈与税の基礎控除(年間110万円)を利用
・相続時精算課税制度の検討
など、家庭側の選択肢が変わることになります。
また、子育て支援策は別途議論が続いており、教育費支援の新たな形が登場する可能性もあります。
ソース
高知新聞(kochinews.co)
沖縄タイムス(okinawatimes.co.jp)
共同通信配信記事
大阪グリーン新聞(green-osaka.com)
OANDA Japan(oanda.jp)

