ホルムズ海峡封鎖が南アジアのエネルギー危機を引き起こす
米国、イスラエル、イランの戦争激化により、ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー供給危機が南アジアで現実化しています。
世界の石油・ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上閉鎖されました。
その結果、バングラデシュ、パキスタン、インドが深刻なエネルギー不足に直面しています。
さらに、イスラム教の断食月であるラマダンの最中です。
つまり、電力需要が増える時期にエネルギー供給が急減するという最悪の状況が発生しています。
LNG供給停止と海峡封鎖の衝撃
今回の危機の大きな要因は、カタールのLNG供給停止です。
カタール国営企業であるカタールエナジーは、3月2日に液化天然ガス(LNG)の生産停止を発表しました。
原因は、イランの無人機攻撃によってラスラファン工業都市とメサイード工業都市の施設が被害を受けたためです。
LNGとは、天然ガスを液体化して輸送する燃料です。
長距離輸送を可能にするため、世界のエネルギー貿易で重要な役割を持ちます。
カタールは世界のLNG供給の約20%を担っています。
そのため、この停止は世界のガス市場に大きな衝撃を与えました。
さらに同社は、契約履行が困難になったとしてフォースマジュール(不可抗力条項)を宣言しました。
つまり、契約供給を停止しても法的責任を負わない緊急措置です。
一方で、イラン革命防衛隊はホルムズ海峡の軍事支配を主張しました。
そして、通過を試みる船舶は攻撃対象になると警告しています。
こうした中、海峡を通過する船舶は急減しました。
- 2月の平均:1日135隻
- 攻撃開始後:1日26隻
つまり、輸送量は約80%減少した計算になります。
バングラデシュがガス配給制を導入
エネルギー不足の影響は、まずバングラデシュに表れました。
同国は国内生産を補うため、1日8億〜10億立方フィートのLNGを輸入しています。
そのため、供給途絶の影響を強く受けました。
国営エネルギー企業ペトロバングラは、水曜日にガス配給制を開始しました。
この措置では、全国で1日2億立方フィートのガス削減が行われます。
具体的には次の通りです。
- 電力部門:5,000万立方フィート削減
- 肥料工場:シャージャラル工場を除き操業停止
- 節約量:1億3,000万立方フィート
つまり、工業活動を止めることで燃料を確保する緊急措置です。
LNGスポット市場でも調達失敗
さらに状況を悪化させたのがスポット市場の調達失敗です。
スポット市場とは、短期契約でエネルギーを購入する市場です。
緊急時に利用されることが多い仕組みです。
バングラデシュは3月3日にLNG購入入札を実施しました。
しかし、応札者は1社も現れませんでした。
つまり、世界的な供給不足が起きていることを意味します。
現在、ホルムズ海峡を通過していた4隻のLNG貨物が3月中旬に到着予定です。
しかし、3月15日と18日到着予定の2隻については不確実性が高いとされています。
そのため、政府はカタールエナジーに説明を求める書簡を送りました。
しかし、明確な回答は得られていません。
パキスタンが紅海ルートを要請
パキスタンも危機回避に動きました。
同国はサウジアラビアに対し、紅海ルートでの原油供給を要請しました。
このルートは次の経路になります。
- サウジ西岸のヤンブー港
- 紅海経由輸送
- ホルムズ海峡を完全回避
パキスタンの連邦石油大臣アリ・ペルヴァイズ・マリク氏は、
サウジ大使ナワフ・ビン・サイード・アル=マルキ氏に要請を伝えました。
パキスタンのエネルギー輸入の大部分はホルムズ海峡を通過しています。
そのため、海峡封鎖は国家経済に直撃します。
サウジ側は支援を約束しました。
さらに、ヤンブーから原油を輸送する船舶1隻を手配しました。
しかし、アナリストは警告しています。
パキスタンは
- 貯蔵能力が小さい
- 調達の柔軟性が低い
このため、長期危機に弱い構造です。
なお、同国の燃料備蓄は次の通りです。
- ガソリン
- ディーゼル
いずれも28日分の在庫とされています。
インドでもLNG供給削減
南アジア最大のエネルギー消費国であるインドでも影響が広がっています。
インド最大のLNG輸入企業ペトロネットLNGは、
カタールエナジーに対して不可抗力通知を発行しました。
理由は、船舶がホルムズ海峡を安全に通過できないためです。
さらに、インド企業も供給削減を発表しました。
主な企業
- GAIL
- インディアン・オイル・コーポレーション
これら企業は顧客に対し、10%〜30%の供給削減を通知しています。
インドのエネルギー輸入構造は次の通りです。
- LNG輸入:約60%がホルムズ海峡経由
- 原油輸入:約50%が海峡経由
さらに問題があります。
インドにはLNGの戦略備蓄制度が存在しません。
つまり、輸入が止まれば即座に供給不足が起きます。
南アジア全体のエネルギー脆弱性
今回の危機は、南アジアの構造的弱点を浮き彫りにしました。
アナリストは次のように警告しています。
貯蔵能力の不足と調達の柔軟性の欠如により、供給途絶が起きると市場競争ではなく需要削減で対応せざるを得ない。
つまり、燃料を買えないため、
電力供給そのものを減らすしかない状況です。
ラマダンと夏の電力需要増加
さらにタイミングも最悪です。
現在、イスラム圏ではラマダン(断食月)が始まっています。
この期間は夜間の活動が増えるため電力需要が上昇します。
バングラデシュ政府は、ラマダン中の電力需要を
15,700メガワット
と予測していました。
しかし、ガス供給が逼迫したことで、この計画は危機に直面しています。
南アジアの燃料備蓄は3月末までか
アナリストはさらに深刻な見通しを示しています。
紛争が続いた場合、
南アジアの燃料備蓄は3月末まで持たない可能性
があります。
つまり、次のいずれかが必要です。
- 紛争の早期終結
- 代替LNGの確保
- 新しい輸送ルートの確立
しかし、現在のところ確実な解決策は見えていません。
そのため、ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー危機は、南アジア全体の経済と社会に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ソース
The Financial Express
Reuters
CNBC
UNB
Energy Update Pakistan
The News Pakistan
Just Energy News 24

