帝国データバンクは2月8日、2025年における農業分野の倒産動向を公表しました。
それによると、負債1,000万円以上の法的整理に該当する農業倒産は82件となり、前年から7.9%増加しました。2000年以降の集計で初めて80件を超え、過去最多を更新しています。
倒産件数だけでなく、負債の規模も大きく膨らみました。
負債総額は373億8,700万円に上り、前年の182億6,300万円からほぼ倍増しています。この金額は、2011年の4,524億6,600万円、2022年の883億1,900万円に次ぎ、過去3番目の水準となりました。
数字が示しているのは、一部の小規模経営だけでなく、比較的大きな農業法人も経営破綻に追い込まれている現実です。
野菜作農業と酪農業で倒産が相次ぐ
業種別に見ると、最も倒産が多かったのは「野菜作農業」でした。
きのこ類の栽培を含めて28件に達し、こちらも過去最多を更新しています。
背景には、猛暑や豪雨などの異常気象があります。
高温や長雨の影響で野菜の生育が思うように進まず、不作や品質低下が相次ぎました。その結果、市場に出回る野菜の価格が下落し、コスト増を吸収できない経営が増えたとされています。
「酪農業」も10件と過去最多を記録しました。
このうち7件は、岡山県倉敷市のファーマーズホールディングスとその関係会社によるもので、同グループは7月24日に大阪地裁へ民事再生法の適用を申請しています。
グループ全体の負債総額は約91億円に上り、酪農経営の厳しさを象徴するケースとなりました。
スマート農業でも倒産 大型投資のリスクが顕在化
2025年の農業倒産を語るうえで見逃せないのが、大型倒産の発生です。
岡山県笠岡市でスマート農業を展開していた株式会社サラは、12月12日に民事再生法の適用を申請し、負債約157億円を計上しました。
同社は、三菱商事などから出資を受け、最先端の大型温室を活用した施設野菜栽培で注目を集めていました。
しかし、栽培に必要なパーム椰子殻など資材価格の高騰に加え、慢性的な人手不足による人件費の上昇が経営を直撃しました。
高効率・高付加価値を目指した先進的な農業モデルであっても、外部環境の変化に耐えきれなかった現実が浮き彫りになっています。
肥料高騰と天候不順 価格転嫁できない農業の構造
倒産が増えた最大の要因として挙げられているのが、肥料や飼料の価格高騰です。
国際情勢の影響を受けて輸入資材の価格が上昇し、農家のコスト負担は年々重くなっています。
これに加えて、猛暑、豪雨、寒暖差の拡大といった天候不順による生産量の不安定化が経営をさらに難しくしています。
帝国データバンクは、「農業は市場価格に左右される産業であり、コストが上がっても販売価格に反映させにくい構造的な課題がある」と分析しています。
製造業やサービス業のように値上げを行うことが難しいため、利益が圧迫されやすい産業構造そのものが、倒産増加の土台になっているといえます。
調査機関によって件数差も それでも過去最多は共通認識
なお、東京商工リサーチが公表した別の調査では、2025年の農業倒産は103件(前年比18.3%増)とされています。
これは集計対象や基準の違いによるもので、件数に差はありますが、いずれの調査でも「過去最多を更新」している点は共通しています。
このことは、日本の農業経営が一時的な不調ではなく、構造的な厳しさに直面していることを示しています。
日本農業が直面する現実と今後の課題
2025年の農業倒産増加は、肥料高騰や異常気象といった外部要因だけでなく、
価格転嫁の難しさ、人手不足、大規模投資のリスクなど、複数の課題が同時に表面化した結果といえます。
生産性向上やスマート農業の推進が求められる一方で、
経営を継続できる環境整備や価格形成の在り方が問われている状況です。
倒産件数の過去最多更新は、日本の農業が重要な転換点に立たされていることを、数字の上からも強く示しています。
ソース
帝国データバンク
FNNプライムオンライン
Yahoo!ニュース

