納豆の発酵が心臓を守る?大阪公立大学が解明した「超硫黄分子」の驚きの健康効果

日本の伝統食品である納豆について、発酵そのものが大豆の中身を大きく作り替え、心血管疾患の予防に関係する分子を増やしていることが、最新の研究で明らかになりました。

大阪公立大学の研究チームは、微生物による発酵が大豆の成分に与える影響を分子レベルで詳しく調べました。その結果、「超硫黄分子(スーパースルフィド)」と呼ばれる、体の健康維持に重要な分子が、納豆の発酵過程で大きく増加することを世界で初めて実証しました。

この研究は、理学研究科の伊原英臣教授が率いるチームによって行われ、成果は2025年11月に学術誌Nitric Oxideに掲載されています。大学は今週、その研究内容を公式に発表しました。

発酵が「体に役立つ分子」を増やす仕組みを初めて解明

スーパースルフィドとは、硫黄を含む代謝物の一種で、近年の医学・栄養学研究で注目されています。
細胞のエネルギー産生を助け、強い抗酸化作用を持ち、病気の予防に関わると考えられている分子です。

これまで、納豆にスーパースルフィドが多く含まれていること自体は知られていました。しかし、なぜ発酵によって増えるのか、どの段階で作られているのかは分かっていませんでした

研究チームは、3つの異なる産地から入手した乾燥大豆と、4つの市販納豆ブランドを比較しました。その結果、未加工の大豆では、どの産地でもスーパースルフィドの量はほぼ同じでした。

一方で、発酵後の納豆では、すべてのサンプルでスーパースルフィドが大幅に増加しており、その増え方にはブランドごとの差が見られました。
このことから、増加の原因は大豆そのものではなく、発酵という工程にあることが明確になりました。

伊原教授は、「微生物による発酵が、植物由来の分子構成をここまで変えることを示したのは世界初です」と説明しています。

納豆菌が大豆の成分を「変換」していることが判明

研究チームは、質量分析を用いた「スーパースルフィドオミクス」という分析手法を使い、納豆が発酵する過程で分子がどのように変わっていくのかを時間ごとに追跡しました。

その結果、大豆全体に含まれる硫黄の総量は変わらないことが分かりました。
つまり、発酵によって硫黄が増えているのではなく、納豆菌が既存の硫黄化合物の形を作り替えているのです。

具体的には、納豆菌が大豆タンパク質を分解する過程で、もともと存在していた硫黄を含む分子が、より生理的に働きやすいスーパースルフィドへと変換されていました。

発酵が進むにつれて、
システインヒドロペルスルフィドやシステインヒドロトリスルフィドといった還元型のスーパースルフィド、
さらにシスチントリスルフィドなどの酸化型スーパースルフィドの両方が、時間とともに着実に増加していくことが確認されました。

また、発酵前に大豆を加熱処理した場合でも、スーパースルフィドの増加が見られました。
これは、調理工程が発酵の効果を弱めるどころか、むしろ有益な化学変化を後押しする可能性を示しています。

心血管疾患リスク低下との関係が分子レベルでつながる

今回の研究成果は、納豆の摂取と心血管疾患リスクの低下を示してきた疫学研究に、明確な科学的裏付けを与えるものです。

日本で行われた29,000人以上を対象とする16年間の大規模コホート研究では、納豆を最も多く食べる人は、ほとんど食べない人に比べて心血管疾患による死亡リスクが約25%低いことが報告されています。

スーパースルフィドは、非常に強い抗酸化作用を持ち、タンパク質を不可逆的な酸化ダメージから守る働きがあります。
さらに、ミトコンドリアの機能を改善し、細胞の老化を抑えることも示されており、これらはいずれも心臓や血管の健康を保つうえで重要な仕組みです。

今回の研究は、なぜ納豆が心臓に良いとされてきたのかを、分子の働きという形で説明できる段階に近づいたことを意味します。

発酵食品の価値を広げる重要な研究成果

大阪公立大学の研究は、発酵を適切に制御することで、健康機能を高めた食品を意図的に作り出せる可能性を示しています。
納豆という身近な食品が、科学的に見ても非常に高度な機能性を持つことが、改めて裏付けられました。

この研究は、文部科学省および日本学術振興会の支援を受けて実施されています。
今後は、スーパースルフィドが体内でどのように働くのかをさらに詳しく調べることで、心血管疾患の予防を意識した新たな発酵食品の開発につながることが期待されています。

ソース

nutritioninsight.com
Nitric Oxide
大阪公立大学 公式発表
phys.org
bioengineer.org
PubMed
PMC

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