プロローグ:誰もが魅せられる、その圧倒的な存在感
福岡ソフトバンクホークスの背番号9、柳田悠岐選手。彼のバットから放たれる打球は、見る者すべての心を揺さぶります。豪快なフルスイング、俊足、強肩、そして何よりも野球を楽しむ姿勢。今回は、そんな柳田選手のプロ入り前から現在に至るまでの軌跡、プレースタイル、そして彼の人間的な魅力まで、余すところなくご紹介します。
1.アマチュア時代:才能の萌芽と成長
1-1.小学校~中学校時代:地元・広島での原点
柳田選手は、広島県広島市安佐南区で生まれ育ちました。小学校3年生の時に「西風五月が丘少年野球クラブ」で野球を始め、6年生の時に右打ちから左打ちに転向。中学校時代は軟式野球チーム「八幡少年野球クラブシニア」に所属していました。しかし、当時の彼はまだ線が細く、プロ入りを意識するほどの選手ではありませんでした。小学校卒業時点では声変わりもしていなかったほど。それでも、バットにボールを当てる技術と、そつなくこなせる守備でチームに貢献。足の速さを活かしたプレースタイルで、リードオフマンとして活躍していました。彼の代名詞であるフルスイングは、この頃からすでに芽生えており、遠くに飛ばしたいという強い気持ちを持って練習に励んでいたそうです。ただ、小学生の頃はまだ力が足りず、思い切り振っても打球は外野の前に落ちることが多かったようです。
1-2.高校時代:広島商業高等学校での挑戦
数々のプロ野球選手を輩出している名門・広島商業高等学校に進学。甲子園出場は叶いませんでしたが、3年生の夏の広島県大会ではベスト4に進出。高校通算ホームランは11本と、現在のイメージからは少し意外な数かもしれません。2年生の秋には中国大会にも出場しています。高校時代まではウエイトトレーニングの経験がなく、身長186cmに対して体重は60kg台と、非常に細身の体格。本人は当時を「ガリガリの痩せっぽち」と振り返っています。しかし、小学校時代から野球を心から楽しむことを第一に考えていたことが、その後の野球人生の大きな土台となったと語っています。高校時代に最も印象に残っている対戦相手は、広陵高校の吉川光投手(現巨人)。また、関西高校の上田選手(現東京ヤクルト)を、走攻守すべてが揃った「バケモン」のような選手として強く記憶しているそうです。広商野球部で過ごした3年間は、自身の野球人生において必要不可欠な時間であり、今の自分があるのは広商での経験があったからだと語っています。高校時代のチームメイトには、2学年上に岩本貴裕選手がいました。最後の夏の大会で放った岩本選手のホームランの弾道は、今でも忘れられない思い出だと語っています。プロ入り前の愛用品や高校時代のユニフォームなどは、特別展で公開されたこともあります。
1-3.大学時代:広島経済大学での飛躍
高校卒業後、中央大学と神戸学院大学のセレクションに不合格となり、2007年に広島経済大学に進学。ここで柳田選手の才能は大きく開花します。1年時の秋からレギュラーの座を掴み、広島六大学野球リーグで首位打者とベストナインを獲得。2年時(2008年)には春秋ともに同リーグのベストナインに選出。この年から3年連続で全日本大学野球選手権大会に出場しました。3年時(2009年)の春季リーグでは、打率.528という驚異的な成績を残し、リーグMVP、首位打者、ベストナインの三冠に輝きます。秋季リーグでも首位打者とベストナインを獲得。4年時には、第59回全日本大学野球選手権大会でサヨナラ安打を放つ活躍。秋季リーグでも再び首位打者とベストナインに輝きました。大学通算では82試合に出場し、打率.428、8本塁打、60打点を記録。その才能から「安芸のボンズ」と呼ばれるほど注目を集めました。広島六大学野球リーグでは通算100安打も達成。高校時代とは異なり、大学時代には金本知憲選手らが通うジムでトレーニングを積み、体重を増やすことで長打力が飛躍的に向上。本人も金本選手のようなシンプルな打撃フォームを目指していた時期があったそうです。遠投120-125メートル、50メートル走5.9-6.0秒という俊足強肩も持ち合わせており、最速148km/hを記録したことも。所属リーグでは圧倒的な成績を残しましたが、全国大会では当初なかなか結果が出ませんでした。ドラフト会議前には、横浜ベイスターズを除く11球団がリストアップしており、特に千葉ロッテマリーンズ、中日ドラゴンズ、阪神タイガースが熱心に調査。柳田選手は、指名されればどの球団でも行くという意向を示していました。大学時代の龍憲一監督は、当時の柳田選手と現在の姿は結びつかないほどだと語り、プロ入りを全く予想していなかったと明かしています。2010年のドラフト会議では、広島六大学野球リーグから唯一の指名選手となりました。大学時代のチームメイトには、永末祐崇選手がいました。広島経済大学硬式野球部では、背番号1を背負っていた可能性があります。母校である広島経済大学野球部を招待したこともあります。
2.プロ野球キャリア:輝かしい実績の数々
2-1.基本情報:柳田悠岐という男
- 氏名: 柳田 悠岐(やなぎた ゆうき)
- ポジション: 外野手
- 背番号: 9(2015年 – 現在)、44(2011年 – 2014年、2015 GLOBAL BASEBALL MATCH)、22(2018日米野球)
- 投打: 右投左打
- 生年月日: 1988年10月9日
- 出身地: 広島県広島市安佐南区
- 身長: 187 cm (多くの情報源。一部情報源では188cm。ソフトバンクホークスの公式サイトでも年度によって表記が異なることがあります。)
- 体重: 90 kg (多くの情報源。一部情報源では92kgまたは93kg-94kg。身長と同様に、体重も年度によって変動がある可能性があります。)
2-2.プロ入り:ホークスとの出会い
- ドラフト情報: 2010年ドラフト会議で福岡ソフトバンクホークスから2位指名。
- 当初、ホークスは2位指名で秋山翔吾選手を指名する予定でしたが、王貞治会長の「誰が一番飛ばすのか」という問いに対し、スカウトが柳田選手と答えたため、直前で指名が変更されたというエピソードは有名です。
- 契約金7000万円、推定年俸1200万円で仮契約。
- 背番号は44に決定。
- 担当スカウトは若井基安氏。
- スカウトの評価では、広島六大学野球リーグでの高い打率と潜在能力が注目されていました。
- 足、肩、打撃の三拍子が揃った選手として高く評価。
- ホークスは、柳田選手を松中信彦選手のような長距離砲として育成することを目指していました。
- 2011年の春季キャンプでは、新人選手の中で唯一A組(一軍)スタート。
2-3.所属球団の変遷:一筋のホークス愛
- 福岡ソフトバンクホークス (2011年 – 現在)。プロ入り以来、一貫してソフトバンクホークスに所属し、チームの顔として活躍しています。
- クリオージョス・デ・カグアス (プエルトリコ・ウィンターリーグ, 2011年)。プロ1年目のシーズンオフには、育成のためプエルトリコのウィンターリーグに派遣されました。
2-4.タイトル歴:球界を代表するスラッガーの証
- 首位打者: 2回(2015年、2018年)
- 最高出塁率: 4回(2015年 – 2018年)。4年連続はパ・リーグ最長タイ記録です。
- 最多安打: 2回(2020年、2023年)
2-5.表彰歴:数々の栄光
- パ・リーグMVP: 2回(2015年、2020年)
- ベストナイン: 8回(外野手部門:2014年、2015年、2017年、2018年、2020年 – 2023年)
- ゴールデングラブ賞: 6回(外野手部門:2014年、2015年、2017年、2018年、2020年、2021年)
- 月間MVP: 9回(打者部門:2014年5月、2015年8月、2015年9月、2017年6月、2018年5月、2020年6・7月、2020年10・11月、2021年9月、2024年3・4月)
- スカパー! ドラマティック・サヨナラ賞(年間大賞): 1回(2015年)
- スカパー! サヨナラ賞: 3回(2012年8月、2015年8月、2024年3・4月)
- セ・パ交流戦 最優秀選手賞: 2回(2015年、2017年)
- オールスターゲームMVP: 3回(2014年第2戦、2022年第2戦、2023年第1戦)
- オールスターゲームマイナビドリーム賞: 1回(2023年第1戦)
- ホームランダービー優勝: 2回(2017年第1戦、同年第2戦)
- ホームランダービー日産ノート e-POWER賞: 1回(2018年)
- クライマックスシリーズMVP(パ・リーグ): 1回(2018年)
- 日本シリーズ優秀選手賞: 4回(2014年、2017年、2018年、2020年)
- パ・リーグ連盟特別表彰: 1回(特別賞:2015年) – トリプルスリー達成を讃えて
- 報知プロスポーツ大賞: 1回(2015年)
- ヤナセ・福岡ソフトバンクホークスMVP賞: 2回(2014年、2015年)
- ヤナセ100周年賞: 1回(2016年)
- ユーキャン新語・流行語大賞(年間大賞): 1回(2015年、「トリプルスリー」、山田哲人選手と共同受賞)
- 通算1500安打達成表彰
- プロ通算250本塁打達成表彰
- 東京オリンピック金メダル (野球)
3.プレースタイル:フルスイングに隠された技術とセンス
3-1.打撃:豪快さと繊細さを兼ね備えたフルスイング
柳田選手の代名詞は、何と言っても小学生時代から変わらない「フルスイング」。彼の打撃は、豪快さの中に卓越したミート力と長打力が共存。逆方向であるレフトへも強い打球を放つことができ、高打率も維持しています。選球眼も優れており、高い出塁率を誇る。チャンスに強く、数々の決勝打やホームランでチームを勝利に導いてきました。打席では、技術的なことよりも「ヒットになる」という結果をイメージすることを重視。体勢を崩されながらもヒットにする粘り強さも魅力です。プロ入り当初はホームランを量産するタイプではありませんでしたが、体格の成長とともにパワーも増していきました。2018年のオープン戦では、外野守備走塁コーチの村松有人氏から「タフィ・ローズみたい」と評された、バットを頭上で寝かせるようなフォームにも一時的に変更しています。以前は引っ張り傾向が強かったものの、近年は広角に打てるようになり、逆方向への打球が増加。2017年には、ゴロを減らし高いフライを増やすことを意識したスイングに変更しています。清原和博氏は、彼のスイングスピードを「日本人で一番速い」と絶賛。糸井嘉男選手も、柳田選手の打撃を「たぶん日本人で一番飛ばす。バケモン」と評し、そのパワーを高く評価しています。2015年から2018年にかけて4年連続で出塁率と長打率の両部門でリーグ1位を記録しており、これは王貞治選手に次ぐプロ野球史上2人目の記録。現在のシーズン(2025年)の打率、本塁打、打点は、最新のデータによるとそれぞれ.286、2本、6打点です。
3-2.走塁:スピードとセンスを兼ね備えた韋駄天
柳田選手は、その恵まれた体格からは想像できないほどの俊足の持ち主。2015年の春季キャンプでは、手動計測ながら50メートル5秒55を記録。そのスピードは塁上でも大きな武器となり、盗塁や進塁に繋がっています。2015年にはトリプルスリーを達成しており、そのシーズンには32盗塁をマーク。ベースランニング能力を示すUBR(Ultimate Base Running)の指標でも、2014年から4年連続でリーグ上位3位以内に入るなど、高い走塁センスを発揮。2019年に盗塁で負傷して以降は盗塁企図数が減少傾向にありますが、2011年のプロ初出場試合で初盗塁を記録しています。プレシーズンゲームでは、エンドランのサインに忠実に従い、走塁センスの光るプレーも見せています。工藤公康監督からは、走ることは全身運動であり、全ての筋肉がつくと教わったと語っており、走り込みの重要性を認識。俊足の左打者であるため、内野安打を稼ぐことも得意としています。2014年にはキャリアハイとなる33盗塁を記録。現在のシーズン(2025年)の盗塁数は0です。
3-3.守備:強肩と経験でチームを支える外野の要
柳田選手の主な守備位置は外野手。長年にわたりセンターを守ることが多く、ライトを守った経験も。2025年の春季キャンプではレフトでの守備にも就いています。遠投125メートル、最速148km/hを誇る強肩は大きな武器。その肩の強さは球界でもトップクラスと評されています。2023年には7補殺を記録し、パ・リーグの外野手の中でも上位の数字でした。守備範囲については、データ分析によって評価が分かれることもありますが、UZR(Ultimate Zone Rating)の指標は年々改善傾向。アームレーティングによる進塁阻止の評価は非常に高く、強肩によるランナーの進塁阻止は大きな貢献となっています。プロ入り当初は打球判断の遅さを指摘されることもありましたが、経験を積む中で改善されています。ゴールデングラブ賞を6回受賞していることからも、守備力の高さが証明されています。
4.記憶に残るエピソードと人間性
4-1.アマチュア時代の輝き:才能の片鱗
広島六大学野球リーグでのMVP獲得と高打率、「安芸のボンズ」と呼ばれたことなど、アマチュア時代からその才能は際立っていました。
4-2.苦難を乗り越えて:成長の糧
輝かしいキャリアの裏には、怪我や不調といった苦難も。しかし、それらの経験を糧に、常に進化を続けてきました。
4-3.ファンとの絆:「ギータ先生」の愛称
ファンからは親しみを込めて「ギータ先生」と呼ばれ、ファンサであり、スクワット応援をしていたというエピソードも 。ービス精神も旺盛。オールスターゲームのファン投票では、3年連続で両リーグ最多得票を獲得するなど、その人気は絶大。幼少期には広島カープのファンであり、音楽グループ「ももいろクローバーZ」のファンであることは有名。ベストナインの表彰式で記念の盾を落としてしまうなど、お茶目な一面も。
4-4.チームメイトからの信頼:誰もが認める実力
大学時代の監督は、プロ入り後の活躍に驚きを隠せない様子。チームメイトやコーチからは、その打撃能力とひたむきな努力が賞賛されています。清原和博氏からはスイングスピードを絶賛、糸井嘉男選手からもそのパワーを高く評価。一方で、コーチからは若手選手が彼のスイングを安易に真似ようとすることに懸念の声も上がっています。
4-5.パーソナルな一面:趣味は筋トレ!?
趣味は筋力トレーニング。ゴルフも好みます。好きな音楽グループはWANIMA。好きな漫画は「ONE PIECE」。リラックス方法も筋力トレーニング。現在のマイブームも筋力トレーニング。やってみたい未体験のことは乗馬。ももいろクローバーZのファンであることは有名。野球観戦も趣味の一つ。馬主としても知られています。2015年に結婚。
5.SNSアカウント:情報発信も積極的に
- オフィシャルウェブサイト: www.yanagita-yuki.com
エピローグ:これからも目が離せない、柳田悠岐選手の未来
柳田悠岐選手は、その圧倒的な打撃力と魅力的な人間性で、多くのファンを惹きつけています。プロ野球界の顔として、これからも数々の伝説を打ち立ててくれることでしょう。彼のフルスイングは、これからも私たちの胸に熱い感動を与えてくれるはずです。