SoftBank Corp.(ソフトバンク)は2026年5月11日、AIデータセンター向けの国産バッテリー事業を正式に開始すると発表しました。
この動きは、AI普及による電力需要の爆発的増加に対応する取り組みです。
そのため、同社は国内最大級の生産規模を目指します。
AIデータセンターは、人工知能の計算処理を担う大規模施設です。
一方で、計算量の増大に伴い、安定した電源の確保が大きな課題になっていました。
今回の事業開始は、その電力課題に正面から対応する動きです。
堺の旧シャープ工場跡地を中核拠点に活用
事業の生産拠点には、大阪府堺市の旧シャープ堺工場跡地を活用します。
敷地面積は約44万平方メートルです。
延べ床面積は約84万平方メートルにのぼります。
この広大な施設で、ソフトバンクは二つの製造基盤を構築します。
一つは「AX Factory」です。
もう一つは「GX Factory」です。
AX FactoryとGX Factoryの役割
「AX Factory」は、AIデータセンター向けハードウェアを製造する拠点です。
つまり、AIを支える計算設備や周辺機器の供給基盤として位置づけられます。
こうした中、AIインフラの国産化を進める意味も持ちます。
一方で、「GX Factory」は次世代バッテリーや太陽光パネルなどを担う拠点です。
GXは、環境負荷の低減を目指す変革分野を指します。
そのため、電力供給と脱炭素の両面を見据えた構成になります。
取得済み施設で量産体制を段階的に整備
ソフトバンクはこの施設を2025年に約1000億円で取得しました。
そして、この拠点で2027年度にバッテリーセルと蓄電システム(BESS)の量産を開始します。
さらに、2028年度までに年間1GWh規模への拡大を目標にしています。
バッテリーセルは、電池を構成する基本単位です。
また、BESSは蓄電システムを指し、ためた電力を効率よく使う仕組みです。
量産開始から拡大までの工程が、すでに年度単位で示された点は重要です。
採用するのは亜鉛ハロゲン電池技術
この事業では、韓国Cosmos Labの亜鉛ハロゲン電池技術を採用します。
また、DeltaXの高密度セル設計を組み合わせます。
そのため、安全性とコスト競争力の強化を図ります。
亜鉛ハロゲン電池は、亜鉛とハロゲン系材料を使う蓄電技術です。
実際に、レアメタルを使わない革新型の電池として位置づけられています。
一方で、資源制約への対応という面でも注目されます。
安全性とコスト競争力を両立する狙い
ソフトバンクは、Cosmos Labの技術とDeltaXの設計を組み合わせます。
これにより、安全性の確保とコスト競争力の向上を同時に狙います。
つまり、AIデータセンターに必要な大容量蓄電を現実的な価格で支える構想です。
AIデータセンターでは、停止しない電源が極めて重要です。
しかし、既存の電源設備だけでは需要急増に追いつかない場面も想定されます。
そのため、安定電源供給を自社で確保する戦略が鮮明になりました。
パートナー企業の役割分担
パートナーシップの中で、Cosmos Labは亜鉛ハロゲン電池技術を提供します。
また、DeltaXはAI制御の高エネルギー密度設計を担います。
こうした中、技術面の役割分担が明確に示されています。
高エネルギー密度とは、限られた空間で多くの電力を蓄えられる設計を指します。
実際に、データセンター向け設備では設置効率が重要になります。
そのため、セル設計の工夫は生産性と運用効率の両方に直結します。
まずは自社AIデータセンターで先行導入
ソフトバンクは、まず自社AIデータセンターで先行導入します。
このデータセンターは、大規模拡張予定で数百MW規模を見込んでいます。
つまり、最初の導入先を自社需要に定めた形です。
MWはメガワットの略で、大きな電力規模を示す単位です。
一方で、AI計算を支えるデータセンターでは、この電力規模が競争力に直結します。
自社利用を先行させることで、実運用を通じた検証も進めやすくなります。
国内供給からグローバル展開まで視野
自社導入の後は、電力系統、工場、家庭向けに国内供給を進めます。
さらに、グローバル展開も視野に入れています。
そのため、単なる社内設備投資ではなく、外販事業への拡張も想定しています。
電力系統向けとは、送配電網を支える蓄電用途です。
また、工場向けでは操業安定化、家庭向けでは非常用や電力最適化が見込まれます。
用途を広げる構想が、市場展開の大きさを示しています。
2030年度に1000億円超の売上目標
ソフトバンクは、2030年度に1000億円超の売上目標を設定しました。
この事業は、中期経営計画「Activate AI for Society」と連動します。
つまり、AIを社会基盤として広げる戦略の一部に組み込まれています。
売上目標を明示したことで、事業の位置づけはより明確になりました。
一方で、これは研究開発段階ではなく、事業化を前提にした計画であることを示します。
収益計画と経営計画を結びつけた点は、今回の発表の核心の一つです。
AIインフラを丸ごと押さえるフルスタック戦略
背景には、ソフトバンクのAIインフラのフルスタック化があります。
フルスタック化とは、上流から下流まで一体で押さえる戦略です。
そのため、半導体、通信、データセンター、電力を横断して整備する流れになります。
CEOの宮川潤一氏の主導で、同社は各領域を連携させています。
また、Arm、Stargate、AI-RANなどとの関係も、この構想の一部です。
今回の大型バッテリー事業は、そのフルスタック戦略の電力部分を担います。
Arm、Stargate、AI-RANとの連携構図
Armは、チップ設計を担う企業です。
Stargateは、米AIデータセンターに関わる取り組みです。
AI-RANは、通信とAIの統合を進める構想です。
こうした中、ソフトバンクは演算基盤、通信基盤、運用基盤を広げてきました。
しかし、AIインフラの拡大には電力の裏付けが不可欠です。
今回のバッテリー事業は、その電力ボトルネックを埋める役割を持ちます。
電力ボトルネック解消とネットゼロ推進
AIの普及が進むほど、データセンターの消費電力は増大します。
そのため、電力の確保が事業拡大の制約になりやすくなります。
ソフトバンクは、この電力ボトルネックの解消を目指します。
また、同社はネットゼロ目標の推進も掲げています。
ネットゼロとは、排出する温室効果ガスと吸収・削減量を均衡させる考え方です。
一方で、電力需要が増えるAI時代において、蓄電と再エネ対応は重要性を増します。
4月下旬の報道を経て詳細が正式公表
この計画は、4月下旬のBloomberg報道で浮上していました。
そして、5月11日の正式発表で詳細が明らかになりました。
つまり、観測段階だった計画が、具体的な事業として示されたことになります。
実際に、正式発表では拠点、技術、量産時期、売上目標まで示されました。
そのため、市場関係者にとっても計画の実在性と具体性が高まりました。
報道ベースの話題から、企業発表ベースの事業計画へ移行した点は大きいです。
日本製造業のAIシフトを象徴する案件
この事業は、日本製造業のAIシフトを象徴する動きでもあります。
データ処理だけでなく、電源やハードウェアまで含めて国内生産を強化するからです。
さらに、AIインフラを日本国内で支える体制づくりにもつながります。
一方で、日本の産業界では電力安定化が継続的な課題です。
こうした中、蓄電池の国産供給体制は産業競争力と密接に関わります。
ソフトバンクの大型バッテリー事業は、AI時代の製造業再編を映す案件とも言えます。
電力自給率向上への寄与も焦点
この事業は、電力自給率向上への寄与も期待されています。
つまり、国外依存を減らしながら、国内で電力の安定性を高める方向です。
そのため、AIデータセンターだけでなく、広い産業基盤への波及も見込まれます。
また、レアメタル不使用という点は供給網の安定化にもつながります。
実際に、資源価格の変動や調達リスクは電池事業の大きな課題です。
資源面と電力面の両方で、自立性を高める狙いが読み取れます。
事業開始が意味する今後の変化
ソフトバンクの大型バッテリー事業開始は、AIデータセンターの拡大と直結します。
また、電源の内製化によってインフラ戦略の自由度も高まります。
一方で、量産、外販、海外展開まで進められるかが今後の焦点になります。
それでも、今回の発表で方向性は明確になりました。
AI時代の競争は、計算能力だけでなく電力確保でも決まるという現実です。
そして、ソフトバンクはその領域に本格参入したことになります。
ソース
- AI Watch Impress
- Bloomberg Japan
- Business Network
- Moomoo
- Lartnec Blog
- SBBIT
- SoftBank 2026年3月期決算短信
- ITmedia

