中国原発建設で施工ミス200件超が判明|規制当局文書が示す安全管理の課題

中国原発建設で施工ミス200件超が判明したことが分かりました。
共同通信が、中国の原子力規制機関である国家核安全局(NNSA)の報告書と指導文書を独自に調査した結果です。

調査では、2011年から2024年にかけて、少なくとも200件以上の施工ミスや設備欠陥が確認されました。
そのため、中国原発建設の安全管理に対して、改めて強い懸念が向けられています。

つまり、今回の問題は単発の不具合ではありません。
中国原発建設の拡大と施工品質管理の関係を問う重大なテーマとして注目されています。

共同通信の独自調査で見えた全体像

今回の調査は、共同通信の北京特派員が、国家核安全局の発行した報告書と指導文書を分析したものです。
対象期間は、福島第1原発事故が起きた2011年以降の約13年間に及びます。

この期間に確認できた施工ミスや設備欠陥は、200件以上にのぼりました。
また、当局は報告書を受け、業界全体に安全対策の強化を指示しています。

さらに、問題の背景について当局は、「経験と技術的な熟練度の欠如」を指摘しました。
一方で、中国原発建設は拡大を続けており、現場の能力が建設速度に追いついているのかが問われています。

冷却設備で起きた異常変形

2013年2月、遼寧省の紅沿河原発で問題が見つかりました。
作業員が、原子炉の冷却に使う補助給水タンクの異常な変形を発見したのです。

原因として、設計図通りに作業が行われていなかったことが確認されました。
そのため、当局の文書は、「安全意識の欠如が問題の原因だ」と厳しく非難しました。

実際に、補助給水タンクは冷却機能を支える重要設備です。
つまり、この異常変形は、中国原発建設の現場で基本的な施工管理が揺らいでいたことを示しています。

AP1000導入原発でも配管欠陥が発覚

次に注目されたのが、AP1000を導入した原発です。
AP1000は、米ウェスティングハウス・エレクトリックが開発した第3世代加圧水型原子炉です。

浙江省の三門原発は、世界初のAP1000商業炉として建設されました。
しかし、この象徴的な案件でも、主要配管系統の肉厚と曲率に欠陥が見つかりました。

また、同様の問題は山東省の海陽原発でも確認されました。
そのため、次世代炉の代表格とされたプロジェクトでも、施工管理の甘さが露わになった形です。

蒸気発生器の溶接漏れは複数原発に広がった

福建省の寧徳原発では、蒸気発生器伝熱管の溶接部からの漏れが発覚しました。
蒸気発生器は、原子炉の熱を使って蒸気を生み出す重要設備です。

しかし、この問題は寧徳原発だけにとどまりませんでした。
中国国内の計5原発・10台以上の蒸気発生器で、類似の欠陥が相次いで確認されたのです。

規制当局は、調査と修繕作業に大量の労力と資材を浪費したと批判しました。
つまり、中国原発建設の一部で起きた不具合ではなく、複数拠点にまたがる構造的な問題として浮上しています。

日本の専門家はどう見ているのか

日本の原発専門家は、今回の報告内容を深刻に受け止めています。
その見解として、次のような指摘が示されています。

「常識では考えられないミスがあり、件数も多い。気付かずに運転したら深刻な事故を起こしかねない」

この指摘は、施工品質の問題だけを意味していません。
一方で、発覚しなければそのまま稼働し続けていた可能性も示しており、周辺地域を含む国際的なリスクとして考える必要があります。

福島事故後にいったん止まり、再び加速した建設承認

中国政府は、2011年の東日本大震災と福島第1原発事故を受けて、新設承認を一時凍結しました。
しかし、2012年には建設を再開しました。

その後、中国原発建設のペースは急速に上がりました。
2022年から2024年には、毎年約10基前後の承認が続いています。

こうした中、安全性の確保と建設スピードの両立が大きな課題になっています。
つまり、承認の加速がそのまま現場の施工能力向上を意味するわけではない、という現実が見えてきます。

2030年に世界最大の原子力大国を目指す中国

中国は、2030年までに原発の発電容量で世界一になると予測されています。
さらに、2025年4月には国務院が新たに10基の建設を承認しました。

投資額は約2000億元で、約274億ドルに達しました。
また、2026年3月には、2030年までの発電能力を110ギガワットとする目標を掲げています。

これは、2024年末時点と比べて大幅な増強です。
そのため、熟練した技術者や施工品質管理体制が建設ペースに追いつかない現状が、200件超のミス頻発につながったとみられています。

情報開示の限界がさらに不安を広げる

中国は、原子力安全に関する情報公開が制限されています。
そのため、今回の問題が明るみに出たのは、共同通信の独自調査によるものでした。

通常、規制当局の文書を外部メディアが分析する機会は極めて少ないとされています。
しかし、今回はその限られた文書からでも、200件超の施工ミスや設備欠陥が確認されました。

実際に、これが実態のすべてとは限りません。
一方で、今回の報告が氷山の一角に過ぎない可能性もあり、情報開示の乏しさ自体がリスク要因になっています。

問題が確認された主な原発サイト

今回、問題が確認された主な原発サイトは複数あります。
まず、紅沿河原発(遼寧省)では、補助給水タンクの異常変形が2013年2月に確認されました。

また、三門原発(浙江省)では、AP1000主配管の肉厚と曲率の欠陥が見つかりました。
さらに、海陽原発(山東省)でも、同じくAP1000主配管の肉厚と曲率の欠陥が確認されました。

そして、寧徳原発(福建省)などでは、蒸気発生器伝熱管の溶接漏れが発覚しました。
この問題は、5原発・10台超に波及しており、中国原発建設の品質管理に共通課題があることを示しています。

東アジア全体に関わる問題として見る必要がある

中国の原発が事故を起こした場合、偏西風の影響によって、日本を含む東アジア諸国への放射性物質の飛散が懸念されると指摘されています。
そのため、この問題は中国国内だけの問題として片づけられません。

福島第1原発事故は、原発事故が国境を越えて影響を及ぼすことを示しました。
つまり、中国原発建設の安全問題も、国際社会全体で注視すべきテーマだと言えます。

さらに、周辺国にとっては、事故発生後の対応では遅い可能性があります。
そのため、事故を未然に防ぐ施工品質管理と情報の透明性が重要になります。

急拡大と安全性をどう両立するのか

国際的な透明性の確保が必要だという見方があります。
また、施工品質管理システムの抜本的な見直しが欠かせないという指摘もあります。

しかし、中国は2030年に向けて原発拡大を強力に進めています。
一方で、今回の調査は、その足元で施工ミス200件超という重い現実を示しました。

こうした中、急速な原発拡大と安全性の両立という根本課題に、中国がどう応えるのかが焦点です。
中国原発建設が今後も進む中で、施工品質、規制の実効性、情報公開のあり方が厳しく問われることになります。

ソース

共同通信(2026年4月5日配信)
国家核安全局報告書・指導文書(共同通信調査)

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