2025年度の企業倒産1万505件、12年ぶり高水準|物価高・人手不足が中小企業を直撃

2025年度の全国企業倒産件数が1万505件となり、2013年度以来12年ぶりの高水準を記録しました。 東京商工リサーチが2026年4月8日に公表した調査で明らかになりました。対象は、負債額1,000万円以上の企業倒産です。

今回の数字が重い意味を持つのは、倒産件数の増加が4年連続で続いているためです。さらに、2年連続で1万件を上回ったことも見逃せません。つまり、一時的な反動ではなく、企業経営を取り巻く厳しい環境が広く定着していることを示します。

その背景には、物価高人件費の上昇深刻な人手不足があります。こうした中、特に中小企業と零細企業が強い圧力を受けています。今後もこの流れが続くのかどうかは、日本経済全体を考えるうえでも重要です。

コロナ禍の支援効果が薄れ、倒産は増加局面へ

企業倒産件数は、コロナ禍で各種支援策が機能した2021年度の5,980件を底にして、その後は増加に転じました。実際に、2022年度から4年連続で前年度を上回る状態が続いています。

一方で、コロナ関連の支援が下支えしていた時期には、表面上は倒産が抑えられていました。しかし、支援の効果が薄れ、債務返済が本格化すると、経営体力の弱い企業から厳しい局面に直面しました。

つまり、コロナ禍で積み上がった債務の返済負担と、物価高によるコスト増が同時に企業を圧迫した形です。そのため、2025年度の1万505件という水準は、単なる景気循環では片づけにくい数字です。

年度別の推移から見える増加の流れ

年度別の推移を見ると、足元の悪化はより鮮明です。2021年度は5,980件で底を打ちました。その後、2022年度から増加へ転じ、2025年度には1万505件に達しました。

この1万505件という数字は、前年度比3.5%増です。また、2013年度以来12年ぶりの高水準という点でも、記録的な水準といえます。さらに、2年続けて1万件を上回ったことで、増加基調が一段とはっきりしました。

実際に、倒産の増加は一部の業種や地域だけの現象ではありません。全国規模で広がっており、日本の企業活動全体に重しがかかっている状況です。

人手不足倒産が過去最多を更新

2025年度の企業倒産で最大の特徴は、人手不足倒産が前年度比43.0%増の442件となり、調査開始以来の過去最多を更新したことです。人手不足倒産とは、働き手を確保できないことや、人件費の急上昇、従業員の離職などが原因で経営が立ち行かなくなる倒産を指します。

これまで倒産要因として注目されてきたのは物価高でした。しかし、足元ではそれに加えて、人が集まらない人件費が膨らむ既存の従業員が辞めるという問題が経営の根幹を揺さぶっています。

そのため、企業倒産の中身は量だけでなく質も変わっています。つまり、資金繰りだけでなく、事業を回すための人員確保そのものが困難になっているのです。

人手不足倒産の内訳に表れた厳しさ

人手不足倒産442件の内訳を見ると、まず人件費高騰が195件でした。前年度のおよそ1.7倍に増えています。賃上げが必要でも、その原資を確保できない企業では、賃上げがそのまま資金繰りの重荷になります。

また、求人難は139件でした。必要な労働力を確保できず、事業継続を断念するケースです。さらに、従業員退職は108件で、離職によって業務が停滞し、受注に対応できなくなった企業も少なくありませんでした。

一方で、賃上げは本来、人材確保のための前向きな取り組みです。しかし、十分な利益を確保できない企業では逆に経営を圧迫します。こうした中、「賃上げ疲れ」ともいえる状況が鮮明になりました。

賃上げが経営を圧迫する「賃上げ疲れ」の実像

賃上げ疲れとは、賃金を引き上げても、それに見合う売上や利益を確保できず、経営の負担が重くなる状態を指します。難しい表現を避けて言えば、人をつなぎ留めるために給料を上げた結果、会社の体力が先に尽きてしまう構図です。

特に中小企業では、大企業ほど価格転嫁が進まず、賃上げ原資を十分に確保できない場合があります。つまり、従業員を守るための判断が、会社そのものの存続を苦しくするケースが出てきています。

実際に、今回の調査では人件費高騰による倒産が大幅に増えました。これは、単に人が足りないという問題ではなく、人を雇い続けるコストに耐えられない企業が増えていることを示します。

サービス業の倒産は過去最多に

産業別では、全10産業のうち5産業で前年度を上回りました。 なかでも目立ったのがサービス業です。飲食業を含むサービス業の倒産は、3,585件となり、前年度比5.5%増で過去最多を記録しました。

サービス業は、物価高の影響を受けやすい業種です。食材費や光熱費が上がっても、すぐに価格へ転嫁できない企業は少なくありません。特に飲食業では、値上げをすると客足に響く恐れがあり、価格改定に踏み切れないまま採算が悪化するケースがあります。

さらに、サービス業では人手不足倒産も増えています。一方で、現場では人を確保しなければ営業そのものが成り立ちません。そのため、コスト上昇と人材難が同時に押し寄せる構図が、倒産増加に直結しました。

建設業も高止まりが続く

建設業の倒産件数は2,047件でした。サービス業ほどの増加率ではないものの、高水準が続いています。建設業では、資材価格の高止まり人手不足工期遅延が重くのしかかっています。

また、建設業では労務費も上がっています。しかし、受注価格へ十分に転嫁できない企業では、利益が圧迫されます。特に中小・零細の建設業者ほど、価格交渉力が限られるため影響を受けやすい状況です。

つまり、建設業では仕事があっても安心できません。実際に、受注しても利益が残りにくい案件が増えると、資金繰りが悪化し、企業倒産につながります。

負債総額は減少したが、安心材料ではない

2025年度の負債総額は1兆5,687億円でした。前年度比33.9%減で、4年ぶりに1兆円台へ縮小しました。一見すると、倒産の規模が小さくなったようにも見えます。

しかし、この数字だけで状況改善とは言えません。大型倒産が少なかったことが主因であり、倒産そのものが減ったわけではないからです。むしろ、小規模な倒産が数多く積み上がった構造が見えてきます。

そのため、負債総額の縮小は明るい材料とは限りません。つまり、大企業の大型破綻は少なくても、地域経済を支える中小企業が静かに消えている可能性があります。

「小粒倒産」の増加が示す中小企業の苦境

今回の特徴として、負債額1億円未満の倒産が全体の76.7%を占め、過去最高水準となりました。さらに、従業員10人未満の企業が倒産全体の約9割を占めています。

これは、企業倒産の中心が大企業ではなく、小さな会社にあることを示します。地域に根ざした事業者や家族経営に近い企業が、コスト増や人手不足の前で踏みとどまれなくなっているのです。

実際に、こうした小規模事業者は資金調達力や価格交渉力で不利になりやすい傾向があります。一方で、地域雇用や生活インフラを支える役割も担っています。そのため、小粒倒産の増加は数字以上に重い意味を持ちます。

地域別でも全国に広がる倒産増加

地域別では、全国9地区のうち、東北と中国を除く7地区で前年度を上回りました。 倒産増加は特定地域だけの問題ではなく、広い範囲で進んでいます。

都市部だけでなく、地方でも中小企業の経営環境は厳しさを増しています。地方では人口減少や人材流出も重なりやすく、人手不足の影響がより強く出る場面があります。

こうした中、企業倒産の増加が全国規模で進んでいることは重要です。つまり、日本経済の裾野を支える地域企業が、幅広く圧迫されているということです。

先行きで警戒される4つの要因

東京商工リサーチは、今後の倒産増加要因として4点を挙げています。まず、日銀の利上げです。利上げは金利を引き上げる政策で、借入金の返済負担を重くする可能性があります。そのため、金融コストの上昇が企業経営をさらに圧迫するおそれがあります。

次に、トランプ関税の影響です。関税とは、輸入品にかける税のことです。関税政策の変化は、輸出企業や製造業にとって販売環境の悪化につながる可能性があります。

さらに、中東情勢の悪化によるエネルギー価格の再上昇リスクもあります。また、経営者の高齢化と後継者不足も大きな懸念材料です。一方で、事業そのものに需要があっても、引き継ぐ人がいなければ廃業や倒産に至るケースは増えかねません。

帝国データバンクも人的要因への移行を指摘

帝国データバンクは、倒産のトレンドについて、「物価高」から「人手不足」「経営者の病気・死亡」など人的要因へ移り変わっていくと指摘しています。これは、倒産の原因が単純なコスト増だけではなくなっていることを意味します。

経営者の病気や死亡は、特に中小企業で深刻です。後継者がいない企業では、経営の継続が難しくなるためです。つまり、会社の決算書だけでは見えにくい人的な脆さが、今後の企業倒産に大きく影響する可能性があります。

実際に、人手不足倒産が過去最多を更新したことは、この見方と重なります。そのため、倒産増加の流れは当面続く可能性があるとみられています。

2025年度の企業倒産が映し出す構造問題

2025年度の企業倒産1万505件という数字は、単なる景気の波では説明しきれません。日本経済の構造的な課題が同時に表面化した結果とみるべき局面です。

まず、物価高があります。コストが上がっても価格転嫁できない中小企業では、利益が細ります。また、人手不足は、採用コストの上昇と業務停滞を招きます。さらに、賃上げ圧力は、企業にとって必要な対応である一方、資金繰りを悪化させる場面もあります。

加えて、各種支援策の終了により、コロナ禍で積み上がった債務の返済負担が重くなっています。こうした複合要因が重なり、特に中小零細企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。

中小零細企業に問われる経営の体力と対応力

今後の焦点は、こうした逆風に企業がどこまで耐えられるかです。資金繰りの体力に加え、価格転嫁の力、人材確保の工夫、事業承継の準備など、複数の対応力が問われます。

一方で、すべての企業が同じ条件にあるわけではありません。大企業に比べて中小零細企業は、交渉力や資金余力で不利なことが多く、環境変化の打撃を受けやすい傾向があります。

そのため、2025年度の企業倒産は、単なる数字ではなく、日本の企業基盤の弱い部分がどこにあるのかを浮かび上がらせた結果でもあります。今後も、企業倒産の動向は、中小企業政策や金融政策、地域経済の行方を読み解くうえで重要な指標になります。

ソース

東京商工リサーチ「2025年度(令和7年度)の全国企業倒産」(2026年4月8日発表)

帝国データバンク「全国企業倒産集計2025年度報」(2026年4月8日発表)

タイトルとURLをコピーしました