日本各地で大規模災害への備えが問われる中、半島部に位置する集落が抱える深刻な課題が改めて浮き彫りになりました。共同通信が実施した調査により、北海道から鹿児島県にかけての国指定の「半島振興対策実施地域」において、少なくとも2925の集落が、地震や津波などの災害時に孤立する恐れがあることが明らかになりました。
この問題が強く意識されるようになった背景には、2024年元日に発生した能登半島地震があります。この地震では、多くの集落が外部との交通を断たれ、救助や物資支援が遅れる事態が相次ぎました。その経験から、将来想定されている南海トラフ巨大地震などの大災害に備え、「半島防災」を本格的に強化する必要性が指摘されています。
半島振興対策実施地域とは何か
「半島振興対策実施地域」とは、地理的に三方を海に囲まれ、交通や産業の面で不利な条件を抱える半島部について、国が特別に振興策を講じる対象地域です。道路や港湾の整備、産業振興、生活基盤の強化などが進められてきましたが、防災面では依然として課題が残っています。
今回の調査では、この半島振興対策実施地域を抱える全国194の市町村を対象に、2025年10月から12月にかけてアンケートが行われました。その結果、180市町村から回答が寄せられ、「不明」や「調査していない」と答えた自治体を除いた23地域で、計2925集落に孤立の可能性があることが確認されました。
地域別に見る孤立リスクの実態
孤立の可能性がある集落数を地域別に見ると、特に多かったのが三重県、奈良県、和歌山県の3県で構成される紀伊半島です。この地域だけで889集落が孤立リスクを抱えているとされています。
次いで多かったのは千葉県の南房総地域で、379集落が対象となりました。その他にも、北海道の渡島半島、京都府の丹後半島、鹿児島県の薩摩半島など、全国各地の半島部で同様の問題が確認されています。
孤立の要因として挙げられているのは、地震による道路の損壊や土砂崩れ、橋の崩落、津波の浸水被害です。寒冷地では、これに加えて大雪による道路寸断も大きなリスクとなっています。半島部は代替ルートが限られているため、主要道路が一本でも使えなくなると、集落全体が孤立してしまう可能性が高いのです。
能登半島地震が突きつけた現実
2024年の能登半島地震では、こうしたリスクが現実のものとなりました。石川県内では49の地区で孤立集落が発生し、一時は3345人が外部と遮断された状態に置かれました。
読売新聞の取材によると、これらのうち30地区は平地に位置しており、事前には「孤立する可能性が低い」と想定されていた地域でした。この事実は、これまでの想定や調査が必ずしも十分ではなかったことを示しています。
半島という地形は、三方を海に囲まれているため、災害時に使える代替道路が少なく、救助や物資輸送が滞りやすいという構造的な弱点を抱えています。能登半島地震は、その弱点が一気に表面化した災害だったと言えます。
孤立集落は全国でさらに増加する可能性
こうした状況を受け、内閣府は2026年に全国規模で改めて調査を行う方針を示しています。これまで孤立可能性集落の調査対象は主に中山間地域に限られていましたが、今後は平地付近も含めて対象を拡大する予定です。
読売新聞が2025年10月から11月にかけて行った取材では、能登半島地震をきっかけに独自調査を実施した35の道府県のうち、少なくとも22府県で孤立の可能性がある地点が2681カ所増加したことが分かりました。これにより、全国の孤立可能性集落は2万993カ所に達しています。
この数字は、半島部だけでなく、日本全体で「孤立」という問題が決して一部地域に限られたものではないことを示しています。
防災体制強化に向けた国と地域の動き
能登半島地震の教訓を踏まえ、各地では救助体制の強化や情報伝達手段の確保、物資輸送ルートの確立を目的とした防災訓練や対策が進められています。
政府も対応を本格化させており、2025年7月には改正半島振興法の施行に伴い、「半島振興基本方針」を初めて策定しました。この方針では、振興の柱の一つとして「半島防災」が明確に位置付けられています。
基本方針では、能登半島地震で集落が孤立し、電気や水道、通信といったライフラインが長期間寸断された経験を重く受け止め、国土強靱化の理念に基づいた施策を着実に実施するとしています。具体的には、道路や橋梁の耐震化、複数の輸送ルートの確保、通信手段の多重化などが想定されています。
半島に暮らす人々の命と生活を守るためには、平時から孤立を前提とした備えを進めることが不可欠です。今回明らかになった2925集落という数字は、その必要性を強く訴える警鐘と言えるでしょう。
ソース
共同通信
読売新聞
内閣府
西日本新聞
Yahoo!ニュース

