国土交通省は3月24日、中東情勢の緊迫化に伴う燃料供給不安を巡る調査結果を公表しました。
その結果、約1600のトラック事業者が、軽油の価格高騰や石油販売会社による供給制約の影響を受けていることが明らかになりました。
つまり、物流の根幹を担うトラック運送業界で、燃料調達に深刻な支障が広がっている実態が浮かび上がりました。
トラック事業者への影響は、単なるコスト増にとどまりません。
一方で、供給そのものに制約がかかると、運行計画や配送体制にも直結します。
そのため、今回の調査結果は、日本の物流全体に関わる重要な問題として受け止める必要があります。
国交省が業界団体に状況報告を要請
国交省は3月13日付で、全日本トラック協会や日本貨物運送協同組合連合会などの業界団体に対し、軽油の調達に支障が生じている事業者の状況を報告するよう要請していました。
こうした中、業界全体でどの程度の影響が出ているのかを把握する動きが進みました。
実際に、その調査結果として約1600のトラック事業者への影響が確認されました。
また、金子恭之国交相は17日の閣議後記者会見で、現場の厳しい状況に言及しました。
金子国交相は、「従前通りの軽油の調達が難しくなっていると聞いている」と述べました。
さらに、一部の石油販売会社が大口購入者向けに、軽油の販売停止や数量制限を行っているケースがあると説明していました。
供給制限の広がりが見えた調査結果
今回の調査で焦点となったのは、軽油高騰だけではありません。
石油販売会社による供給制約も、トラック事業者への影響として明確に表れました。
つまり、価格と供給の両面から、トラック事業者が圧迫されている構図です。
一方で、燃料の供給制限は、資金力や調達力に差がある事業者ほど重くのしかかります。
とりわけ大口購入者向けの販売停止や数量制限は、日々の配送を支える現場に直結します。
そのため、トラック事業者への影響は、今後さらに広がる可能性があります。
背景にある中東情勢の緊迫化
背景にあるのは、2月28日に開始された米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃です。
この軍事攻撃を受けて、中東情勢は一段と緊迫しました。
また、エネルギー供給への不安も急速に高まりました。
世界の石油供給の約2割が通過するホルムズ海峡では、タンカーの通航隻数が70~80%減少しました。
その結果、海峡は事実上の通航停止状態に陥りました。
実際に、この海上輸送の停滞が原油市場を強く揺さぶりました。
原油価格急騰が軽油高騰を招いた構図
原油価格は、攻撃前には1バレル67ドル程度でした。
しかし、中東情勢の悪化を受けて急騰し、一時120ドル近くに達しました。
こうした中、軽油高騰が国内のトラック事業者に重くのしかかる流れが鮮明になりました。
原油は、ガソリンや軽油などの燃料の元になる資源です。
つまり、原油価格が上がると、時間差を伴いながら軽油価格にも反映されやすくなります。
そのため、国際情勢の変化が、国内物流の現場を直撃する形となりました。
燃料高騰が経営を直撃
燃料高騰はトラック運送業の経営を直撃しています。
帝国データバンクが3月に公表した調査では、燃料費が2025年比で30%上昇した場合、運輸業の営業利益は平均で約8割減少するとの試算が示されました。
さらに、4社に1社が赤字に転落するとも試算されました。
これは、売上が一定でも、燃料費の増加が利益を急速に圧縮することを意味します。
一方で、運賃への価格転嫁が進まなければ、事業者は自力で負担を抱え込むしかありません。
そのため、トラック事業者への影響は経営そのものに及びます。
現場から上がる切実な声
新潟市の運送会社、沼垂運輸の星山洋一社長は、テレビ新潟の取材に応じました。
星山社長は、「こんなことになるとは誰も予想していなかった。一番お願いしたいのはこの紛争が早く終わってもらいたいということ」と語りました。
この発言は、現場の率直な危機感を示しています。
実際に、現場の事業者にとって重要なのは、価格の数字だけではありません。
燃料を安定して確保できるのか、いつまで高騰が続くのかという不透明感が、経営判断を難しくします。
しかし、国際情勢の先行きは見通しにくく、現場は極めて厳しい対応を迫られています。
もともとの2024年問題に追い打ち
業界はもともと、働き方改革に伴う「2024年問題」に直面していました。
2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働規制の強化で、輸送力不足や人手不足が懸念される問題です。
さらに、人件費の上昇も続いていました。
そこへ今回の軽油高騰が重なりました。
つまり、トラック事業者は、人手不足とコスト増の二重苦に置かれています。
一方で、配送需要そのものは社会に不可欠であり、簡単に運行を止めることはできません。
価格転嫁の遅れが苦境を深める
本来であれば、燃料価格の上昇分を運賃に反映する仕組みが重要です。
その仕組みの一つが燃料サーチャージ制度です。
燃料サーチャージ制度とは、燃料価格の変動分を追加料金として運賃に反映する仕組みを指します。
しかし、燃料サーチャージ制度の導入率は全事業者のわずか7%にとどまっています。
実際に、価格転嫁は十分に進んでいません。
そのため、トラック事業者への影響は、燃料費の上昇分を自社で吸収せざるを得ない形で大きくなっています。
今後の対応と政策の焦点
国交省は今後、調査結果を資源エネルギー庁と共有する方針です。
また、燃料の安定確保に向けた対策を進めるとしています。
こうした中、物流の安定維持と燃料供給の確保が政策の焦点になります。
しかし、供給制約と価格高騰が同時に続けば、個別事業者の努力だけでは限界があります。
そのため、行政による実態把握だけでなく、具体的な安定供給策や負担軽減策が問われます。
つまり、今回の調査結果は、物流危機を防ぐための出発点でもあります。
物流維持へ問われる次の一手
約1600のトラック事業者が軽油高騰と供給制約の影響を受けているという事実は重い意味を持ちます。
トラック輸送は、日用品、食品、工業製品などを運ぶ社会インフラです。
そのため、燃料問題は一業界の課題ではなく、国民生活全体に関わる問題です。
一方で、現場はすでに人手不足や人件費上昇という構造的な課題も抱えています。
さらに、価格転嫁の遅れが苦境を深めています。
実際に、トラック事業者への影響を抑えられるかどうかが、今後の物流の安定を左右します。
ソース
国土交通省
全日本トラック協会
日本貨物運送協同組合連合会
帝国データバンク
テレビ新潟

