令和8年5月29日の官報では、法律第25号「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
今回の改正で最も重要なのは、これまで主に音声通信を前提としていた本人確認の枠組みが、音声以外の携帯通信役務にも広がることです。
これにより、携帯通信契約の確認対象が拡大し、代理手続や既存利用者への対応ルールも見直されました。
同日付の官報には、号外第119号で法律・政令、第1715号で告示が掲載されています。
一方、号外第120号は主として公告類が中心で、今回の対象範囲である法律・政令・省令・告示・条約のうち、記事の主軸にする内容は限定的でした。
したがって本記事では、号外第119号の法律・政令を主軸にしつつ、第1715号の主な告示を補足として整理します。
導入(結論)
今回の官報で最も注目すべきなのは、携帯通信の本人確認制度が、音声中心から携帯通信全体へ広がる法改正です。
法律名も改められ、改正後は「携帯通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯通信役務の不正な利用の防止に関する法律」となります。
公布日は令和8年5月29日です。
施行日は、法律第25号については公布日から1年を超えない範囲で政令で定める日とされています。
これとは別に、同じ号外第119号に掲載された政令第182号から第188号には、公布日施行、令和8年6月1日施行、令和8年10月1日施行のものがあります。
法令ごとに施行日が異なるため、そこは読み分けが必要です。
法律(号外第119号)の改正ポイント
今回の法律第25号の中心は、本人確認の対象を「携帯音声通信役務」から「携帯通信役務」へ広げたことです。
つまり、通話契約だけではなく、携帯データ通信を含む制度に拡張された形です。
法律の題名そのものが改められているため、改正の方向性はかなり明確です。
主な改正点は次のとおりです。
- 本人確認対象の拡大
契約締結時の本人確認等の対象となる電気通信役務に、音声通信役務以外の役務が追加されました。 - 本邦内に住居を有しない外国人への確認ルール整備
日本国内に住居を有しない外国人と契約する場合に、住居に代わる事項の確認によって本人確認を行うための規定が整備されました。 - 契約手続を行う人の権限・地位確認の整備
契約相手本人と、実際に契約事務を行う自然人が異なる場合、事業者はその自然人の権限または地位を確認しなければならない仕組みになりました。
法人契約や代理手続の確認強化です。 - 警察署長による照会制度の整備
一定の罪に利用された携帯通信役務について、警察署長が本人確認等を求める際、必要があると認めるときは関係する電気通信事業者に照会し、必要事項の報告を求められるようになりました。 - 多数利用への対応
特定の個人が同時に利用できる通信可能端末設備の数が、総務省令で定める数を超える場合には、その超える部分について事業者が役務提供を拒否できる規定が整備されました。
なお、具体的な数値は今回確認した官報本文では示されていません。
附則と経過措置
附則では、この法律の施行前から携帯データ通信役務の提供を受けている利用者について、施行後に一定の本人確認を行う仕組みが設けられています。
新規契約だけでなく、既存の携帯データ通信利用者にも確認が及ぶ場合があるという構造です。
また、施行前に旧法の枠組みで確認済みの携帯音声通信契約者については、一定の場合にその確認記録を新法上の本人確認記録とみなす経過措置も置かれています。
既存の確認記録を活用する設計になっています。
政令(号外第119号)の具体化内容
同じ号外第119号には、法律第25号のほか、複数の政令も掲載されています。
ただし、官報で確認できる範囲では、これらは法律第25号を直接具体化する下位法令ではありません。ここでは、同日公布の主要政令として整理します。
警察法施行令の一部を改正する政令(政令第182号)では、警視庁や道府県警察本部の内部組織の基準を改め、警務部の所掌事務にサイバー事案に関する警察事務を追加し、必要に応じてサイバー警察部を置けるようにしています。施行日は公布日です。
令和七年等における特定地域に係る激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令の一部を改正する政令(政令第183号)では、中小企業信用保険法による災害関係保証の特例の適用期間を令和9年6月2日まで延長しています。施行日は公布日です。
公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令の一部を改正する政令(政令第184号)では、公益通報者保護法の対象法律として、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律を追加しています。施行日は令和8年10月1日です。
予防接種法施行令の一部を改正する政令(政令第185号)は、匿名予防接種等関連情報利用者が納付すべき手数料の額などを定める内容で、施行日は令和8年6月1日です。
医療法施行令の一部を改正する政令(政令第186号)は、医業広告で内科または外科と組み合わせることができる疾病・病態名に睡眠障害を追加する内容で、施行日は令和8年6月1日です。
医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律施行令の一部を改正する政令(政令第187号)は、匿名予防接種等関連情報を利用できる者や、連結して利用できる状態で提供可能な情報に関する改正で、施行日は令和8年6月1日です。
子ども・子育て支援法施行令の一部を改正する政令(政令第188号)は、施設等利用費の上限額を最近の経済情勢の変化を踏まえて改める内容で、施行日は令和8年10月1日です。
本紙(第1715号)の主な告示
第1715号では、法律第25号を直接具体化する総務省令や関連告示は、確認できた範囲では見当たりませんでした。
一方で、同日付の本紙には、実務や行政運用に関わる告示が複数掲載されています。
総務省告示第206号:特定国外派遣組織の指定
公職選挙法施行令に基づき、令和8年度米豪軍との実動訓練(サザン・ジャッカルー26)実施部隊が特定国外派遣組織に指定されました。
派遣地域はオーストラリア連邦、派遣人数は約430人、国外派遣期間は令和8年7月19日までです。
これは、海外派遣中の隊員が不在者投票制度の対象となるための指定です。
農林水産省告示第736号〜第746号:植物品種登録の取消
種苗法に基づき、複数の植物品種登録取消しが告示されています。
確認できる範囲では、Dendrobium、Chrysanthemum、Oryza、Rosa、Hydrangea、Petunia、Glycine max、Angeloniaなど多岐にわたる品種が対象です。
これらは、すでに育成者権が消滅した品種について、その取消しを公示する性格のものです。
件数の総数については、今回の官報本文から正確な最終件数をここで断定せず、複数告示にまたがる取消しがあった事実にとどめます。
国土交通省告示第654号・第655号:砂防法第2条の土地指定
国土交通省は、砂防法第2条に基づき、群馬県利根郡みなかみ町の十二河原沢流域と、三重県南牟婁郡紀宝町の原谷流域について、砂防指定地を告示しました。
こうした指定は、土砂災害防止の観点から、土地の掘削や盛土など一定の行為に規制がかかる区域と関わります。
国土交通省告示第656号:高潮予報を行う海岸の指定
水防法に基づき、富山湾沿岸の一部海岸が高潮予報を行う海岸として指定されました。
施行日は公布の日です。防災上の運用に関わる告示として位置づけられます。
改正の全体像整理
大枠(法律)
今回の中心は、携帯通信契約の本人確認制度を、通話契約中心の枠組みから、携帯通信全体へ広げた法律改正です。対象役務の拡大、外国人確認ルールの整備、代理手続の権限確認、警察による照会、多数利用への対応が柱になっています。
具体化(同日掲載の政令・告示)
同日付官報では、サイバー警察体制、災害特例、公益通報、予防接種、医療、子ども子育て分野の政令に加え、本紙では国外派遣組織の指定、植物品種登録取消し、砂防指定地、高潮予報海岸指定といった告示が掲載されました。
ただし、これらは同日掲載の法令・告示であり、官報上確認できる範囲では、すべてが法律第25号の直接の具体化法令というわけではありません。
施行日・経過措置まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公布日 | 令和8年5月29日 |
| 施行日 | 法律第25号は公布日から1年以内で政令指定 |
| 経過措置 | 既存の携帯データ通信利用者に施行後の本人確認を求める仕組みあり。旧法の確認記録を新法上の記録とみなす措置あり |
| 附則 | 有 |
影響を受ける主体
まず影響が大きいのは、携帯通信事業者です。
音声契約だけでなく、データ通信契約も含めて、本人確認、記録作成・保存、代理手続時の確認、既存利用者対応が必要になります。
次に、法人契約や代理手続を行う利用者です。
契約窓口に来た人が実際に権限を持つかどうかについて、確認される場面が増えると考えられます。
ただし、具体的な確認方法の細部は、今回確認した官報だけではすべて明らかではありません。
また、第1715号の告示に関係する主体として、海外派遣中の自衛隊員等、農業・育種関係者、砂防指定地周辺の地権者、防災対応にあたる自治体や住民にも実務的な影響があります。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 一番大きな変更点は何ですか。
本人確認の対象が、音声通信中心から携帯通信全体へ広がったことです。
これに伴い、法律名も改められました。
Q2. すぐに全面適用されますか。
法律第25号は、公布日から1年を超えない範囲で政令が定める日に施行されます。
そのため、公布日当日から直ちに全面施行されるわけではありません。
Q3. 今すでにデータ通信契約を使っている人も対象になりますか。
附則では、施行前から携帯データ通信役務の提供を受けている利用者について、施行後に本人確認を求める仕組みが設けられています。
ただし、対象外となる場合もあり、すべての既存利用者が一律に同じ扱いになるとまでは官報だけでは断定できません。
Q4. 本紙にはこの法律の詳細が載っていましたか。
今回確認した第1715号では、この法律を直接具体化する総務省令や関連告示は確認できませんでした。本紙で確認できたのは、国外派遣組織指定、植物品種登録取消し、砂防指定、高潮予報海岸指定など、別分野の告示が中心です。
まとめ
令和8年5月29日の官報で最も重要なのは、法律第25号により、携帯通信契約の本人確認制度が音声中心から通信全体へ拡張されたことです。
対象役務の拡大、外国人確認ルールの整備、代理手続の権限確認、警察照会制度、多数利用への対応が主なポイントです。
そのうえで、同日付の本紙第1715号には、国外派遣組織の指定、植物品種登録取消し、砂防指定地、高潮予報海岸指定など、行政実務に関係する告示が掲載されていました。
ソース
出典:官報発行サイト(令和8年5月29日付 号外第119号 1〜7ページ、第1715号 1〜5ページ、号外第120号 1ページ)
本記事は官報に掲載(公布)された法令情報をもとに、編集・再構成して解説したものです。官報は一次情報ですが、制度改正の詳細な運用は今後の政省令・通達・Q&A等で補足される場合があります。最終確認は官報および所管官庁の公式情報をご参照ください。

