次世代半導体の国産化を目指すラピダスは、回路線幅2ナノメートル世代の半導体について、本格的な生産開始を2028年度とする計画を明らかにしました。
計画では、2027年度後半にまず量産を開始し、その後およそ1年かけて、生産能力を約4倍に引き上げることを想定しています。
2ナノメートルとは、回路の最小幅が10億分の2メートルという極めて微細な世界です。
この世代の半導体は、同じ大きさのチップでより多くの計算を行えるようになり、性能の向上と消費電力の削減を同時に実現できることが特徴です。
そのため、人工知能(AI)、データセンター、自動車の高度制御、次世代通信など、今後の成長分野を支える基盤技術として大きな注目を集めています。
北海道千歳市の工場「IIM-1」で段階的に増産へ
ラピダスは、北海道千歳市に建設した工場「IIM-1」で半導体の製造を行います。
この工場では、回路が形成された「ウエハー」と呼ばれる円盤状の基板を製造します。ウエハーは、最終的に細かく切り分けられ、電子機器に搭載される半導体チップになります。
2027年度後半の量産開始時点では、月産約6,000枚のウエハー生産を計画しています。
その後、装置の稼働状況や品質を確認しながら、約1年で月産2万5,000枚程度まで増やす方針です。
また、IIM-1では、ウエハーをチップ状に切り出し、外部と電気的に接続できる形に仕上げる「後工程」も行います。
前工程から後工程まで一貫して担うことで、品質管理を強化し、開発や量産のスピードを高める狙いがあります。
試作成功と量産の間に立ちはだかる高い壁
ラピダスはすでに、2025年7月に2ナノGAAトランジスタの試作に成功しています。
GAA(ゲート・オール・アラウンド)とは、電流の流れを制御するゲートが構造を全方向から包み込む方式で、従来よりも性能と省電力性を高めやすい最先端技術です。
ただし、試作が成功したからといって、そのまま量産できるわけではありません。
最先端半導体の量産では、200種類以上の製造装置を同時に立ち上げ、ナノメートル単位で精密に制御する必要があります。
特に難しいのが、歩留まり、つまり製造した中で不良品にならずに使える製品の割合を高めることです。
量産初期は不良品が多くなりがちで、安定して利益を出せる水準まで良品率を引き上げられるかが最大の課題とされています。
1兆円超の追加支援 国家プロジェクトとしての位置づけ
ラピダスの事業は、日本政府の強力な支援を前提に進められています。
政府は2025年11月、2026~27年度に1兆円を超える追加支援を行う方針を発表しました。
これまでの支援と合わせると、公的支援の累計は約2兆9千億円規模になります。
ラピダスが経済産業省に提出した事業計画では、設備投資などを含めた累計投資額は7兆円を超える見通しが示されています。
これほどの規模の支援は異例であり、半導体を日本の経済安全保障と産業競争力の中核と位置づけていることの表れといえます。
上場を見据えた経営と避けられない国際競争
ラピダスは、2031年度ごろの株式上場を目標に掲げています。
しかし、同社は自社ブランド製品を持たない「受託生産企業」であるため、工場を安定して稼働させるには継続的な顧客の確保が不可欠です。
世界に目を向けると、競争はすでに激しくなっています。
台湾のTSMCは、2025年第4四半期に2ナノ半導体の量産を開始する予定です。
さらに、韓国のサムスン電子も同世代の先端半導体生産に着手しています。
この状況の中でラピダスが存在感を示すには、技術力だけでなく、品質の安定性、納期の確実さ、長期的な信頼関係が強く求められます。
日本の半導体産業復活を左右する正念場
ラピダスの2ナノ半導体量産計画は、日本の半導体産業が再び最先端に戻れるかどうかを左右する重要な挑戦です。
成功すれば、国内産業への波及効果は大きく、海外依存を減らすという意味でも大きな価値があります。
一方で、歩留まりの改善、顧客の獲得、国際競争への対応など、乗り越えるべき課題は数多く残されています。
2027~2028年度は、ラピダスにとって事業の成否を分ける、まさに正念場の時期になるといえそうです。
ソース
47NEWS
沖縄タイムス
日本経済新聞
Yahoo!ニュース

