日銀がETF売却を開始 1月は53億円、完了まで100年以上かかる理由を解説

日本銀行が、これまでの大規模な金融緩和政策の中で購入してきた上場投資信託(ETF)を、市場で売却し始めていたことが分かりました。
2026年1月に売却されたETFの金額は、取得時の価格(簿価)で約53億7千万円に上ります。この数字は、日銀が公表した1月31日時点の貸借対照表などから確認されています。

日銀が保有するETFの総額は、簿価で約37兆円という非常に大きな規模です。今回の売却は、この膨大な資産を一気に処分するものではありません。
日銀は、株価が急落するような事態を避けるため、「ごく少量ずつ」売却を進めるという慎重な姿勢を取っています。

一方で、異次元金融緩和によって市場に供給されたお金を回収する動き、いわゆる「マネー回収」の進み方が、米国や欧州と比べてかなり遅いことから、円安が続く一因になっているのではないかという見方も根強くあります。


売却開始の位置づけ、資産圧縮は「超長期戦」

日銀は、2025年9月の金融政策決定会合において、ETFと不動産投資信託(REIT)を段階的に売却する方針を正式に決めました。
そして、2026年1月19日から、その方針に基づいた実際の売却作業が始まっています。

想定されている年間の売却ペースは、
・ETFが簿価でおよそ3,300億円
・REITが簿価でおよそ50億円

という水準です。
また、市場が大きく不安定になった場合には、売却を一時的に遅らせたり、止めたりする余地も残しています。

ただし、現在のETF保有額が約37兆円あることを考えると、このペースで単純に計算した場合、すべてを売却し終えるまでに100年以上かかる可能性があります。
このため、市場では日銀のETF売却は、短期間で完結する政策ではなく、何十年もかけて続く「超長期の後始末」だと受け止められています。


「緩和マネー回収」の遅れと海外との違い

日銀が市場に供給しているお金の量を示す指標の一つが、マネタリーベースです。
このマネタリーベースはすでに縮小し始めていますが、日本経済新聞によると、2025年末時点で前年比約1割の減少にとどまり、減少のスピードは米国や欧州よりもかなり緩やかだとされています。

内閣府も、国債の買い入れを減らすことでマネタリーベースが前年を下回るようになった一方で、
・銀行が企業や個人に貸し出すお金
・実体経済で実際に使われるお金

にはすぐには結びつきにくい構造になっていると説明しています。

海外に目を向けると、動きの速さは対照的です。
欧州では、欧州中央銀行(ECB)のバランスシートが2025年だけで、主に国債約5,000億ユーロ分縮小する見通しだと報じられています。
米国でも、量的引き締め(QT)を2025年末に終了する方針が決まったとの見方が複数あり、日銀の対応は国際的に見ると「かなり慎重でゆっくりしている」と映りやすい状況です。


円安要因との見方、緩和度合いの調整が課題に

金融市場では、日銀が大量の資金を市場に残したままであることが、円安を長引かせている要因の一つではないかという見方があります。
そのため、日銀が金融政策の正常化を、どの程度の速さで進めるのかが引き続き注目されています。

2026年1月の金融政策決定会合の「主な意見」でも、足元の円安を踏まえ、
金融環境はまだ相当に緩和的な状態にある
という認識が示されました。そのうえで、緩和の度合いを、適切なタイミングで見直していく必要があるという点が議論されています。

ETFの売却は、こうした金融緩和の出口戦略を象徴する動きの一つです。
ただし、売却ペースを慎重に抑えれば抑えるほど、日銀の資産規模を縮小するまでには時間がかかり、円相場やインフレ期待をめぐる市場との駆け引きは長期化します。

日銀が、この「ゆっくりした後始末」をどこまで続けるのか。
その判断は、今後の円安・円高の方向性や、日本の金融政策全体を左右する重要なポイントになりそうです。


ソース

・jp.reuters.com
・nikkei.com
・www5.cao.go.jp

タイトルとURLをコピーしました