岩手・久慈市で角竜類の歯化石発見|東日本初・国内4例目の歴史的発見と9000万年前の空白を解明

2026年3月30日、久慈琥珀博物館福井県立大学などの研究チームが、重要な研究成果を公表しました。
岩手県久慈市の約9000万年前の地層から、角竜類の歯化石が見つかったという内容です。
これは国内4例目であり、東日本では初の記録です。

今回の発見は、単なる新しい化石の追加ではありません。
白亜紀後期の東アジアにおける恐竜進化の空白を埋める可能性があるためです。
そのため、古生物学の分野で大きな注目を集めています。

また、今回の発表では角竜類だけではありません。
イグアノドン類の歯化石4点も報告されました。
つまり、久慈の地層は、複数の恐竜グループの記録を同時に示す場となったのです。

久慈層群玉川層が特別な理由

岩手県久慈市小久慈町にある久慈層群玉川層は、後期白亜紀の地層です。
年代は約9000万年前とされます。
さらに、火山灰の放射性年代測定で高い信頼度が確認されています。

放射性年代測定とは、岩石や火山灰に含まれる元素を手がかりに年代を調べる方法です。
そのため、いつの時代の地層かを比較的正確に把握できます。
こうした中、久慈の地層は年代が明確な産地として価値を持ちます。

2012年3月からは、早稲田大学の平山廉教授らによる発掘調査が続いています。
これまでに、竜脚類、獣脚類、カメ類、ワニ類、コリストデラ類、サメ類などが確認されました。
発見された脊椎動物化石は30種類以上、3500点超に達しています。

琥珀と恐竜化石が共産する稀有な地域

久慈琥珀博物館の周辺では、琥珀採掘体験場からも多くの化石が見つかっています。
2010年には翼竜の翼骨が出土しました。
また、2018年にはティラノサウルス類の歯、2019年には古代ザメの背棘が確認されています。

この地域では、白亜紀の琥珀恐竜化石が同じ地層から多数見つかります。
一方で、こうした条件を備えた地域は世界的にも多くありません。
そのため、久慈は国際的にも注目される「化石の宝庫」とみなされています。

実際に、約200点の標本が採集されています。
つまり、久慈は一つの発見だけで注目された場所ではありません。
継続的な出土実績が、その価値を裏づけています。

2013年に見つかった小さな歯

今回の主役となった角竜類の歯化石は、標本番号OSD315です。
この化石は2013年、東北大学の橋本亮平氏が大沢田川支流で発掘しました。
高さは約15mmです。

非常に小さな化石ですが、その後長期間にわたり詳細な分析が続きました。
つまり、発見された瞬間に正体が分かったわけではありません。
研究の積み重ねが、今回の結論につながったのです。

一人の大学生が川で見つけた小さな歯が、後に重要資料となりました。
しかし、化石研究ではこうした例が珍しくありません。
実際に、地道な観察と比較が大発見を生みます。

CT撮影で見えた角竜類の特徴

研究チームは、福井県立大学恐竜学研究所のCT装置Latheta LCT-200を使いました。
CTとは、内部構造を立体的に調べる装置です。
そのため、表面だけでは分からない特徴も確認できます。

詳細観察の結果、いくつかの重要な特徴が認められました。
歯冠の側方に深い窪みがありました。
また、歯冠と歯根の境にある歯の帯、つまりシンギュラムがU字型に発達していました。

さらに、歯の帯と歯根がなだらかに繋がることも確認されました。
一次稜線が目立たない点も特徴です。
一方で、歯の帯の反対側には控えの歯の成長による吸収痕がありました。

この吸収痕は、上顎歯である証拠とされました。
こうした複数の特徴を組み合わせて検討した結果です。
研究チームは、これをネオケラトプシア類の上顎歯と判断しました。

ネオケラトプシア類とは何か

ネオケラトプシア類は、角竜類の中の一群です。
角竜類とは、トリケラトプスの仲間として知られる草食恐竜のグループです。
つまり、今回の歯はその系統につながる証拠です。

ネオケラトプシア類は前期白亜紀に出現しました。
その後、後期白亜紀にかけて急速に多様化しました。
また、同じ時期にはアジアと北米の間で種の移動が頻繁に起きていたとされます。

そのため、約9000万年前の確かな記録は非常に重要です。
一方で、この時代の資料は世界的にも限られています。
久慈の化石は、その不足を補う手がかりになります。

国内4例目という重み

今回の岩手県久慈市の角竜類歯化石は、国内4例目です。
さらに、東日本初という点が大きな意味を持ちます。
地域分布の理解を広げる記録だからです。

国内の角竜類発見記録としては、兵庫県、福岡県、鹿児島県に続く例です。
兵庫県では、頭骨を含む標本が見つかっています。
そして、Sasayamagnomus saegusaiとして学名も付けられています。

しかし、それ以外の産地では歯化石のみです。
そのため、今回の久慈産標本も歯化石ではあるものの、価値は小さくありません。
むしろ、分布と年代を考えるうえで重要な1点といえます。

イグアノドン類の歯化石4点も報告

今回の発表では、角竜類に加えてイグアノドン類の歯化石4点も報告されました。
イグアノドン類は、鳥脚類と呼ばれる草食恐竜の一群です。
つまり、久慈の地層には複数の植物食恐竜がいた可能性が見えてきます。

国内でのイグアノドン類化石の報告例は約30例あります。
しかし、岩手県では今回が初記録です。
そのため、この報告も地域の古生物記録を大きく更新する内容です。

角竜類とイグアノドン類が同じ地層から確認された点は重要です。
また、今後の生態系復元にも直結します。
実際に、同時代の環境をより具体的に描く材料になります。

4点の発見経緯

4点の標本には、それぞれ発見の経緯があります。
2018年には、平山郁夫シルクロード美術館での化石発掘体験中に、中澤紗織氏が発見しました。
場所は、大沢田川支流から運ばれた地層です。

2024年には、久慈琥珀㈱琥珀発掘体験場で石賀大登氏が発見しました。
さらに2025年には、大沢田川支流で石賀氏坂根広大氏が発見しました。
坂根氏は福井県立大学大学院に所属しています。

このように、発見は一度に集中したわけではありません。
一方で、数年にわたり継続的に標本が見つかっています。
そのため、久慈の地層が持つ化石産地としての厚みが分かります。

イグアノドン類の上顎歯と下顎歯

詳細観察の結果、KAM201、OSD6230、OSD7162の3点は上顎歯と判断されました。
理由は、一本の顕著な陵、つまり一次稜線が顎の後方にわずかに偏るためです。
この特徴がイグアノドン類の上顎歯に合致しました。

一方で、OSD2117は下顎歯と判断されました。
こちらは、比較的広がった一次稜線が顎後方に偏る特徴を持っていました。
そのため、歯骨歯、つまり下顎の歯と解釈されました。

また、4点の歯冠は著しく磨耗していました。
つまり、これらは実際に使われていた歯である可能性が高いということです。
こうした摩耗痕は、生活の痕跡を示す重要な情報になります。

なぜ世界的に重要なのか

研究チームが特に強調したのは、化石の年代的な重要性です。
約9000万年前は、角竜類やイグアノドン類の多様化が進んだ時期です。
しかし、この時代の化石記録は世界的に見ても非常に限られています。

そのため、年代が明確な久慈産化石の価値は高くなります。
久慈では、火山灰による放射性年代測定で年代の信頼性が担保されています。
つまり、「いつの化石か」がはっきりしている点が強みです。

化石は見つかるだけでは十分ではありません。
いつの時代のものかが分からないと、進化の流れに正確に置けません。
一方で、久慈産標本はその弱点を補っています。

空白の時代を埋める資料

ネオケラトプシア類は、前期白亜紀に出現した後に多様化しました。
また、同時期にはアジアと北米の間で頻繁な移動があったと考えられています。
そのため、9000万年前のアジア産資料は移動史の検討に役立ちます。

イグアノドン類も、前期白亜紀のアジアで繁栄しました。
その後、一部は北米へ放散しました。
しかし、アジアに残った系統には多くの謎が残っています。

こうした中、久慈産化石の年代は特に重要です。
9000万年前という時代は、まさに空白が大きい時期だからです。
そのため、今回の標本は「空白の時代」を埋める重要な資料と評価されます。

今後の発掘が変える可能性

現時点で見つかっているのは、主に歯化石です。
しかし、今後もし顎骨や椎骨などの骨格化石が見つかれば状況は大きく変わります。
より細かな系統関係まで議論できるようになるためです。

現在は、イグアノドン類やネオケラトプシア類という高位分類での議論が中心です。
一方で、骨格がそろえば、さらに具体的な種類の検討が可能になります。
つまり、発掘はまだ入口にすぎません。

また、角竜類とイグアノドン類が同じ地層から産出した意味も大きいです。
これは、当時の生態系や大陸間移動を考えるうえで重要な証拠になります。
さらに、植物化石や他の動物群との比較も進めば、約9000万年前の久慈の全体像が見えてきます。

学会発表も予定

今回の研究成果は、2026年6月の日本古生物学会2026年年会で口頭発表される予定です。
そのため、今後さらに専門的な議論が進むとみられます。
また、新たな比較研究や追加報告も期待されます。

学会発表は、研究内容を専門家同士で検討する重要な場です。
つまり、今回の発見は一般向けの話題にとどまりません。
学術的にも本格的な検証の対象になっていきます。

久慈が示した白亜紀の新しい姿

久慈市の地層は、琥珀、恐竜化石、爬虫類化石などが一度に見つかる特異な場所です。
そのため、世界的にも類を見ない「化石の宝庫」といえます。
今回の発見は、その価値を改めて証明しました。

角竜類とイグアノドン類の発見は、白亜紀後期の東アジアにおける恐竜の多様性を考えるうえで重要です。
また、進化史の解明にも一歩近づく成果です。
さらに、年代が明確な資料である点が、その意義をいっそう高めています。

実際に、2013年に大学生が拾った小さな歯が、12年を経て大きな意味を持ちました。
しかし、化石研究の魅力はまさにそこにあります。
小さな標本が、地球史の大きな物語を動かすのです。

ソース

久慈琥珀博物館
福井県立大学
研究チームの発表内容
日本古生物学会2026年年会口頭発表予定情報

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