緑内障をリアルタイム監視へ|日本発スマートコンタクトレンズを開発

日本の研究者らが、眼圧をリアルタイムでモニタリングできるスマートコンタクトレンズを開発しました。
この技術は、緑内障患者の病状管理のあり方を大きく変える可能性を持っています。

このスマートコンタクトレンズは、薄膜センサーと先進的な無線技術を組み合わせた装置で、実験室での試験では、従来のワイヤレスセンシングシステムと比べて183倍という非常に高い感度を達成しました。

研究は、早稲田大学大学院情報生産システム研究科の三宅丈雄教授が率いるチームによって行われ、2026年1月13日に学術誌であるnpj Flexible Electronicsに掲載されました。

緑内障とは何か

なぜ眼圧の継続的な測定が重要なのか

緑内障は、世界で最も一般的な不可逆的失明の原因とされています。
現在、世界で約8,000万人が罹患しており、2040年には1億1,180万人に増加すると予測されています。

この病気では、眼球内部の圧力である眼圧の管理が極めて重要です。
眼圧が高い状態が続くと、視神経が徐々に傷つき、視野が狭くなっていきます。

しかし、現在の医療現場で使われている眼圧測定機器は、診察時の一瞬の値しか測定できません
そのため、特に睡眠中などに起こりやすい危険な眼圧変動を把握できないという大きな課題がありました。

コンタクトレンズ型センサーという新しい発想

早稲田大学の研究チームは、こうした課題を解決するため、コンタクトレンズに直接センサーを埋め込む方法を採用しました。

センサーには、PEDOT:PSSとPVAという材料を組み合わせた薄膜抵抗センサーが使われています。
この薄膜には、あらかじめ細かな「クラック構造」が作られています。

眼圧が上昇すると、眼球の形がわずかに変化し、コンタクトレンズが伸びます。
すると、薄膜内のクラックが変化し、電気抵抗が変わる仕組みです。
この抵抗変化を測定することで、眼圧の変化を捉えます。

快適性と機能性の両立という難題

三宅教授は、この研究の難しさについて次のように述べています。

コンタクトレンズは非常に小さく、装着者の快適性を損なわないことが絶対条件です。
そのため、レンズ上に電子デバイスを組み込むことは、一般的に非常に困難とされています。

研究チームは、マイクロファブリケーション技術を用いることで、
柔軟性を保ちつつ、目に違和感を与えない眼圧センサーの作製に成功しました。

量子物理学を応用した感度向上技術

今回の研究で特に注目されているのが、量子力学の考え方を応用した無線技術です。

研究者らは、センサーを70MHzのダブルループ金アンテナと組み合わせ、
パリティ時間対称ワイヤレス技術と呼ばれる手法を採用しました。

この技術により、従来のワイヤレスセンシングと比べて、
検出感度が183倍に向上しました。

動物実験で確認された高い精度と安全性

このスマートコンタクトレンズは、複数の実験で性能が検証されています。

豚の眼を使った試験と、ウサギの眼を使った生体内試験では、
市販の眼圧測定器(トノメーター)と強い相関関係が確認されました。
これは、測定結果が高い精度を持つことを示しています。

また、生体適合性の試験では、
ヒト角膜上皮細胞がレンズ材料と24時間および48時間接触した後も、
90パーセント以上の細胞生存率を維持しました。

高齢化が進む日本社会への大きな意義

この研究は、世界でも特に急速に高齢化が進む日本社会にとって、重要な意味を持ちます。

眼圧の上昇は年齢と強い相関があり、高齢者ほど緑内障のリスクが高まります。
そのため、日常生活の中で継続的に眼圧を測定できる技術の重要性は、今後さらに高まります。

早期診断と治療への期待

三宅教授は、この技術について次のようにまとめています。

このプラットフォームは、長期的かつ非侵襲的な眼圧モニタリングに適しており、
緑内障の早期診断と治療に大きく貢献できる可能性があります。

研究チームは、早稲田大学と山口大学医学部眼科学教室の研究者で構成されており、
今後は実用化に向けたさらなる研究が期待されています。

ソース

・npj Flexible Electronics
・Medical Xpress
・Nature Portfolio
・AOP(Association of Optometrists)
・Reuters

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