日本がCO2をマレーシアへ海上輸送へ アジア初の越境CCS計画と「カーボン・コロニアリズム」論争

日本とマレーシアによる越境CCS計画とは

日本が排出する二酸化炭素(CO2)をマレーシアへ海上輸送する計画が明らかになりました。
これは東南アジア初の国境を越えた炭素回収・貯留プロジェクトです。

この取り組みは、気候変動対策の新たな枠組みとして注目されています。
しかし一方で、象徴的な意味合いが強いとの批判も出ています。

今後、この越境CCS計画が地域全体へ拡大する可能性もあります。

背景:CCSとは何か

CCSとは「Carbon Capture and Storage」の略です。
日本語では炭素回収・貯留と呼びます。

工場や発電所などから排出される二酸化炭素を回収します。
その後、液化して地下に封じ込める技術です。

つまり、大気中にCO2を放出しない仕組みです。
国際エネルギー機関(IEA)は、気候変動対策の一つと位置づけています。

しかし最新のネットゼロ排出シナリオでは、2050年までの排出削減への貢献は5%未満と予測しています。

詳細:日本のCO2をサラワク沖へ輸送

今回の計画では、日本の汚染産業から排出されるCO2を回収します。
対象は電力、石油精製、セメント、鉄鋼などです。

回収したCO2は液化します。
そして船舶でボルネオ島サラワク沖の枯渇したガス田へ輸送します。

専門家は、このプロジェクトが成功すれば、インドネシアやタイなどにも波及する可能性があると指摘しています。
つまり、アジア地域全体へ越境CCSが広がる可能性があります。

批判:「カーボン・コロニアリズム」とは

環境団体はこの計画を厳しく批判しています。

国際環境法センターの炭素回収専門家レイチェル・ケナリー氏は、
「気候変動の負担を日本ではなくマレーシアに危険な形で転嫁するものだ」と述べました。

Friends of the Earth Japan(FoE Japan)の深草亜悠美氏は、
排出を他国へ輸出する発想を「カーボン・コロニアリズム」と呼びました。

これは、炭素問題を他国へ押し付ける構図を指します。
そのため倫理的問題を含むと主張しています。

エネルギー経済・金融分析研究所のグラント・ハウバー氏は、
CCSは魅力的な約束をするが、実際には成果を上げられないと述べています。

経済目標と排出削減目標

日本は世界のトップ5排出国の一つです。
現在、9つの炭素貯蔵施設に投資しています。

そのうち3つはマレーシアに建設中です。
2030年までに年間2,000万トンを貯蔵する見込みです。

これは日本の年間排出量の約2%に相当します。
マレーシアは1トンあたり未定の金額を受け取ります。

そして日本はその分を自国排出量から差し引くことが可能です。
つまり、越境CCS計画は排出管理の手段にもなります。

マレーシア側の戦略

マレーシアの国営石油・ガス会社であるペトロナスは、
11億ドルを投じて世界最大のオフショア炭素貯蔵施設を建設しています。

操業開始は今世紀末までに予定されています。
一方で、マレーシアの電力の約81%は化石燃料に依存しています。

こうした中、気候活動家は、
炭素回収よりも太陽光発電や送電網整備を優先すべきだと主張しています。

しかしマレーシア経済省は、
炭素回収産業が30年以内に最大2,500億ドルを経済に追加する可能性があると予測しています。

国際的な動き

日本とマレーシア両政府は、
2025年10月にCCS協力覚書に署名しました。

これにより二国間協議と技術協力の枠組みが確立しました。

また、ノルウェーでは国境を越えた炭素輸送のテストが始まっています。
欧州連合初のオフショアCCS施設も、2026年半ばまでに操業開始予定です。

つまり、越境CCSは世界的な流れになりつつあります。

今後の影響

日本の越境CCS計画は、
アジア初の国境越え炭素貯留事業です。

成功すれば、インドネシアやタイなどへ拡大する可能性があります。
しかし批判も強く、社会的合意形成が重要になります。

経済効果と排出削減効果のバランスが問われます。
そのため、技術の有効性が今後の焦点になります。

ソース

abcnews.com
straitstimes.com
barchart.com

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