インドと日本は、1月16日にニューデリーで開催された第18回外相戦略対話において、人工知能と重要鉱物資源分野での二国間協力を強化する新たな枠組みを発表しました。
この動きは、両国が中国へのサプライチェーン依存を減らす必要性を強く意識している状況の中で進められたものです。中国は近年、日本向けのレアアース関連材料について輸出規制を強化しており、経済安全保障上の課題として重く受け止められています。
日印AI戦略対話の正式立ち上げ
今回の会談では、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と、日本の茂木敏充外相が、2時間を超える協議を行いました。
その結果、「日印AI戦略対話」を正式に立ち上げることで合意しました。これは、人工知能分野における政策対話、研究協力、人材交流を継続的に進めるための公式な枠組みです。
同時に、二国間の経済安全保障イニシアティブの下で、重要鉱物資源に関する共同作業部会を新設することも決定されました。
AI分野における協力と人材交流の具体像
このAI戦略対話は、2025年8月にインドのナレンドラ・モディ首相と日本の高市早苗首相による首脳会談で発表された、日印AI協力イニシアティブを基盤としています。
日本の外務省によると、2030年までにインドから500人の高度なAI専門人材を日本に招へいする計画が示されました。これは共同研究や産業連携を加速させることを目的としたもので、両国の技術基盤の底上げにつながると期待されています。
また、茂木外相は、2026年2月にインドで開催予定の「AIインパクト・サミット」の成功に、日本として貢献する意向を明らかにしました。インド外務省の報道官も、この対話がAI分野における「二国間協力への継続的な推進力」になると強調しています。
中国との緊張を背景にしたサプライチェーン強靭化
重要鉱物資源を巡る協力は、特に緊急性の高いテーマとされています。1月6日以降、中国は台湾をめぐる緊張の高まりを背景に、日本向けのレアアースや軍民両用技術の輸出に対して、より厳格な審査を実施しています。
具体的には、中国当局が、
最終用途となる製品の内容
輸送ルート
日本で製造された製品が米国など第三国へ再輸出されるかどうか
といった詳細な情報の提出を求めるようになっています。
安定した資源供給を目指す日印の方針
日本の外務省報道官は記者会見で、両国が「重要鉱物とエネルギー資源のより安定的な供給体制」の構築を目指していると説明しました。
さらに日印両国は、2026年第1四半期中に、民間企業も交えた経済安全保障対話を開始することで合意しています。対象となる優先分野は以下の5つです。
半導体
重要鉱物
情報通信技術
クリーンエネルギー
医薬品
これらはいずれも、国家の安全や経済の持続性に直結する分野と位置付けられています。
防衛分野でも進む戦略的協力
今回の外相会談では、防衛協力も重要な議題となりました。日本側は、海上自衛隊向けのUNICORN統合ステルスアンテナシステムをインドへ移転する可能性について、現在協議が進行中であることを明らかにしています。
UNICORNは、日本のもがみ型護衛艦に搭載されている最新技術で、複数の通信機能を1本のマストに統合し、レーダー反射を抑えることで艦艇のステルス性を高める仕組みです。
自由で開かれたインド太平洋への共同コミットメント
両外相はまた、アメリカやオーストラリアを含むクアッドの枠組みを通じて、「自由で開かれたインド太平洋」構想への強いコミットメントを再確認しました。
さらに、2027年を日印国交樹立75周年の記念年と位置付けることでも一致し、今後の関係強化に向けた象徴的な節目とする考えを共有しています。
経済安全保障を最重要課題とする認識
ジャイシャンカル外相は会談後、次のように述べています。
「今日、経済安全保障は特に最重要であり、我々自身の経済と国際経済のリスク分散を図る必要がある」
この発言は、AIや鉱物資源、防衛協力といった一連の合意が、単なる技術協力ではなく、国際情勢を見据えた戦略的判断であることを端的に示しています。
ソース
・インド紙 The Tribune
・毎日新聞
・CSIS 関連分析
・The Print
・インドおよび日本の外務省発表

