🌍 グリーンランド氷床(Greenland Ice Sheet)

何が判明したのか
グリーンランド氷床の深部で、マントルのような熱対流が起きている可能性が高いことが研究で判明しました。
この研究は、学術誌 The Cryosphere に発表されました。
研究対象となったのは、氷床内部に存在する巨大なプルーム状構造です。
これは氷の層を上向きに押し上げる湾曲構造です。
つまり、氷が単なる固体ではなく、内部で循環運動をしている可能性が示されました。
この発見は、氷床の常識を大きく揺るがす内容です。
背景
このプルーム状構造は、2014年にグリーンランド北部で実施されたレーダー観測によって初めて確認されました。
構造は氷の内部層を大きく乱しています。
しかし、その形状は下の基盤岩と一致していませんでした。
初期の仮説では、
・融解水の再凍結
・氷床底部の滑りやすい領域の移動
が原因と考えられました。
しかし、これらの説明では観測データを完全に再現できませんでした。
こうした中、研究チームは新しい数値モデルを導入しました。
詳細
研究はノルウェーの ベルゲン大学 の研究者が主導しました。
共同研究には、
NASAゴダード宇宙飛行センター
オックスフォード大学
の科学者が参加しました。
研究チームは「ASPECT」という地球力学モデリングパッケージを使用しました。
これは大陸移動やマントル対流の解析にも使われる高度な数値解析ツールです。
彼らは、地球内部からの地熱によって下から加熱された場合、氷がどのように振る舞うかを再現しました。
モデルはレーダー観測と非常によく一致するプルーム状の上昇流を生成しました。
ただし重要な条件がありました。
氷が従来の想定より約10倍柔らかいと仮定した場合のみ一致したのです。
仕組み・分析
熱対流とは、温められた物質が上昇し、冷えた物質が下降する循環現象です。
地球のマントルでは、溶融岩がこの仕組みでゆっくり動いています。
今回の研究は、氷でも同じ物理法則が働く可能性を示しました。
ベルゲン大学のアンドレアス・ボーン教授は次のように述べました。
私たちは通常、氷を固体物質と考えています。しかし、グリーンランド氷床の一部が熱対流を起こし、沸騰するパスタの鍋に似ているという発見は驚くべきものです。
また、筆頭著者ロバート・ロー氏は、この現象を「自然が生み出したエキサイティングな奇跡」と表現しました。
彼はさらに、
氷はマントルより少なくとも100万倍柔らかいが、物理法則は同じように働く
と強調しました。
今後の影響
グリーンランド氷床は島の約80%を覆っています。
もし完全に融解すれば、地球の海面は約7.4メートル上昇する可能性があります。
そのため、氷床内部の挙動を理解することは、将来の海面上昇予測に直結します。
一方で、研究者は慎重です。
ロー氏は、
「氷が柔らかいからといって、必ずしも融解が速まるわけではない」
と述べています。
つまり、対流が即座に海面上昇の加速を意味するわけではありません。
課題・展望
未解明の点も残っています。
・プルーム形成に必要な正確な熱条件
・対流セルの広がりの範囲
研究者は、氷の水平せん断や高い降雪率が対流を抑制する可能性を指摘しています。
そのため、プルームが主に北部に集中している理由を説明できる可能性があります。
しかし、沿岸部の氷損失との相互作用はまだ分かっていません。
さらなる現地観測とモデリング研究が必要です。
ソース
・The Cryosphere 掲載論文(2026年発表)
・ベルゲン大学 研究発表
・NASAゴダード宇宙飛行センター 共同研究
・オックスフォード大学 共同研究

