発酵で植物性タンパク質の臭いを99%除去 オハイオ州立大学が新技術を発表

植物性タンパク質の最大の弱点ともいえる「独特の臭い」。
この長年の課題に対して、アメリカのオハイオ州立大学の研究チームが大きな前進となる成果を発表しました。

研究によると、発酵法を工夫することで、植物性タンパク質に含まれる不快な臭気成分を95〜99%も削減できることが明らかになったのです。これは、消費者の受け入れを大きく妨げてきた問題に対する、極めて実用的な解決策といえます。

この研究成果は学術誌「Foods」に掲載され、今週オハイオ州立大学が公式に発表しました。特筆すべき点は、生産時間やコストを大幅に増やすことなく導入可能な方法であることです。つまり、研究室レベルの実験にとどまらず、実際の食品製造ラインへの応用が視野に入っているのです。

なぜ植物性タンパク質は「臭う」のか

大豆、エンドウ豆、ひよこ豆などから作られる植物性タンパク質には、しばしば

  • 豆臭いにおい
  • 草のような青臭さ
  • 土っぽい香り
  • 硫黄のような刺激臭

といった不快な臭いが伴います。

これは、揮発性化合物(きはつせいかごうぶつ)と呼ばれる成分が原因です。揮発性化合物とは、空気中に広がりやすく、香りとして感じられる分子のことを指します。

香りは味の感じ方に強く影響します。
そのため、たとえ栄養価が高くても、臭いの問題があると消費者は敬遠してしまいます。

研究を主導した食品科学技術教授シェリル・バリンジャー氏は次のように述べています。

「植物性タンパク質はますます人気が高まっていますが、消費者は味を犠牲にしたくはありません。」

つまり、健康や環境配慮だけでは市場は拡大しません。“おいしさ”こそが最大の鍵なのです。

二段階発酵という革新的アプローチ

今回の研究の核心は、二段階の発酵プロセスにあります。

第1段階:悪臭の分解

最初に使用されるのが
ラクトバチルス・プランタラム菌という乳酸菌です。

この菌は以下のような悪臭の原因物質を分解します。

  • アルデヒド類
  • フラン類
  • 硫黄含有分子

これらは豆臭さや硫黄臭の主因となる成分です。
第1段階では、まずこれらを徹底的に減らします。

第2段階:良い香りを育てる

次に投入されるのが、ヨーグルト製造にも使われるおなじみの菌です。

  • ストレプトコッカス・サーモフィラス
  • ラクトバチルス・デルブルエッキイ
  • ラクトバチルス・アシドフィルス

これらが働くことで、望ましい乳製品風の香りが発達します。

つまり、

  1. 悪臭を取り除く
  2. 良い香りを付与する

という二段構えの戦略なのです。

研究チームによれば、この段階的アプローチは単段階発酵よりも明確に優れていたといいます。

8種類の植物タンパク質で検証

この技術は特定の原料だけで有効だったわけではありません。
研究チームは以下の8種類で検証しました。

  • 大豆
  • エンドウ豆
  • ひよこ豆
  • 緑豆
  • ソラマメ
  • 大麦米

その結果、すべての原料で異臭がほぼ完全に低減されたことが官能評価(人による味覚・嗅覚評価)で確認されました。

博士課程学生で筆頭著者のManpreet Kaur氏はこう語ります。

「通常の発酵で使われている菌と同じものを使っています。変えたのは“使い方”だけです。」

これは非常に重要なポイントです。
新しい特殊素材を導入するのではなく、既存技術の組み合わせを最適化しただけなのです。

添加物によるさらなる改良

研究では、発酵をさらに効果的にする要素も見つかりました。

  • 天然糖のアルロース → 第1段階の菌の活性を向上
  • ストロベリープリザーブ → ヨーグルト菌の働きをサポート

一方で、

  • ペクチン
  • キサンタンガム

などの非発酵性成分は、臭い低減にはほとんど効果がありませんでした。

産業応用への現実性

発酵には数時間から丸一日かかる場合がありますが、既存の製造工程を大きく複雑化することはないとされています。

研究チームはこの方法を

「クリーンラベルソリューション」

と表現しています。

これは、人工的な香料や特殊添加物に頼らない自然由来の方法であることを意味します。

市場拡大の可能性

現在、健康志向や環境意識の高まりを背景に、植物由来食品市場は急成長しています。

バリンジャー教授は次のように述べています。

「人々はより健康的で環境に優しい選択を求めています。この研究分野は今後も確実に成長し続けるでしょう。」

今回の発見は、植物性ヨーグルトやチーズ、ミルクなどの代替乳製品市場を大きく押し上げる可能性があります。

もし味の壁が取り払われるなら、植物性食品は一気に主流へ近づくかもしれません。

まとめ

今回の研究は単なる臭い対策ではありません。

植物性タンパク質の最大の課題を、低コストかつ拡張可能な方法で克服できる可能性を示した点が画期的です。

環境配慮、健康志向、そしておいしさ。
これらを同時に満たす技術として、今後の食品産業に大きな影響を与えることが期待されています。

ソース

オハイオ州立大学発表(news.osu.edu)
Foods誌掲載研究
Phys.org
PMC(米国国立医学図書館)

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