コメ価格はなぜ下がらないのか 農水省の生産調整と「圧力」論争

コメ価格高止まりの中で浮上した生産調整を巡る議論

全国のスーパーで販売されるコメの価格が歴史的な高値圏で推移する中、農林水産省の生産調整を巡る姿勢と、政府の物価高対策のあり方が改めて注目を集めている。
23日、農林水産省の鈴木憲和農相は、閣議後の記者会見で、秋田県の前知事による「増産抑制の圧力」発言について、農水省としての調査結果を明らかにした。


秋田県前知事の主張と農水省の説明

問題の発端は、佐竹敬久前秋田県知事が、2023年産米の生産を巡り、農水省から増産を控えるよう事実上の圧力を受けたと主張したことにある。

鈴木農相によると、当時対応した農水省職員への聞き取りの結果、担当者は「圧力をかけたという認識はない」と説明したという。ただし鈴木農相は、たとえ意図がなかったとしても「圧力と受け止められたこと自体が問題だ」と述べ、今後同様の事態が起きないよう、真摯な対応を指示したと語った。

一方、秋田魁新報が17日に報じた内容では、農水省が2023年1月から3月にかけて県幹部に電話し、「コメの生産が拡大した場合、転作交付金を減らす可能性がある」と伝えていたとされている。
佐竹前知事は取材に対し、「農水省から年間数百億円規模の補助金を受けている県としては、農水省の意向には逆らえない」と証言しており、地方自治体と国との力関係の難しさが浮き彫りになっている。


コメ価格は過去最高水準が続く

こうした議論の背景には、コメ価格の異常な高止まりがある。
農水省が5日に公表した全国約1000店舗のスーパー調査によると、11月24日から30日の週のコメ5キロ当たりの平均価格は4335円となり、前週より23円上昇して過去最高値を更新した。

9月以降、15週連続で4000円台が続くという異例の状況で、消費者の家計への負担感は強まっている。
福島大学の小山良太教授は、「持続可能な農業の観点から見れば、5キロ3500円程度が安定ライン」と指摘しており、現在の価格水準は消費者にも生産者にも歪みを生みかねない状態だとされている。


「おこめ券」を巡る混乱と自治体の判断

政府は物価高対策として、自治体に対し「おこめ券」の活用を促しているが、こちらも現場では混乱が広がっている。
おこめ券は当初、1枚500円で販売される一方、実際に利用できる金額は440円分にとどまり、約12%にあたる経費率が「高すぎる」と批判を浴びた。

これを受け、全国米穀販売事業共済協同組合は12日、自治体向けに1枚477円で販売する方針を表明し、JA全農も同様の対応を取った。しかし、それでも配布を見送る自治体は多い。

埼玉県吉見町は年内配布を目指す一方、新潟市や東京都荒川区などは、より自由度の高い現金給付を選択している。
自治体側からは、「手数料がかかりすぎる」「配布や管理の手間に見合わない」といった声が根強く、政策の実効性に疑問符が付いている。


問われる農政と物価対策の一貫性

今回の問題は、単に「圧力があったかどうか」にとどまらない。
コメの生産調整、価格の高止まり、そしておこめ券という対症療法的な支援策が、同時並行で進められていること自体に、政策のちぐはぐさを感じる人も少なくない。

農水省は生産現場への配慮と消費者負担の軽減という、相反する課題の間で難しい舵取りを迫られている。
今後、コメ価格の安定と持続可能な農業をどう両立させるのか、そして地方自治体が納得できる支援策を打ち出せるのかが、改めて問われる局面に入っている。


ソース

読売新聞
秋田魁新報
農林水産省発表資料
Yahoo!ニュース
各自治体発表

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