科学者が宇宙の失われた硫黄の謎を解明

国際研究チームが数十年来の天文学の謎に新証拠を提示


宇宙における硫黄の行方

国際的な科学者チームが、宇宙科学における長年の謎――「宇宙の硫黄の大部分はどこに隠れているのか」――に対する有力な答えを発見しました。
Nature Communications に発表された最新研究によると、その答えは星間氷に閉じ込められた複雑な分子形態にあるといいます。

硫黄は宇宙で10番目に豊富な元素で、生命に不可欠な存在です。しかし、高密度分子雲での観測では、理論予測よりも約3桁少ない量しか検出されておらず、その希少性は天文学者を困惑させてきました。


実験室での星間環境シミュレーション

今回の画期的発見は、以下の研究者による実験から生まれました。

  • ライアン・フォルテンベリー(ミシシッピ大学)
  • ラルフ・カイザー(ハワイ大学マノア校)
  • サメル・ゴゼム(ジョージア州立大学)

彼らは低温分子雲内での星間環境をシミュレーションし、硫化水素が銀河宇宙線処理を受けると、オクタ硫黄環とポリスルファンという2種類の安定構造に変化することを突き止めました。

  • オクタ硫黄環:8個の硫黄原子がリング状に配列した構造
  • ポリスルファン:水素と結合した硫黄原子が鎖状に連なる構造

実験では、分子雲の寿命(約1000万年)の間に硫化水素の最大33%がこれらの形態に変換される可能性が示されました。これらの分子は氷に覆われた塵粒子上で形成され、従来の観測方法では見つけにくく、硫黄の存在を“隠す”役割を果たしています。


硫黄分子の動的性質と観測の難しさ

硫黄の検出を難しくしている要因は、その分子構造が常に変化する動的性質です。
フォルテンベリー氏はこれを「ウイルスのように移動しながら形を変える」と表現し、王冠状から鎖状まで様々な構造を行き来することが観測を複雑にすると説明しました。

研究チームは最大11個の硫黄原子を含むポリスルファンを特定し、冷たい分子雲で硫黄が少なく見える理由に実験的証拠を提示しました。さらに、星形成領域への進化過程でこれらの分子が昇華し、電波望遠鏡での検出が可能になる可能性も指摘されています。


XRISM衛星による補完的発見

別の観測として、日本のXRISM(X線撮像分光衛星)は、星間物質において硫黄がガス状と固体状の両方で存在することを初めて確認しました。
X線データは、硫黄が鉄と結合し、**ピロタイト(磁硫鉄鉱)やトロイライト(隕硫鉄鉱)**のような化合物を形成する可能性を示しています。これらは隕石中でも確認されている鉱物です。


天文学を超える広範な意義

カイザー氏は、硫黄化学の理解がエネルギー生産や環境管理の技術応用につながる可能性を指摘。さらに、この研究は星間物質と太陽系天体との関連性を示唆しており、実際に炭素質小惑星「リュウグウ」のサンプルからもオクタ硫黄が検出されています。


まとめ

今回の発見は、天文学者が宇宙における硫黄含有分子を検出するための新たなロードマップを提供し、天体化学の長年の謎を解き明かす大きな一歩となりました。

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