2026年後半に向けて、太平洋赤道域で強いエルニーニョが発生する可能性が急速に高まっています。
NOAAの2026年4月9日付診断では、5月〜7月にエルニーニョへ移行する確率を61%とし、年後半まで続く見通しを示しました。
そのため、2026年の夏から年末にかけて、世界の気温や降水の傾向が大きく変わる可能性が意識されています。
一方で、欧州のコペルニクス気候変動サービスは2026年5月10日、最新の季節予報でエルニーニョ発達シグナルがさらに強まったと説明しました。
複数モデルを組み合わせた予測では、Niño3.4指数が予測期間終盤に2.5℃を超えるメンバーが半数超となっています。
つまり、通常のエルニーニョではなく、スーパーエルニーニョ級まで強まる可能性が現実味を帯びています。
なぜ今回は警戒感が強いのか
今回の警戒感が強い理由は、ラニーニャ的な状態の弱まりから、暖かい海水が一気に東へ広がっているためです。
気象庁は2026年4月10日、赤道下の暖水が東へ伝わり、春に平年並み付近、夏には平年より高い海面水温へ向かうと示しました。
また、JAMSTECも、春に中立へ戻ったあと、2026年夏にエルニーニョへ移るとの見通しを出しています。
さらにWMOは2026年4月24日、2026年半ばからエルニーニョが発生する見込みだと公表しました。
こうした中、WMOは海面水温の上昇が世界の気温や降水に影響しうると警告しています。
そのため、過去の1982年、1997年、2015年級に匹敵するか、それを上回るかが注目点になっています。
スーパーエルニーニョとは何か
スーパーエルニーニョとは、中部から東部の赤道太平洋で海面水温の平年差が非常に大きくなる強いエルニーニョを指す通称です。
Niño3.4は、その強さを見る代表的な海域指数です。
実際にNOAAは、Niño3.4が+2.0℃以上となる「非常に強いエルニーニョ」の可能性を4分の1程度と示しています。
一方で、欧州系の季節予報では、より強いシナリオも出ています。
コペルニクス気候変動サービスは、Niño3.4が2.5℃を超える予測メンバーが半数を超えたと説明しました。
さらに、IFRCも2026年4月28日、中部太平洋で2℃から3℃の上昇が見込まれるとして備え強化を進めています。
地下の暖水が持つ意味
エルニーニョの発達では、海面だけでなく、海の中の暖水の広がりが重要です。
この暖かい水の塊は、ケルビン波と呼ばれる形で東へ進みます。
つまり、海面より先に地下で変化が進み、その後に海面水温の上昇が表面化します。
2026年春の時点では、まさにこの過程が確認されています。
気象庁は暖水の東進継続を示し、NOAAも赤道太平洋で平年より高い海面水温が広がったと整理しました。
さらにJAMSTECも、ラニーニャ的状態の弱化から夏のエルニーニョ移行を予測しています。
大西洋のハリケーンは抑えられるのか
エルニーニョが注目される理由の一つは、ハリケーンシーズンへの影響です。
NOAA系の解説では、エルニーニョ時には大西洋上空の鉛直風シアーが強まりやすいとされます。
鉛直風シアーとは、高さによる風向きや風速の差です。これが強いと、熱帯低気圧は育ちにくくなります。
そのため、大西洋ではハリケーン活動を抑える方向に働く可能性があります。
しかし、一方で東太平洋では活動が活発になりやすいと知られています。
つまり、嵐が減る海域と、逆に増えやすい海域が同時に出るのが、エルニーニョの厄介な点です。
米国の天候にどう響くのか
米国では、エルニーニョの影響が南部や西部の降水と気温に現れやすくなります。
WMOは、エルニーニョが世界の気温と降水パターンを変えると改めて警告しました。
そのため、南部カリフォルニアを含む地域では、高温傾向と降水変化の組み合わせが重要になります。
また、米国にとってはハリケーンだけが論点ではありません。
実際に、NOAAの研究部門はENSOが極端現象の予測や災害準備に役立つと位置づけています。
さらに、強いエルニーニョになれば、熱波や豪雨のリスク評価も一段と重くなります。
日本の夏と異常気象リスク
日本でも、2026年夏の天候への影響が大きな関心事です。
気象庁は、赤道太平洋の海面水温が夏にかけて平年より高くなる見通しを示しました。
また、JAMSTECも夏のエルニーニョ移行を予測しており、日本周辺の大気循環への影響が警戒されています。
エルニーニョの年は、日本で必ず同じ天候になるわけではありません。
しかし、猛暑、降水の偏り、台風や前線活動の変化が論点になりやすいのは事実です。
そのため、農業、水資源、電力需要の見通しまで含めた備えが必要になります。
農作物と水資源に広がる懸念
エルニーニョは、単なる暑さの話では終わりません。
降水の偏りが拡大すると、干ばつと洪水が地域ごとに同時進行しやすくなります。
つまり、同じ年に、ある地域では水不足、別の地域では豪雨災害が深刻化する構図です。
日本でも、農作物の生育、水管理、猛暑対策が重なります。
さらに、海外の不作や物流混乱が起きれば、食料価格や供給にも波及しえます。
こうした中、エルニーニョは気象の話に見えて、実際には経済と生活の問題でもあります。
東南アジアと南半球で強まる警戒
東南アジアやオーストラリアでは、エルニーニョ時に乾燥や干ばつが強まりやすいことで知られます。
気象庁の月別気候見通しでも、東南アジア南部や南アジアで少雨の確率が高い地域が示されています。
そのため、農業、森林火災、水不足への備えが重要になります。
一方で、南米の一部では逆に大雨や洪水リスクが高まります。
IFRCは2026年4月、中米の深刻な干ばつと南米南部の豪雨に備える必要性を強調しました。
さらに、ラテンアメリカとカリブ海地域で事前準備を強めていると明らかにしています。
世界の気温記録を押し上げる恐れ
強いエルニーニョが起きると、海の熱が大気へ移りやすくなります。
その結果、世界平均気温が押し上げられる傾向があります。
WMOは、今回のエルニーニョが世界の気温と降水に広く影響すると警告しました。
さらに、コペルニクスは2025年までの高温基調がすでに非常に強いと示しています。
つまり、背景にある地球規模の高温状態に、強いエルニーニョが重なる形です。
そのため、2027年にかけて世界の気温記録更新が再び意識される局面になっています。
次の注目点はNOAAの更新
今後の最大の注目点は、NOAAの次回診断で強度見通しがどこまで上振れるかです。
2026年4月9日付の時点では、NOAAはエルニーニョ発生を有力視しつつも、非常に強い事象の可能性は確定ではないと整理していました。
しかし、欧州系の最新予測では、より強いシナリオが増えています。
一方で、季節予報には不確実性が残ります。
ECMWFも2026年4月、見通しの強まりは事実でも、不確実性は残ると説明しました。
とはいえ、各機関の見通しが同じ方向を向き始めた以上、スーパーエルニーニョ2026は、もはや仮説だけでは片づけにくい段階です。
ソース
- NOAA Climate Prediction Center
- NOAA ENSO: Recent Evolution, Current Status and Predictions
- World Meteorological Organization(WMO)
- Copernicus Climate Change Service / ECMWF
- ECMWF Science Blog
- 気象庁
- JAMSTEC
- IFRC


