異常な挙動を示す恒星間彗星3I/ATLAS NASAにデータ公開を求める声が拡大

地球から約1億6700万マイルの距離を通過した恒星間彗星「3I/ATLAS」をめぐり、科学界と政界の双方で議論が続いています。
この天体は、太陽系外から飛来したことが確認された3番目の恒星間天体であり、その挙動が従来の彗星モデルでは説明しきれない点が多いことから、NASAに対し、より詳細な観測データの公開を求める声が強まっています。


恒星間彗星とは何か 3I/ATLASの特異性

恒星間彗星とは、太陽系の外で形成され、他の恒星系から飛来した天体を指します。
これまでに確認された例は極めて少なく、2017年の「オウムアムア」、2019年の「ボリソフ彗星」に続き、3I/ATLASは3例目となります。

3I/ATLASは、軌道が非常に高速で、太陽系の重力に縛られず通過していく点から、太陽系外起源であることが確認されています。しかし、それだけでなく、その動きや形状が「通常の彗星らしくない」ことが、研究者たちの注目を集めています。


重力だけでは説明できない「非重力加速度」

2024年12月下旬、天文学者たちは、3I/ATLASの軌道が事前予測から逸脱していることを観測しました。
このずれは、重力だけでは説明できない「非重力加速度」によるものとされています。

非重力加速度とは、彗星内部の氷が太陽熱で昇華し、ガスや塵が噴き出すことで、ロケットの噴射のように天体の進行方向が変わる現象です。
通常の彗星では、これは珍しいことではありません。

しかし、アヴィ・ローブ博士による分析では、3I/ATLASは「1日あたり約1.1×10のマイナス6乗天文単位」という、極めて大きな太陽から遠ざかる方向の加速度を示しているとされています。

この加速度を説明するには、彗星が近日点通過時に、全質量の約13パーセントを短期間で放出する必要があります。
ところが、そのような大規模なガス雲や塵の放出は、観測では確認されていません。


NASAへの疑問 なぜ十分なデータが公開されないのか

この不可解な挙動をめぐり、NASAの情報公開姿勢に対する疑問が高まっています。
2025年10月31日、アメリカ下院議員のアンナ・ポーリナ・ルナ氏は、NASA長官代行ショーン・ダフィー氏に宛てて、正式な書簡を提出しました。

書簡では、火星周回探査機に搭載されたHiRISEカメラの画像、パーカー・ソーラー・プローブによる観測データなど、3I/ATLASに関する具体的な生データの公開を求めています。
ルナ議員は、これらの情報が「恒星間天体と太陽系との相互作用を理解するうえで不可欠である」と強調しました。


公開された画像への批判

NASAは政府閉鎖が解除された後、11月に一部の画像を公開しました。
しかし、その画像は強く加工されており、独立した科学者が詳細な分析を行うには解像度が不十分だとして批判を浴びています。

ローブ博士は、3I/ATLASが火星から約3000万キロメートル以内を通過した10月2日に撮影されたHiRISE画像について、「探査機の振動の影響で、ぼやけた光の球のようにしか見えない」と指摘しました。
彼は、シャーロック・ホームズの言葉を引用し、「明白に見える事実ほど、人を誤解させるものはない」と述べています。


市民からも広がるデータ公開要求

この問題は、研究者や政治家だけにとどまりません。
11月には、Change.org上で請願書が立ち上げられ、NASAに対し、3I/ATLASに関するすべての生データおよび処理済みデータの公開を求める署名活動が始まりました。

請願書では、NASAが掲げる「公的資金で得られた科学データは、惑星データシステムを通じて広く公開する」という原則が引用されています。
納税者の資金で行われた観測である以上、透明性が確保されるべきだという主張です。


彗星の形状と動きが示すさらなる謎

3I/ATLASは、2025年7月1日にチリのATLAS望遠鏡ネットワークによって発見されました。
この彗星は、通常とは逆に、太陽に向かって尾が伸びているように見える「逆尾」を示しています。

その長さは最大で約62万マイルに達するとされ、これは通常の彗星ではほとんど見られない特徴です。
また、テイデ天文台の2メートル双子望遠鏡による観測では、約7時間45分周期で変化するジェット状構造が確認され、彗星核が約15.5時間周期で回転している可能性が示されています。


木星接近と統計的な偶然

現在、3I/ATLASは秒速60キロメートルを超える速度で太陽系外へ向かって進んでいます。
2026年3月16日には木星に接近し、約3300万マイル以内を通過する予定です。

この距離は、木星の重力圏である「ヒル球」の境界に非常に近いとされています。
一部の研究者は、非重力加速度が彗星の軌道を微調整し、結果的にこの接近が起きた可能性を指摘しています。

ローブ博士は、この点について「統計的に見て興味深い偶然であり、追加調査に値する」と述べています。


観測期限が迫る中での判断

3I/ATLASは、太陽系を離れるにつれて急速に暗くなっています。
12月27日時点での等級は12とされ、今後さらに観測が難しくなると見られています。

この彗星が完全に視界から消える前に、NASAがどこまで追加データを公開するのか。
その判断は、恒星間天体研究の将来に大きな影響を与える可能性があります。


ソース

IBTimes
Live Science
NASA関連公開資料
DefenseScoop
Change.org
Times of India

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