なにわ筋線事業費が6500億円規模へ倍増 追加費用3200億円と継続の是非を解説

大阪市を南北に貫く新線「なにわ筋線」の総事業費が、当初の約3300億円から、ほぼ倍増となる6500億円規模に膨張する見通しとなりました。

追加費用は3200億円に上ります。
そのため、2031年開業予定の大型プロジェクトは、今あらためて継続の妥当性を問われています。

なにわ筋線は、JR新大阪駅から関西国際空港へのアクセス時間を最大25分短縮する効果が期待されてきました。
しかし、事業費の急増によって、計画の前提そのものが揺らぐ局面に入っています。

追加費用3200億円はなぜ発生したのか

今回の費用増加の主な要因は、建設資材価格の上昇労務費の高騰です。
労務費とは、工事現場で働く人に支払う人件費のことです。
こうした中、全国的な物価上昇が公共事業全体に重くのしかかっています。

さらに、地中障害物の撤去費用も大きな負担になりました。
地中障害物とは、地中に残る構造物や埋設物など、工事を妨げる対象を指します。
実際に、こうした撤去作業は地下工事で大きなコスト要因になりやすいです。

2021年から着工した第三セクターの関西高速鉄道が、今月、府市に報告書を提出しました。
つまり、工事が進む中で、当初想定より重いコスト負担が現実の数字として表れた形です。

当初の負担構造はどうなっていたのか

当初計画では、大阪府・大阪市・JR西日本・南海電鉄が出資し、さらに国の補助金を組み合わせて事業費を賄う枠組みでした。

事業主体の負担割合は当初、府市が約850億円、民間が300億円、国が770億円などと想定されていました。
しかし、累積で3200億円もの増加は、この前提を大きく揺さぶります。

工事進捗率が2割を超えた段階で、こうしたリスクが顕在化しました。
一方で、事業がかなり進んだ後に大幅な費用増が明らかになった点は、判断を難しくしています。

なにわ筋線とはどのような路線なのか

なにわ筋線は、北梅田駅からJR難波駅・南海新今宮駅までを結ぶ約7.4キロの地下線です。
新駅として中之島駅西本町駅の整備も進める計画です。

また、JR西日本と南海電鉄の共同運行区間も含みます。
そのため、新大阪と関西空港を結ぶ速達ルートとして、広域交通の再編を担う存在と位置づけられてきました。

この路線は、単なる新線整備ではありません。
新大阪から関空への速達性向上を通じて、国土軸の強化にもつながると期待されてきた事業です。

大阪の成長戦略とどう結び付いているのか

開業後の総需要は、当初試算で約20万人/日と見込まれていました。
つまり、なにわ筋線は大阪都市圏の交通改善だけでなく、都市開発とも強く結び付いています。

特に、うめきたエリアの拠点性向上や、中之島のまちづくり促進が期待されてきました。
また、関西国際空港へのアクセス改善は、国内外からの人の流れを変える可能性があります。

こうした中、なにわ筋線は大阪・関西経済圏の成長戦略の一部として扱われてきました。
一方で、費用が倍増すれば、その戦略全体の採算や優先順位も厳しく問われます。

これまでの採算性評価はどうだったのか

従来の費用便益分析では、B/C比は1.40~1.59とされていました。
B/C比とは、事業にかける費用に対して、どれだけ便益があるかを示す指標です。
1を上回れば、一般に事業の効率性があるとみます。

この試算では、事業効率性は確認済みとされていました。
さらに、線路使用料収入によって40年以内に黒字化する見込みも示されていました。

しかし、今回のように総事業費が大きく膨らむと、過去の前提条件は見直しが必要になります。
つまり、以前の採算性評価をそのまま維持できるかどうかが、新たな論点になります。

府市は事業継続の妥当性をどう判断するのか

大阪府と大阪市は、近日中に会議を開き、費用削減策事業継続の妥当性を協議する方針です。

吉村洋文府知事は過去に、「大阪の成長に重要」と強調してきました。
しかし、今回は異例の妥当性検証を求める声
も上がっています。
そのため、政治判断と事業判断の両面が試される局面です。

全国的にインフラ整備費が増大する中で、上下分離方式の見直しリスク分担も焦点になります。
上下分離方式とは、線路などの施設保有者と、列車を運行する事業者の役割を分ける仕組みです。

費用負担とリスク分担はどうなるのか

現時点では、開業前の費用増については府市と鉄道事業者が応分に負担する枠組みを維持する方向です。

一方で、需要変動リスクは事業者が負う考え方も維持する方向とされています。
需要変動リスクとは、利用者数が想定より増減した場合に収益へ影響が出るリスクです。

つまり、建設段階のコスト増は行政と事業者が分担し、開業後の利用者変動は事業者が担う構図です。
しかし、費用がここまで膨らめば、その分担の妥当性自体を再点検する議論は避けにくくなります。

大阪・関西への影響はどこまで広がるのか

今回のニュースは、大阪・関西経済圏の交通戦略に小さくない打撃を与えます。
なにわ筋線は、IR2025年大阪・関西万博後の成長戦略とも連動する位置付けでした。

IRとは、カジノを含む統合型リゾートのことです。
また、万博後の都市機能強化を考えるうえでも、空港アクセスの改善は重要な要素とみられてきました。

そのため、事業の見直しが現実化すれば、関西国際空港へのアクセス改善の遅れが懸念されます。
さらに、税負担増への不安も高まりやすくなります。

継続か見直しかを左右する次の判断

府市は早期対応を急いでいます。
しかし、費用削減策だけで解決できるのか、それとも事業全体の設計見直しが必要なのかは、今後の協議に委ねられます。

なにわ筋線は、交通インフラであると同時に、大阪の将来像を映す事業でもあります。
そのため、6500億円規模へ膨らんだ事業費をどう受け止めるのかが、継続判断の核心になります。

実際に、工事が進んだ後の中止や大幅修正は簡単ではありません。
一方で、費用増を看過すれば、将来の財政負担に影響します。
つまり、今後の判断は大阪の成長戦略と財政規律の両立をどう図るかに直結します。

ソース

毎日新聞
Yahoo!ニュース
Railway Pressnet
大阪市
中日新聞
ABCニュース
大阪府

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