令和8年6月10日付の官報では、号外第128号で法律3件、政令1件、省令1件が公布されました。
本紙第1723号では、法規的告示とその他告示が掲載されています。今回の中心は、次の3本の法律です。
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律(法律第34号)
- 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律(法律第35号)
- 南極地域の環境の保護に関する法律の一部を改正する法律(法律第36号)
あわせて、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(政令第195号)、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省令第100号)も公布されました。
本紙では、気象庁船舶気象無線通報規則の一部改正、組換えDNA技術応用添加物の公表、特定水産資源の数量変更などが確認できます。
法律(号外)の改正ポイント
1. 犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律(法律第34号)
今回の改正は、口座や通帳の不正譲渡対策を強化し、詐欺被害者の回復手続を新設した点が中心です。
主な改正点
- 預貯金通帳の不正譲渡等に対する罰則を引上げ
- 正当な理由なく、財産移転を目的に有償で口座等の利用を依頼する行為などに新たな罰則を設置
- 警察官が、犯罪利用防止のために特別の措置を講じた口座等の開設等を求められる仕組みを整備
- その口座に移された財産を保管し、一定の場合に返還する制度を新設
- 返還請求権が消滅した財産を原資に、詐欺等の被害者へ特定被害回復給付金を支給する制度を創設
- 通知義務等の対象となる電子決済手段に、受益証券発行信託によらない特定信託受益権を追加。
罰則強化のうち官報で確認できる代表例
- 預貯金通帳の不正譲渡等の一部について、従来より拘禁刑・罰金額が引き上げ
- 「特定役務利用財産移転行為」に関して、
2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、または併科
業として行った場合は、3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、または併科
とする規定が置かれています。
附則・施行期日
- 一部を除き、公布の日から1年以内で政令が定める日から施行
- 第一条並びに附則第二条・第三条は、公布の日から1か月経過後に施行
- 経過措置あり。
わかりやすく言うと
この改正は、「口座の売買」や「他人名義口座の悪用」を厳しくしつつ、被害資金の返還や給付の仕組みまで整えた改正です。
2. 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律(法律第35号)
今回の改正は、バス・鉄道・船の維持が難しくなっている地域で、自治体が再構築に関与しやすくする制度改正です。
主な改正点
- 法律の目的に、地域交通維持の困難化要因として
旅客の運送に従事する人材の不足 と 輸送施設の老朽化 を追加 - 施設利用者用運送サービス提供者を法定化
例:病院、学校、福祉施設、商業施設などが無料送迎を行う場合 - 市町村に、そうした主体と連携しながら地域交通の持続可能な確保に取り組む努力義務を追加
- 公共交通事業者等にも、関係者間の連携と協働に関する努力義務を追加。
新設・拡充された制度
鉄道
- 鉄道事業再構築事業に、
鉄道施設の建設・改良、車両の取得・改良を追加 - 認定計画を受けた場合、一定の鉄道事業法上の許可・認可等を受けたものとみなす特例を整備
- 地方公共団体による助成について、地方財政法上の特例を新設。
バス等
- 自動車地域旅客運送サービス再構築事業を創設
- 路線休止・廃止やそのおそれがある場合、地方公共団体が提供主体を選定し、他事業者や施設関係者の支援を受けながら、再実施・継続を図る仕組みを新設。
海上交通
- 海上運送利便確保事業を創設
- 船舶の法定検査に伴う一時休止時に、地域住民や利用者への影響を減らすため、地方公共団体が代替輸送を確保しやすくする枠組みを整備。
その他
- 地域の関係者間の連絡調整や連携促進を行う連携促進団体を明示
- 地方公共団体が、計画作成のために公共交通事業者等へ資料提供や協力を求められることを明文化。
附則・施行期日
- 一部を除き、公布の日から6か月以内で政令が定める日から施行
- 施行状況の検討規定あり
- 経過措置あり。
わかりやすく言うと
この改正は、「路線がなくなってから対処する」のではなく、なくなる前に自治体が再編・代替確保に動きやすくする改正です。
3. 南極地域の環境の保護に関する法律の一部を改正する法律(法律第36号)
今回の改正は、南極での活動について、環境事故や緊急事態への事前準備と対応責任を強化したものです。
主な改正点
- 「環境上の緊急事態」の定義を追加
- 事前確認が必要な南極地域活動に、南極地域の海域で行われる科学的調査等を追加
- 南極地域活動計画の確認申請時に、
防止措置や緊急時計画に関する事項の記載・提出を義務化 - 環境大臣の確認基準に、環境省令基準への適合を追加
- 主宰者に、緊急事態発生時の負担金等について一定額まで確実に負担できる措置を講じる責務を追加
- 緊急事態のおそれがある事件発生時には、
環境大臣への通報、緊急時計画に従った措置を義務化 - 主宰者が対応しない場合、環境大臣が自ら措置を講じ、費用負担を求め得る仕組みを整備
- 他の締約国政府が措置を行った場合の費用償還請求に関する規定も整備。
附則・施行期日
- 原則として、議定書附属書Ⅵが日本について効力を生ずる日から1か月経過後に施行
- ただし、
- 一部の政令委任規定は公布日施行
- 事前に環境大臣の確認を要する南極地域活動の追加に係る規定等は公布日から20日後施行
- 経過措置あり。
わかりやすく言うと
この改正は、南極で事故が起きた後の責任だけでなく、事故前の備えまで義務化する改正です。
政令・省令(号外第128号)の具体化内容
政令第195号
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令
この政令は、令和7年法律第33号のうち、附則第一条第六号・第七号に掲げる規定の施行期日を定めるものです。
確定した施行日
- 附則第一条第六号に掲げる規定:令和10年4月1日
- 附則第一条第七号に掲げる規定:令和12年4月1日。
位置づけ
法律で「後日施行」とされていた部分について、具体的な施行日が確定したということです。
厚生労働省令第100号
雇用保険法施行規則の一部を改正する省令
この省令では、雇用保険関係の届出様式の削除と経過措置が定められています。
官報で確認できる改正点
- 様式第二号から様式第四号まで削除
- 様式第四号の二および様式第三十五号から様式第三十七号まで削除
- 施行の際に現に提出されている旧雇保則の
- 資格取得届
- 資格喪失届
- 光ディスク等提出用総括票
は、改正後の規定による届出や総括票として扱う経過措置を規定
- 旧様式の用紙は、当分の間、取り繕って使用可能。
施行日
- 令和8年6月14日。
注意点
官報で確認できるのは、様式削除、経過措置、施行日までです。改正趣旨の全体像までは、官報PDFだけでは断定できません。
本紙(第1723号)の主な告示
1. 気象庁告示第5号
気象庁船舶気象無線通報規則の一部改正
- 船舶気象無線通報の定義に、従来の警報・概況報に加えて、予報等を追加
- 施行日:令和8年7月30日
- 同日11時以降の通報から改正後規定を適用。
2. 内閣府告示第74号
組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査を経た添加物の公表
安全性審査を経た添加物として、次の2品目が公表されています。
- β-グルコシダーゼ
Bacillus subtilis NTI 06(pHYT2PsBG)株を利用して生産
申請者:日本食品化工株式会社 - リボフラビン
RFE 8922株を利用して生産
申請者:DSM株式会社。
3. 法務省告示第50号
土地家屋調査士法第三条第二項第一号の規定による研修の指定
- 名称:第二十一回土地家屋調査士特別研修
- 実施法人:日本土地家屋調査士会連合会
- 期間:令和8年6月24日から同年9月5日まで。
4. 農林水産省告示第759号
特定水産資源に関する令和8管理年度の数量公表の一部変更
官報で確認できる変更例として、さんまについて次の修正があります。
- 漁獲可能量
95,623トン → 91,554トン - 北海道の都道府県別漁獲可能量
3,900トン → 3,700トン - 大臣管理漁獲可能量(漁獲割当てによる管理区分)
77,940トン → 74,590トン - 大臣管理漁獲可能量(漁獲量の総量管理区分)
8,160トン → 7,810トン。
5. 国土交通省告示第681号
住宅の品質確保の促進等に関する法律の規定による特別評価方法認定
- 認定番号:1742
- 認定をした方法の名称:
時刻歴応答解析方法を用いて検証する「(仮称)麹町山王マンション建替計画」の構造方法に応じて評価する方法 - 認定年月日:令和8年5月25日。
6. 国土交通省告示第682号
船舶安全法施行規則第一条第十一項の水域を定める告示の一部改正
- 第一条の改正部分:令和8年7月1日施行
- 第二条の改正部分:令和9年7月1日施行。
改正の全体像整理
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 大枠(法律) | 犯罪による収益の移転防止法改正、地域公共交通法改正、南極環境保護法改正 |
| 具体化(政令) | 労働安全衛生法等改正の施行日確定 |
| 具体化(省令) | 雇用保険関係の様式削除と経過措置 |
| 本紙の主な告示 | 気象庁通報改正、添加物公表、水産資源数量変更、特別評価方法認定、船舶安全法関係告示改正 |
施行日・経過措置まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公布日 | 令和8年6月10日 |
| 犯罪による収益の移転防止法改正 | 公布の日から1年以内の政令で定める日 |
| 地域公共交通法改正 | 公布の日から6か月以内の政令で定める日(一部除く) |
| 南極環境保護法改正 | 議定書附属書Ⅵが日本について効力を生ずる日から1か月後(一部は公布日・公布20日後) |
| 政令第195号 | 令和10年4月1日・令和12年4月1日 |
| 雇用保険法施行規則改正 | 令和8年6月14日 |
| 気象庁告示第5号 | 令和8年7月30日(11時以降の通報から) |
| 国土交通省告示第682号 | 第1条:令和8年7月1日/第2条:令和9年7月1日 |
| 附則・経過措置 | 各法令・告示に個別規定あり |
影響を受ける主体
- 金融機関、資金移動業者、電子決済関連事業者、暗号資産交換業者
- 詐欺等の被害者
- 地方公共団体、バス・鉄道・船舶事業者
- 南極活動を主宰する研究機関・調査機関等
- 事業主、労務実務担当者
- 食品・添加物関係事業者
- 漁業関係者
- 船舶運航関係者
よくある疑問(Q&A)
Q1. 特定被害回復給付金は自動的に支給されますか。
自動支給とは官報からは読み取れません。
公安委員会が支給手続を開始し、公告や申請手続を経る制度です。
Q2. 地域公共交通法改正で廃止路線がすぐ復活しますか。
すぐに復活するとは限りません。
地方公共団体による計画作成、認定申請、実施主体の選定など、段階的な手続が前提です。
Q3. 雇用保険法施行規則改正で給付内容は変わりますか。
官報で明確に確認できるのは、様式削除、経過措置、施行日です。
給付水準や給付期間の変更までは、この官報だけでは確認できません。
Q4. さんまの数量変更の理由は官報で確認できますか。
この告示本文から直接確認できるのは数量変更そのものです。
理由づけまでをこの官報本文だけで断定することは避けた方が安全です。
まとめ
令和8年6月10日付官報は、犯罪対策、地域交通、国際環境対応という性格の異なる3本の法律が並んだ日でした。
そこに、労働安全衛生法等改正の施行日確定と雇用保険関係の様式削除・経過措置が加わり、本紙では海上気象、添加物、水産資源管理、船舶安全法関係の告示も掲載されています。
注目点を整理すると、次の3つです。
- 口座悪用防止と被害者回復の仕組みを一体で強化したこと
- 自治体が地域交通の再構築に関与しやすい制度を広げたこと
- 南極活動に事前の緊急対応計画と費用負担の備えを求めたこと
ソース
出典:官報発行サイト(令和8年6月10日付 号外第128号(3分冊の1)/第1723号)
本記事は官報に掲載(公布)された法令情報をもとに、編集・再構成して解説したものです。官報は一次情報ですが、制度改正の詳細な運用は今後の政省令・通達・Q&A等で補足される場合があります。最終確認は官報および所管官庁の公式情報をご参照ください。

