成田国際空港会社(NAA)が、滑走路の新設・延伸に必要な用地の取得が難航していることを受け、土地収用法に基づく「強制収用」の手続きを検討していることが、2026年4月1日、複数の関係者への取材で明らかになりました。
NAAは近く国土交通省に方針を伝達します。
そのうえで地元への説明などを経て、早ければ2026年6月にも正式決定する見込みです。
当初2029年3月末を目標としていた新滑走路の供用開始も、少なくとも1年以上延期される見通しとなっています。
用地確保が9割止まり 交渉は「非常に厳しい」
成田空港では現在、B滑走路の1000メートル延伸(3500メートル化)と、新たなC滑走路(3500メートル)の建設を柱とする「第3次開発」が進んでいます。
この工事には新たに約1,099ヘクタールの用地が必要です。
対象は千葉県芝山町・横芝光町にまたがる約200戸です。
しかし、2026年2月20日時点での用地確保率は全体で88.4%です。
民有地(743ヘクタール)に限ると82.9%にとどまります。
国土交通省は2025年度末、つまり2026年3月末までの全用地取得完了をNAAに求めていました。
しかし、期限を迎えても約1割の土地が未取得のままです。
NAAの田村明比古社長は「非常に厳しい状況」との認識を示しています。
任意交渉だけでは解決の見通しが立たなくなりました。
強制収用とは何か 手続きの流れ
土地収用法に基づく強制収用は、次のような手順で進みます。
- 事業認定申請:NAAが国土交通省に対し、事業の公益性・必要性を示す「事業認定」を申請します。
- 国交省による認定:公益性が認められれば、手続き開始の認定が下ります。
- 収用委員会への申請:都道府県の「収用委員会」に対し、土地の明け渡し裁決を申請します。
- 審理・裁決:審理で認められれば強制収用が可能になります。
NAAは関係者に対し、あくまで最終的な手段であるとも説明しています。
そのうえで、今後も地権者の理解を得られるよう対話を続けることが重要だとしています。
つまり、強制収用の検討と並行して、任意取得交渉も継続する姿勢を示していることになります。
成田闘争の歴史が重くのしかかる
今回の検討が大きな注目を集める背景には、成田空港をめぐる半世紀以上の歴史があります。
1966年の空港建設決定後に激化した「成田闘争」では、1971年に土地収用法を適用した強制収用が実施されました。
その際、農民・学生・新左翼などが激しく抵抗しました。
しかし、1990年代に入ると、政府と反対派は公開シンポジウムを通じた対話路線へ転換しました。
NAAの前身である新東京国際空港公団は、事実上、強制収用を放棄する立場をとってきた経緯があります。
それから約30年を経て、再び強制収用の検討が表面化しました。
これは、政策の大きな方針転換を意味します。
もっとも、1971年当時と現在では社会情勢や法的手続きも異なります。
そのため、地権者・住民・地元自治体への丁寧な説明と合意形成が、これまで以上に求められることになります。
2029年開業はなぜ重要か 訪日客5000万人時代への対応
成田空港の第3次開発が完成すれば、年間発着枠は現在の34万回から50万回へと大幅に拡大されます。
これは、増加し続けるインバウンド需要への対応として極めて重要なインフラ投資です。
C滑走路の本格着工は2025年5月にスタートしています。
工事自体は進んでいます。
一方で、用地が未確保のまま工事を進めることには限界があります。
供用開始が少なくとも1年以上遅れれば、2030年以降にずれ込む可能性があります。
その場合、訪日客受け入れ能力の拡大計画にも直接影響が及びます。
国際航空需要が急回復する中で、日本の空の玄関口をどう整備するかは、国家的な競争力に直結する課題でもあります。
今後のスケジュール
| 時期 | 予定されている動き |
|---|---|
| 2026年4月〜5月 | NAAが国土交通省に強制収用方針を伝達 |
| 2026年6月(予定) | 事業認定申請の正式決定 |
| 決定後数ヶ月 | 国交省による公益性審査・事業認定 |
| 認定後 | 千葉県収用委員会へ裁決申請 |
| 2030年以降になる可能性(未確定) | C滑走路・延伸B滑走路の供用開始 |
難しい判断が迫られる今後の焦点
NAAが強制収用の手続きに踏み切るかどうかは、今後の国交省との協議や地元住民への説明の結果次第です。
「対話による解決」という原則を守りながら、国際競争力の維持という現実的な要請にどう応えるか。
その難しいバランスが問われています。
6月の正式決定に向けて、今後の動向が引き続き注目されます。
ソース
毎日新聞(2026年4月1日)
TBS NEWS DIG(2026年3月24日)
千葉日報(2026年3月30日)
日本経済新聞(2026年2月27日)
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