農水省、新品種の無断輸出差し止めを出願時点から適用へ 種苗法改正で空白期間解消

農水省の新品種無断輸出差し止め方針とは何か

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農林水産省は2月24日、国内で開発された農作物の新品種について、出願公表時点から無断輸出を差し止める権利を新設する方針を明らかにしました。
これまでは品種登録が完了した後でなければ保護が及びませんでした。
しかし今回の制度見直しにより、登録審査中の段階から権利行使が可能になります。

これは、登録前に海外へ流出するケースを防ぐための措置です。
つまり、審査中に生じる“保護の空白”を埋める制度改正です。
農水省は改正案を特別国会に提出し、年内施行を目指します。

なぜ今、制度改正が必要なのか

新品種の登録には時間がかかります。
出願から審査完了まで最長約6年を要します。
この期間が、いわば“無防備な時間”でした。

開発者は登録後の普及を見据えます。
そのため審査期間中でも試験栽培や種苗増殖を行います。
しかし、この段階で国外流出のリスクが高まっていました。

実際に農水省は昨年、中国や韓国の種苗会社サイトを調査しました。
すると、日本で開発された新品種とよく似た名称の果実が約50品種確認されました。
農水省幹部は「出願段階で流出した」との見方を示しています。

改正種苗法の具体的な内容

今回の改正案には二つの柱があります。
一つ目は、出願公表時点からの差し止め権です。
これにより第三者による無断輸出を早期に防ぎます。

二つ目は、育成者権の存続期間を10年延長する措置です。
育成者権とは、新品種の生産や販売を独占できる権利です。
研究開発投資を回収するための重要な制度です。

従来、育成者権の存続期間は25年です。
果樹の場合は30年です。
今回の延長により、より長期的な保護が可能になります。

繰り返されてきた品種流出問題

日本産ブランド農作物の流出は長年の課題です。
代表例が高級ブドウ「シャインマスカット」です。
2016年頃、中国へ無断で持ち出されました。

2020年の農水省調査では、中国本土での栽培面積が日本の約30倍に達しました。
許諾料換算で年間100億円超の損失が生じたとされています。
これは極めて大きな経済的打撃です。

イチゴでも同様の事例があります。
「紅ほっぺ」「とちおとめ」「レッドパール」が韓国に流出しました。
韓国のイチゴ栽培面積の9割以上が日本品種を基に開発された品種で占められました。

農水省試算では、イチゴ品種流出による輸出機会損失は5年間で最大220億円に上ります。
こうした数字は、制度の弱点を示しています。
そのため法改正は急務でした。

これまでの対策と残された課題

2020年12月には改正種苗法が成立しました。
登録品種の海外持ち出し制限が導入されました。
また、自家増殖を許諾制にしました。

しかし、それ以前に流出した品種の被害は回復が困難です。
一度海外で栽培が拡大すると、事実上取り戻せません。
つまり、後追い対策では限界があります。

日本経済新聞は昨年5月、存続期間を50年程度へ延ばす案が検討されていると報じました。
今回の10年延長は、その流れの一部とも言えます。
こうした中、制度の抜本強化が求められていました。

今回の改正が持つ意味

今回の法改正は、審査中の空白期間を解消する制度改革です。
さらに、権利の長期化で投資回収を容易にします。
これにより開発意欲の維持が期待されます。

一方で、実効性の確保が課題です。
差し止め権を設けても、海外での執行は容易ではありません。
そのため国際連携の強化も不可欠です。

しかし、日本ブランド農産物の国際競争力を守るには必要な一歩です。
今回の新品種無断輸出差し止め制度は、農業政策の大きな転換点となります。
今後の国会審議の行方が注目されます。

ソース

毎日新聞
東京新聞
北國新聞
日本経済新聞

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